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【資料】2006/11   
『全国一斉学力テスト」討議資料』

教育基本法改悪法案の廃案めざすとりくみを大きく広げ「全国一斉学力テスト」の押しつけをうち破ろう 
 


 
【討議資料のPDFは コチラ!】  (1) (2) (3) (4) 
 

「全国一斉学力テスト」ってどんなもの?

 
 いま文部科学省は、2007年の4月24日、日本全国でいっせいに、すべての小学6年生、中学3年生、200万人以上の子どもを対象に、「学力テスト」をやろうとしています。そのため、今年度準備予算として29億円、来年度は116億円を要求しています。学力実態を調査するのならば、一部を抽出しておこなえばよいのですが、全員にいっせいにやらせようとしていることが大きな問題です。
 日本ではすでに1961年から64年までの4年間、全国一斉学力テストがおこなわれたことがありました。しかし、成績が悪い子をテスト当日休ませたり、教師が子どもに答えを教えたりするなどの、教育とは無縁の事態が引き起こされ、国民的な批判が高まるなかで、とうとう中止に追い込まれたものです。
 

Q1 なぜ、「全国一斉学力テスト」をやらせようとしているのでしょう

 
A 結果の公表と学校選択制を全国に広げ、学校の「格差づくり」結果の悪い学校はつぶすことも… 
 
 最初、中山文部科学大臣(当時)は、「競争意識の涵養のため」と言いました。「競争と管理」の教育政策が大きな問題となっているのに、もっと強めるのはまったく逆行しており、これだけでも大問題です。
 ところが、安倍内閣は、教育基本法を改悪して、学校の「格差づくり」と一体に、いっそうの競争強化をすすめようとしています。教育基本法を変えてやろうとしていることは、「全国一斉学力テスト」の実施とその結果公表、これを「学校選択の自由」の全国化とむすびつけて、子どもの集まる「勝ち組」学校、集まらない「負け組」学校をつくりだし、「負け組」学校には、政府の役人を派遣して監視し、しめあげ、あげくの果ては、その学校をつぶしてしまう、というのです。
 どこまで子どもたちをいじめれば気が済むのでしょうか。
 
※資料 安倍晋三著「美しい国へ」より 
 「全国的な学力調査を実施、その結果を公表するようにするべきではないか。学力調査の結果が悪い学校には支援措置を講じ、それでも改善が見られない場合は、教員の入れ替えなどを強制的におこなえるようにすべき」「ダメ教師には辞めていただく…ぜひ実施したいと思っているのは、サッチャー改革がおこなったような学校評価制度の導入である・・・国の監査官が評価する仕組みだ。問題校には、文科相が教職員の入れ替えや、民営への移管を命じることができるようにする」
 
 

Q2 すでに先行的におこなわれている地域では、どのような問題が出てきているのでしょうか

 
A 「試験対策」で学校教育がいびつに子どもの心に深い傷が 
 
 東京都では、独自の学力テストがすでにおこなわれ、その結果を公表している区も少なくありません。このことによって、教育現場に大きな混乱と困難がもたらされ、子どもの心に深い傷を負わせる事態が広がっています。
 学校の平均点を上げるために、足立区のある中学校では、テスト前日に担任が「最後まできちんと受けられないのなら来るな」と生徒を指導し、少なくない生徒が欠席するという事態がおこっています。また、「1つテストが終わるたびに『おなかが痛い』という子が出る。みんなストレスが大きかったようだ」という教師の言葉もあります。さらに、どうしても成績が気になるので、テストの点数を上げるために、繰り返し同じような問題をやらせたり、「過去問」をやらせる授業に偏ってしまう、ということも報告されています。
 こうしたテストが民間企業に丸ごと委託してやられているため、特定の業者が子どもの個人情報を独占するということも大きな問題です。東京では、ある教材業者から「おたくのお子さんの都の中の順位を教えましょうか」という電話を受けた親もいる、ということです。
 こうした事態が明らかになる中で、「百害あって一利なし」という声が広がっています。
 

Q3 外国でも、こんなことはやられているのですか

 
A イギリスでは全国一斉学力テストは破綻「学力世界一」フィンランドでは5%の抽出学力調査 
 
 実は、安倍政権がモデルにしているのは、1980年代にイギリスでおこなわれた「サッチャー改革」とよばれる「教育改革」です。「サッチャー改革」では、イギリスにはそれまでなかった、日本での学習指導要領にあたる「ナショナル・カリキュラム」をつくり、「ナショナル・テスト」と呼ばれる全国一斉学力テストを実施し、その成績を「リーグ・テーブル」(番付表)によって学校ごとに公表する、ということがやられました。そして、「教育水準局」という役所をつくり、成績が悪いとされた学校は、「査察官」が入って、「失敗校」という烙印が押され、「廃校」に追い込む体制がつくられました。しかし、このやり方が大失敗であったことが明らかになり、イギリスでは、この制度の修正へ向かっています。
 一方、「学力世界一」とされたフィンランドは、まったく違って、5%の学校を抽出して学力調査がおこなわれています。その結果、問題があるとされた学校には、教育委員会などが実態をつかんで、必要な場合には、教師をさらに配置するなど、教育条件をととのえています。どちらが教育的かは、説明するまでもないでしょう。
 
※資料 雑誌「世界」2006年11月号阿部菜穂子氏「安倍政権は、問題の多いイギリス『教育改革』に追随するのか」より 
 「イギリスの学校現場では、教育改革によって強引に競争原理が持ち込まれた結果、数々の『副作用』が弊害として表面化…ブレア労働党政権下で教育への干渉が強まり、新たな問題が生まれて教育界は閉塞状況に陥っている…保守党ですら『これまでのように上から現場を締め付けるのではなく、教師や学校を信頼する教育体制に変える必要がある』といい…イギリスの教育改革は今、大きく舵を切り替えようとしている」
 
 

Q4 どうすればやめさせることができるのでしょうか

A 父母と合意を広げる運動を強めよう
A テストの実施は「市町村の判断」市町村教育委員会に自主的判断を求めるとりくみを
 
 
 教育基本法改悪法案の廃案をめざすとりくみをとおして、教育についての国民的な議論がかつてなく広がっています。そのうえ「いじめ」自殺という痛ましい事件の続発などを通して、子どもと教育についての、父母・国民の関心はいやがうえにも高まっています。また、「格差社会」がこれほど大きな社会問題となっているなかで、教育の「格差づくり」に賛成する父母・国民のみなさんは、まったくといっていいほどいません。
 まず、目の前にいる父母に、「学力テスト」押しつけが引き起こしている重大な問題点を率直に提起し、話し合い、合意をつくりあげることが重要です。
 この合意づくりを、教育基本法改悪をゆるさぬ父母、教職員共同のとりくみとむすんで、大いにすすめましょう。また、職場で話し合い、校長に市町村教育委員会に対し、自主的判断を求める意見具申をおこなわせましょう。これらの声を背景に、教職員組合として、都道府県教育委員会に対し、実施は市町村の判断であることをあらためて確認するとともに、各単組・支部は、市町村教育委員会に対し、自主的判断を求める交渉や懇談を積極的にすすめましょう。
 かつて、「学力テスト」が裁判闘争となったことがありました。その裁判で、1976年に旭川学テ最高裁判決が出されています。その判決では、「学力テスト」の実施は、各市町村教育委員会の判断、とされています。ですから、いくら文部科学省がすべての子どもたちにいっせいにやらせようとしても、市町村教育委員会がそのテストに参加しない、と決めれば、実施することができません。
 全教は、2006年4月に文部科学省とおこなった交渉で、あらためて「実施は市町村の判断ですね」とただし、文部科学省は「そのとおり」とこたえています。
 事実、愛知県犬山市の教育委員会は、この「全国一斉学力テスト」に不参加を決めています。マスコミの調査では、参加するという意向を表明している市区町村は84%となっていますが、すでに参加の意向を決めている市町村教育委員会に対しても、「学力テスト」の引き起こしている重大な問題点を提起し、自主的判断を求めるとりくみをすすめることが重要です。
 そして、何よりもこれらの政策の根っこにある教育基本法改悪法案を廃案にするために全力をあげることです。教職員の共同、父母との共同を広げ、教育基本法改悪をストップさせましょう。
 
※資料 「旭川学テ最高裁判決」より 
 「文部大臣が地教行法54条2項によって地教委に対し本件学力調査の実施を要求することができるとの見解を示して、地教委にその義務の履行を求めたとしても、地教委は必ずしも文部大臣の右見解に拘束されるものではなく、…独自の立場で判断し、決定する自由を有するのである」
 
 

◎学力調査について 全教の考え方

1.調査は第三者機関によって 
 「調査」は、行政権力から独立した第3者機関によっておこなわれること。第3者機関には「調査」が客観的なものとなるように、父母や教職員代表も含めること。「調査」を民間の業者に委託することは、国民的に解決すべき学力問題を、企業の利潤追求の対象とすることにつながるものであり、おこなわないこと。
 
2.学習指導要領そのものも調査対象に 
 教育内容の検討にあたっては、学習指導要領そのものも調査の対象として、学習指導要領が本当に子どもたちの学力を身につけさせるものとしてふさわしいかどうかについての調査、研究をおこなうこと。
 
3.学力問題の国民的討論の保障を 
 学力問題について、国民的討論がすすめられるよう、「調査」の内容について、また、その結果について国民的に明らかにしてすすめること。
 
4.教育条件との関連も調査対象に 
 子どもの学力実態と1学級あたりの人数や学校規模、教室配置という学校の施設・設備などの教育条件との関係も調査・研究の対象とすること。
 
5.調査は抽出で 
 調査を悉皆としておこなうことは、学校のランク付けに利用される危険が大きく、抽出調査としておこなうこと。
 
6.子ども・保護者に了解を 
 調査に当たっては、調査対象となる子どもと保護者に十分説明し、了解を得ておこなうこと。
 
 



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