【教研】2006/08/20
「未来をひらく教育のつどい2006」アピール
父母・国民、教職員のみなさん、教育基本法改悪をゆるさず、憲法・教育基本法にもとづく教育を力をあわせてすすめましょう
8月17日から20日までの4日間、埼玉県で開催した「教育のつどい2006」は、多くの父母・国民、教職員のみなさんの参加で、大きく成功しました。とりわけ、この「つどい」開催のために大きな力を寄せていただいた地元埼玉県民のみなさんに、心から感謝の気持ちを表明します。
「教育のつどい2006」の最大の特徴は、文字どおり「教育基本法教研」として、開会全体集会、分科会、教育フォーラム全体に憲法・教育基本法がつらぬかれた「つどい」としてつくりあげられたことです。
開会全体集会では、高校生が大活躍しました。地域の文化を伝承し、発展させる高校生、統廃合にも負けず、「定時制高校がこれ以上つぶされないように」という思いをこめて太鼓を打ち鳴らす高校生、平和問題にとりくみ、「平和のために学習していきたい」と力強く語る高校生、「当事者である高校生には自分たちの問題を改善していく力がある」と確信をこめて語る私学助成増額にとりくむ高校生…これが憲法・教育基本法が育ててきている子どもの姿なのだ。そのことを、青年教職員をふくむ若者たちがおこなった、教育基本法の群読によって、みんなが確認し、共有することができました。
高校生、青年は、21世紀の世の中の本格的な担い手です。これらの子どもたちの姿は、21世紀の世の中と教育をつくるのはだれなのかをも鮮やかに浮き彫りにし、私たちに展望と確信を与えるものとなりました。
分科会でも、いつになく多く寄せられた憲法教育、平和教育のレポートにもとづいて、憲法や平和の問題について深く議論された社会科教育分科会をはじめ、すべての分科会に憲法・教育基本法がつらぬかれたものとなりました。
子どものリアルな姿が、困難もふくめて明らかにされつつ、子どもの成長・発達への全幅の信頼をおいた実践にもとづく討論が、これまでになく活発に展開されました。 「子どもが困ったときに教育実践がすすむ」という参加者の言葉が示すように、子どもの困難を正面からうけとめ、その困難な実態から子どもの願いをよみとき、クラスの子どもたちに、父母たちに理解を広げ、みんなでバックアップしながら、その子の成長・発達を保障するとりくみをすすめた実践が多くの分科会で報告され、討論されました。困難な状況の中でもがんばる教職員の教育活動が子どもを支えていることが確かめられました。
教育基本法第1条の「人格の完成」をめざすという教育の目的の規定は、子どもが成長・発達の主体であることをはっきりと示しています。そして、その成長・発達の主体である子どもに対する信頼を基礎にして定められたものです。その意味で、こうしたとりくみは教育基本法第1条の具体化そのものです。
子どもの人格形成にとって欠かせない学力問題についても、確かな学力をどう身につけさせるのか、と全国各地でとりくまれた創意あふれる多彩な実践が持ち寄られ、研究、討論がすすめられました。学習指導要領による拘束と競争主義的な教育政策が子どもたちを苦しめているもとで、子どもたちが学ぶ喜びを獲得し、確かな学力を身につけることは重要課題です。実践報告と討論をとおして、半世紀を越える研究と実践の蓄積が大きな力を発揮していることに確信を深めることができました。
また、「参加と共同の学校づくり」が大きく発展している姿が明らかにされたことも重要です。父母とともに学校づくりにとりくんでいる教職員は、「学校を変える力は学校のなかにある。子どもの中に、教職員の中にある。父母を信頼し、学校を父母・国民に開けば、もっと大きな力となる」と語りました。教育基本法第10条は、教育は「国民全体に対し直接に責任を負って行われるべきもの」とあり、教育といういとなみは、国民が直接手を携えてすすめるものであることを定めています。これは、子ども、父母・国民、教職員への信頼に根ざして定められた規定であり、先の言葉は、この教育基本法第10条の生きて働く姿を示すものです。
大きな社会問題となっている貧困と格差についても、多面的な議論がすすめられました。「貧困と格差が、子どもをはぐくむべき家庭を直撃し、それが教育の困難を増幅している。貧困と格差を克服する社会的なとりくみとともに、教育という分野でどのようなとりくみができるのか、この面から父母との共同の接点をどう見出せばよいのか、深く考えなければならない」という問題意識も率直に出され、実践的探求の方向性についての模索が語られました。このことをふくめ、参加された多くの父母のみなさんの発言によって、深められた討論がすすめられました。
教育フォーラムでは、父母・国民、教職員がいっしょになって、格差問題をふくめ、子どもと教育をめぐって焦眉の課題となっている8つのテーマにもとづいて率直な話し合いが展開されました。子どもと教育についての国民的討論を、ということが「教育のつどい2006」の大切な課題でしたが、これにこたえた重要な議論が展開されたことは、大きな特徴です。
教育基本法改悪を先取りする「教育の『構造改革』」が強められる動きと切り結ぶなかで、あらためて、教育とは何か、子どもが育つということはどういうことか、という根本的な議論に立ち戻ることが求められています。「教育のつどい2006」は、参加者がそうした問題意識を共有しながら、教育は国民のもの、という確信にたった討論をすすめることができました。
そしてそのことは、「まるで教育基本法をすぐそばにおいて議論しているよう」という参加者の感想が示すように、憲法・教育基本法のねうちと力に対する確信をさらに広げるものとなりました。
「教育のつどい2006」開催の2日前の終戦記念日に、小泉首相が靖国神社を参拝し、国内外の厳しい批判を受けました。このようなときに、昨年度に引き続き、韓国全教組の代表が参加されたことは、大変意味深いものです。私たちは、平和と国際連帯を北東アジアから発信し、アジアの未来、平和の国際秩序をつくることと、子どもの未来をはぐくむ課題をむすび合わせるという課題をあらためて確認することができました。この立場から、いっそう交流を深めたいと思います。
このように、「教育のつどい2006」は日本の教育の前進にとって、かけがえのない成果をあげました。私たちは、「教育のつどい2006」で学んだこと、確かめ合ったことを持ち帰り、教育に、子育てに生かします。そして学校、地域に広げます。憲法・教育基本法に根ざし、子どもたちがすこやかに成長・発達できる教育とそれを励ます世の中を、力をあわせてつくりあげようではありませんか。全国の父母・国民、教職員のみなさんに、心から呼びかけます。
2006年8月20日
「みんなで21世紀の未来をひらく教育のつどい―教育研究全国集会2006」実行委員会
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