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【報告】2006/03/04〜05 
学校づくり・学校評価・教職員評価討論交流集会 基調報告(2.このもとでいよいよ鮮明になる「教職員評価・学校評価」押しつけのねらい)

2.このもとでいよいよ鮮明になる「教職員評価・学校評価」押しつけのねらい

(1)「教職員評価・学校評価」押しつけをめぐる若干の情勢
 いま、概括的に述べた教育の「構造改革」路線のもとで、「教職員評価・学校評価」おしつけのねらいも、いっそうはっきりしてきましたが、その前に、「教職員評価・学校評価」押しつけをめぐる若干の情勢について述べます。
 
 「教職員評価」にかかわっては、2003年度から文部科学省が全都道府県・政令都市を対象に「教員評価」の調査研究のための予算化をおこないました。このことによって、それまでは、東京、大阪、埼玉など一部の地域で突出しておこなわれていた「教員評価」押しつけが、一気に全国的に広がっています。東京では、評価結果の賃金へのリンクが、大阪では、「試験的実施」「施行実施」から「本格実施」へと押しつけが強められてきましたが、一方で、長野は、検討委員会に義務制と高校の教職員組合代表が入り、SABCDという「評価」をはずさせるとともに、「総合評価」はおこなわせず、教職員の教育活動に対する「アドバイス」とさせるという、このシステムの害毒を抜く重要な到達点を築いています。
 
 文部科学省は、「教員評価」と「学校評価」を一体的に押しつけることをねらい、2006年度予算で、「学校評価」についての調査研究のための予算を計上しています。すでに京都では、「学校評価」押しつけから「教員評価」押しつけへ、という二重の管理統制強化がすすめられています。これを京都府教委は「目標管理による管理」とよび、まさに二重の管理であることを自らあからさまに述べるにいたっています。中教審「義務教育改革」答申、中教審教育課程部会「審議経過報告」との関係からも、今後、「学校評価」と「教員評価」の一体的押しつけが強まる危険性があることは間違いありません。同時に、05人事院勧告による「査定昇給」との関係で、「教員評価」を賃金、処遇と連動させようとする動きも一方で強められています。こうした「教員評価」押しつけに、「主幹」「首席」「総括教諭」など「あらたな職」をかかわらせ、「教員評価」押しつけを教職員への格差づくりへとすすめようとしています。しかし、05確定闘争における全国各地のたたかいは、「評価結果」を「査定昇給」に連動させようとする攻撃を基本的に押し返すという、重要な到達点を築いています。まさに、激しいせめぎあいが職場を基礎に展開されているただなかにあり、いっそう力を入れたとりくみが求められます。
 
(2)教育の「構造改革」路線と「教職員評価・学校評価」−あらためて明らかになる「教職員評価・学校評価」押しつけのねらい
 さて、こうした状況のもとにある「教職員評価・学校評価」押しつけは、教育の「構造改革」路線のどこに位置づき、教育の「構造改革」路線は、「教職員評価・学校評価」にどのような役割を果たさせようとしているのでしょうか。
 
 すでに述べたように、教育の「構造改革」路線は、いっそうの「競争と管理」の強化とあらたな「格差づくり」をねらうものであり、この政策を教職員にになわせて遂行しようとするものです。そのためには、時の政府のいいなりになる教職員と学校をつくりだすことが必要になってきます。したがって、いいなりになっているかどうかを教育行政を使って判定する必要が生じます。これをおこなおうと思えば、必然的に学校のランク付け=格差づくり、教職員のランク付け=格差づくりをおこなわなければならなくなります。そのために持ち出してきているのが「学校評価・教職員評価」です。
 
 「学校評価」によって、行政権力のいいなりになる学校を一部エリート校に仕立て上げ、「教職員評価」によって、時の政府が遂行しようとする教育政策に忠実な教職員を、「主幹」「スーパーティーチャー」という「新たな職」も連動させて、一部エリート教職員に仕立て上げるというのがそのねらいであることは明白です。
 
 しかもそれを、「自己責任論」のもとに、あたかも学校が「主体的に」決め、教職員が「自主的に」決めて、自分ですすめているように見えるような仕掛けをつくって進行させようとしています。これが「目標管理」方式の本質です。
 
 同時に、「学校選択の自由」によって、教育権主体である父母を、市場原理のもとでの「消費者」と位置づけ、校長をふくめた教職員集団を「消費者に対するサービスの提供者」として、学校教育をあたかも商品であるかのようにみなし、そのねぶみを父母・国民におこなわせることを「外部評価」とよび、父母・国民を学校と教職員の「評価者」に仕立て上げようとしています。この間、意図的にふりまかれている公務員攻撃、教職員攻撃は、これらをすすめるための環境づくりともいうべきものです。
 
 本来共同・団結すべき教職員と父母・保護者を対立関係におき、分断するという「構造改革」路線に共通する常套手段をここにみることができます。
 
 一方で、政府のすすめる教育政策に抵抗したりはむかったりする教職員の、教壇からの排除をねらっているのが「教員免許更新制」です。さらに、「査定昇給」によって、教職員のランク付けを賃金の面から支え、固定化するとともに、公務員人件費抑制にこれを利用しようとしています。
 
 こうしてみてくるならば、「学校評価・教職員評価」押しつけは、教育とは縁もゆかりもない、教職員支配、学校支配の道具でしかないことが明確になるのではないでしょうか。
 
(3)財界の教育政策をみればもっと明瞭に
 財界は、これをもっとあからさまに述べています。日本経団連の「改革」のキーワードは、「競争」「評価」「多様性」(=公共性の掘り崩し、民営化の推進)であり、「小さな政府」「官から民へ」の教育版にほかなりません。
 
 また、義務教育にかかわる中教審答申が出される1週間前の10月19日には、経済同友会が「教育の『現場力』強化に向けて」という提言を出していますが、そのなかでは、「なぜ教育改革は遅々として進まないのか」と露骨にいらだちを示し、「『現場』から教育を変える」として義務教育をターゲットに、「目標の連鎖」という名で、とりわけ学校と教職員に対する「目標管理」による統制に集中して、その構想を述べています。
 
 ここではあからさまに、「評価に基づく処遇と昇格を実現する」と述べて、「教員免許更新制」と「教員評価」、新たな職、給与との連動のプランを示しています。具体的には、教員採用時は「基礎免許・仮免許」として「給与テーブル� 廚砲里察�5年後に免許更新できれば「本免許」として「給与テーブル�◆廖◆陛�然、免許更新できなければ免許失効)次に「評価を経て昇格」として、「スーパーティーチャー免許」を与え、給与テーブル��にのせるというものです。義務教育改革にかかわる中教審答申とほとんど重なるものを、より露骨に述べたものといわなければなりません。
 
 言い換えれば、中教審答申こそ、財界の教育要求、教育政策に屈従したものであり、財界の要求にもとづく政府の教育支配、学校・教職員支配の姿以外の何ものでもありません。この本質を見すえ、とりくみをすすめなければなりません。
 
(4)「学校評価・教職員評価」と一体にねらわれる学習指導要領のいっそうの変質
 先ほど、若干ふれましたが、中教審教育課程部会が2月13日に発表した「審議経過報告」は「学校評価・教職員評価」押しつけともかかわって、重大な問題点をもつものです。詳しくは、別途お配りしている教文局長談話をみていただきたいと思いますが、ここでは、以下の2点についてあらためて指摘しておきます。
 
 第1に、もっとも大きな問題は、「国の責任で」到達目標を決め、「国の責任で」評価することにあります。「審議経過報告」は、「国の責任による到達目標の明確化」と述べ、これを口実に、学習指導要領のいっそうの押しつけをねらっています。そして、「国の責任による評価」と述べ、これを口実に、「評価規準・基準」押しつけと、「全国いっせい学力テスト」押しつけをねらっています。
 
 つまり、学校教育を目標という入り口でしばり、「評価」という出口でしばって、教育活動をがんじがらめにしようとするものです。しかも、教育内容においては、教育の論理を否定して、教化、訓練による子どもたちへの教育内容の「たたき込み」ともいうべきものとなっており、子どもたちを学ぶ喜びからますます遠ざけてしまうものといわなければなりません。
 
 第2に、ゆるしがたいことは、「新学力観」政策によって「指導ではなく支援」「教師は指導してはならない」とまでいって、教師に指導放棄を迫った自らの責任を、あろうことか教師の指導性に転嫁するという暴論でこれをすすめようとしていることです。
 
 しかし、教育の「構造改革」路線は、実施前であるにもかかわらず、すでにほころびが明白になっています。2月23日付中日新聞は、一面で愛知県犬山市の教育委員会が、文部科学省が押しつけようとしている「全国いっせい学力テスト」不参加を決定し、県が押しつけようとしている「教職員評価」拒否を決定したと報道しました。市町村教育委員会がその自主的判断にたって、押しつけを拒否した事実は重要です。さらに、24日付の「しんぶん赤旗」では、文部科学省教育課程課はこれに対して、学力テストの実施は「最終的には各自治体が判断することになる」とこたえたと報道しています。
 
 全教は、過日開催した第23回定期大会で、「子どもと学校、地域にとって本当に役立つ地方教育行政を確立するために」(仮称)という提言を作成し、職場からの学習、宣伝をふまえた、地方教育委員会に対する提言活動を提起し、決定しました。上記の事実をふまえ、この提言活動に「学テ」問題を位置づけ、全国各地から、各都道府県、市町村教育委員会に対して、国のやり方に追随することなく、子ども、父母、地域住民の声をよく聞き、自主的判断をおこなうことを基本に「全国いっせい学力テスト」に対応することを求めるとりくみを重要課題と位置づけ、教育委員会への提言活動をすすめたいと思います。



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