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【行動】2006/07/12 
少人数学級や教育条件、私学助成拡充めざして 3000万署名スタート集会【情勢報告】

【国会情勢報告】高橋 信一 全日本教職員組合 教財部長



はじめに

 家計が大変なため、学校で使うリコーダーやコンパスを買ってもらえず、100円ショップで購入して学校に持ってくる子どもがいる。もともと教材用として製造・販売しているわけでない100円のリコーダーは音程が狂っていて合奏ができない、100円のコンパスはすぐ円が描けなくなってしまう。また、高校統廃合によって高速バスで通学せざるを得ない生徒が、登校しなくなったので、担任が電話すると、「明日の高速バスのキップを買う金がない」との返事がかえってきた。定期券どころか明日のキップも買えず、登校できない生徒がいる、など。貧困と社会的格差の広がりが、子どもたちの家庭を直撃し、子どもたちの教育に大きな影響を与えている話が全国各地から伝わってきます。
 
 経済的理由で就学が困難な小中学生の家庭に市町村が学用品や教育費を支給する就学援助制度の利用者が急増しています。04年度までの4年間で35万人増え、全国平均で12.8%、8人に1人に達しています。また、都道府県立高校の授業料減免措置を受ける生徒も、文科省調査では04年までの4年間で5万人が増え、22万人、8.8%に達しています。ところが、「三位一体の改革」のもとで厳しい財政となっている地方自治体では、就学援助制度の切り下げ、授業料減免制度の対象基準を厳しくし、対象者を減らすなどの、冷たい対応が行われています。
 
 一方、私学では05年度に経済的理由で退学(除籍)になった生徒は高校212校の調査で285人(1校当たり1.34人)、中学は65校で8人(同0.12人)と、依然として高水準です(全国私教連調査)。
 しかし、このような貧困と社会的格差の広がりのもとでも、子どもたちは懸命に生きています。そして、学校が大好きです。子どもたちの瞳が輝くよう、すべての子どもたちにゆきとどいた教育を保障するため、全国3000万署名を大きく前進させることが必要です。
 
 とりわけ、今年度の全国3000万署名は、教育基本法「改正」案が戦後初めて国会に提出され議論される、戦後初めて教職員の「純減」をすすめる行政改革推進法が成立する、そして義務教育費国庫負担の負担率が3分の1に切り下げられるという、私たちがかつて直面したことのない情勢のもとで行われます。これらの新たな情勢を切り開いて、すべての子どもたちにゆきとどいた教育を保障するため、私学助成の拡充、国の責任による30人学級の実現をめざし、全国3000万署名を今年も全力でとりくみましょう。
 

1. 私学助成の大幅増額と、国の責任による30人数学級実施の前進。運動の成果に確信を!

 2005年度から2006年度にかけて、私たちは全国各地で、様々な共同をひろげ、全国3000万署名にとりくんできました。第164国会に提出した907万筆の2005年度全国3000万署名は、国会最終盤にその取り扱いが審議されましたが、不当にも不採択となりました。しかし、その運動のなかで、全国3000万署名の2つの課題、私学助成の拡充と30人学級実施で、貴重な前進を勝ち取ってきました。
 
(1)私学助成金2年続けて5億円の増額と、授業料直接助成の前進 
 2004年度に国民的な大運動で、私学助成制度を守り抜き、5億円の増額を勝ち取りました。今年度は、その成果の上に立って、全国各地でこの1年間奮闘し、2004年に次ぐ大きな成果を上げました。
 その第1は、文科省に授業料直接助成に踏み込ませたことです。私たちは、父母負担の軽減を訴えて、授業料直接助成の実現を求めてきました。今年度予算で実現させた授業料減免事業等特別支援措置は、家計急変者への時限立法的措置であったものを、対象を拡大し生活保護者を対象とする恒久的措置へ変更したものですが、予算額も前年度比2倍以上の6億3800万円が予算化され、私たちが40年来求めてきた授業料直接助成を実現させたものであり、大きな成果です。
 第2に、今年度予算でも、私学助成金の5億円の増額を勝ち取ったことです。また、地方交付税削減の中で厳しい各都道府県のなかでも、道単独分の削減攻撃にさらされていた北海道で、前年度単価を維持するだけでなく、生徒減対策として小規模校への特別補助を実現させるなど、各県でも前進を勝ち取っています。
 
(2)少人数学級が46道府県まで広がる 
 昨年、中山前文科大臣は歴代文科大臣として、はじめて少人数学級の実施について言及しました。そして、中央教育審議会は「少人数学級は必要」との意見で一致し、それを受けて文科省は5月に「教職員配置等の在り方に関する調査研究協力者会議」を立ち上げ、少人数学級の実施等の検討をすすめました。しかし、「調査研究協力者会議」は、政府からの圧力が強まるなかで、30人学級の実施を願う父母・国民の願いに背を向け、40人のままに据え置く報告を行いました。
 また、昨年8月末、私たちの運動によって文科省は「第8次公立義務教育諸学校教職員定数改善計画案」を策定し、2006年度予算にむけて、その実施に必要な経費を概算要求しました。これに対して、経済財政諮問会議は、教職員について「児童生徒の減少に伴う自然減を上回る純減を確保するよう検討」とし、財政制度等審議会も「義務教育教職員の人員に関しても、純減を行うべきであり、新たな定数改善計画は策定すべきでない」としました。文科省はこのような小泉内閣の圧力に屈服し、第8次教職員定数改善計画の策定を放棄しました。
 一方、地方では、今年度から香川県が中学校の一部で少人数学級を実施し、少人数学級は46道府県までひろがり、残るは東京都のみとなりました。また、北海道、長崎など多くの県が、実施学年を増やすなど、少人数学級実施を拡大しています。これらの前進は、「三位一体の改革」で厳しい財政状況にある中でも、各自治体を、父母・教職員、地域住民の強い願いと運動が動かし、実現させたものです。
 

2.2007年度に向けた運動

(1)全国3000万署名運動と憲法・教育基本法を生かすとりくみをむすびつけて 
 憲法・教育基本法改悪の動きが強まっています。先の国会には、教育基本法「改正」法案と憲法改悪のための国民投票法案が提出されました。廃案にはできませんでしたが、国民的な運動により、継続審議とさせました。
 30人学級実現や私学助成拡充などを柱とした私たちの運動は、憲法26条の「義務教育無償」、教育基本法3条の「教育の機会均等」などの権利を実現させていく運動です。
 国会に提出された教育基本法「改正」の政府案は、現行第10条の教育が「国民全体に対し直接に責任を負って行われるべき」という文言を削除しました。そして、新たに「教育振興基本計画」という項目を起こしています。「政府は、…教育の振興に関する施策についての基本的な方針及び構ずべき施策その他必要な事項について、基本的な計画を定め、これを国会に報告する」としています。つまり、行政による教育支配を前提に、時の政府が教育施策をすべて決め、国会には報告するだけという規定となっています。これは、政府がなんら制約を受けることなく、公立・私学すべての教育をおもいのままにできるということを示しています。
 一方で改悪案は、現行第10条2項が、「教育行政は…教育の目的を遂行するに必要な諸条件の整備確立を目標として行われなければならない」と述べ、教育行政の教育条件整備義務を規定しているにもかかわらず、教育行政の項目からこれをすっぽり抜き去り、「教育行政は、国と地方公共団体との適切な役割分担及び相互の協力の下、公正かつ適正に行われなければならない」に置き換えました。子どもの学習権を保障するための教育条件改善は、この教育基本法第10条2項に支えられてすすめられてきたものです。これをとりはらうことは、教育行政に義務として課せられていた教育条件整備を放棄するものであり、重大な問題をもつものです。
 全国3000万署名運動を、憲法・教育基本法を教育と学校に生かすとりくみをむすんで、全国各地ですすめましょう。
 
(2)とりくみの重点 
 私たちが請願項目として掲げ、運動をすすめてきた諸課題には、様々な困難が立ちはだかっています。2007年度にむけ、これらの困難を乗り越え、実現にむけ、今年度も全国3000万署名を大きく成功させることが求められています。
 
�ゞ疑Π�の削減を許さず、国の責任による30人学級の実現を
 先の国会で、地方公務員を4.6%削減し、教職員は「児童生徒の自然減を上回る『純減』をおこなう」とする行政改革推進法が成立しました。教職員について「4.6%の削減」が一律におこなわれた場合、義務制で3万人(文科省試算)という大規模な削減が行われることになります。
 さらに、7日に閣議決定された経済財政諮問会議の「骨太方針2006」では、地方人件費の歳出額を削減するため、「教員の定数については…今後5年間で1万人程度の純減」することが盛り込まれました。
 教職員の数は子どもにとってもっとも重要な教育条件のひとつです。行政改革推進法の参議院での採決では、「公立学校の教職員の純減においては、少人数教育実現に向けたこれまでの努力を踏まえ、教育水準の維持向上がなされるよう適切な措置を採ること」との附帯決議が採択されました。今、求められていることは、文部科学省がこの附帯決議にもとづいて、教育水準の維持向上のため、新たな教職員定数改善計画を策定し、国の責任による30人学級を実施することです。
 
��義務教育費国庫負担制度の維持・拡充を
 憲法・教育基本法で定められた「教育の機会均等」を保障するため、地方の財政力によって、子どもの教育に格差が生じないように定められた制度が義務教育費国庫負担制度です。
 ところが、小泉内閣は負担率を2分の1から3分の1に引き下げました。その結果、文科省の試算では、都道府県別に国庫負担削減額と税源移譲配分見込み額を比べると、自治体によって税収が異なるため、39道府県で財源不足が生じ、増加は8都府県のみで、教育水準格差を拡大し、「教育の機会均等」をいっそう崩すことになります。さらに、財源不足を充当する地方交付税は削減され続けられており、負担率の切り下げは地方の教育財政の基盤を崩すものとなっています。
 負担率を3分の1から2分の1に復活させること、制度を維持・拡充させることが必要です。
 
�9颪罰禿堝刺楔�での私学助成金の削減を許さず、増額を
 私学助成は、単なる助成金・補助金ではなく、本来、国や自治体が負担するべき教育費としての性格を持っています。経済的事情に左右されることなく、すべての国民にひとしく「教育を受ける権利」を保障すること、私学が独自の校風や教育システムを持つ学校を維持し、またそうした学校に学費の格差なく通えることを保障すること、こうした国民の教育権の根幹をなすのが私学助成です。本来こうした国や自治体の負担金とも言うべき教育費であるはずの予算が、行政の裁量によって大きく左右される助成金・補助金であることによって、私学助成は削減の圧力にさらされています。
 私学では、1994年と比較し、2003年度の入学者が11万人、1校あたり91.2人減少し、生徒減から廃校や募集停止に追い込まれる学校も生じています。私学助成の削減は、私学を存亡の危機に追い込み、私学で学ぶ子どもたちの学習権を奪うものであり、国と各都道府県にむけた増額の運動が求められています。
 ところが、経済財政諮問会議の「骨太方針2006」では、私学助成について「定員割れ私学については助成額のさらなる削減など経済的効率化を促す仕組みを一層強化する。…各学年の予算額を名目地で対前年度比マイナス1%(年率)とすることを基本とする」との方針が盛り込まれました。04年の運動で、私学の国庫助成は国の補助金削減リストからはずさせることができましたが、新たな動きに対するとりくみが求められています。
 
�て段婿抉膓軌蕕悗療彰垢里覆�、教育条件の後退を許さない
 先の国会で、盲・ろう・養護学校の制度から、特別支援学校制度に転換する、学校教育法等一部「改正」法が可決・成立しました。今回の「改正」では、私たちが請願項目に掲げ、運動を進めてきた通常学級に在籍するLD・ADHD児などへの特別な教育の機能が、新たに付与されました。これは、本来十分な教育条件が整備されるなら、積極的な意味をもつものです。ところが、教職員配置の抜本的制度改正が見送られる中で、これら新たな機能の義務化・努力義務化は国の責任を放棄し、学校と教職員と、地方自治体の努力と「意識改革」にすべての責任を押しつけるものです。
 それに対して、この間、全国の父母・教職員から関係国会議員に対して、障害児教育の大切さと教育条件整備が不可欠であることを訴える、はがきやファックスでの要請が行われました。これが国会質問にとりあげられ、教育条件にかかわる答弁や決議に反映されました。その中で、最も懸念された学級編成問題では、特別支援学校、特別支援学級、重複学級において障害種別の学級編成を原則とすることなど重要な答弁を引き出しました。国会答弁、決議などの積極的な到達点を十分活用し、政省令等に反映させるとりくみが求められています。
 それとともに、障害種別を超えた障害児学校の統廃合が許さぬとりくみや、今回特別支援学校に「努力義務化」されたセンター的機能を果たすための教員配置をもとめるとりくみなど、障害児教育を後退させず、充実させるとりくみが求められています。
 
�ィ錬釘達腸談噌餾撚式魅哀襦璽廚里錣�国の教育予算 大幅な増額を
 今年度の「文教及び科学振興費」は5兆2671億円で、前年度比4559億円、8.0%の減額です。文科省予算は一般会計で5兆1324億円で、前年度比6009億円、10.5%減額です。義務教育国庫負担率の2分の1から3分の1への切り下げで8500億円が削減されたため、他の省庁予算と比べても、最大の削減となっています。日本の教育予算はGDPに対する公財政支出の学校教育費で比較すると、2001年度はOECD加盟国30カ国中最下位で、2002年度は29位です。
 私たちの願いを実現するには、教育予算を大幅に増額させることが重要です。わが国のGDPに対する公財政支出の学校教育の比率は3.5%ですが、OECD諸国の平均の5.0%に引き上げるならば、約7.5兆円の増額となります。全国一斉に30人学級を実施するに必要な金額は、約1.2兆円ですから、すぐに国の責任で実施することができます。また、大学までの学費の無償化も可能になります。
 今年度の全国3000万署名に、教育予算の増額を大きく位置づけてとりくみましょう。
 
(3)子どもを真ん中に、育ちあう関係を広げて運動をすすめましょう 
 今日、心痛む少年事件が相次ぎ、また貧困と社会的格差の広がりと競争的な環境の強まりの中で、多くの父母は孤立した子育てを強いられて大きな不安や悩みをかかえています。教職員も、教室で見る子どもの変化にとまどい、困難を感じています。私たちの運動は、父母、教職員が、子どもを真ん中に子どもと教育について語り合い、子育ての悩みと喜びをともにし、子どもと大人の育ちあいのつながりを広げていく教育運動でもあります。こうした子育ての土壌を大きく広げて、父母と教職員の共同をいっそう強め、全国3000万署名運動を前進させましょう。
 一方、生徒たちも自分たちの学費負担や学費が払えずに辞めていく仲間の問題、自分たちの学校の統廃合など学校や教育問題、社会のあり方や平和の問題など、様々な問題に対して意見を持っています。そして、私学助成の拡充や学校統廃合問題に対する生徒たちの自主的な運動が広がっています。この子どもたちの自主的なとりくみをはげまし、支えていくとりくみをすすめましょう。
 また、私たちの運動は、公立、私学の父母、教職員が、30人学級の実現や私学助成の拡充などの共同の要求を実現し、子どもたちにゆきとどいた教育を保障するための運動です。そうした要求を実現するためには、公立、私学の共同が大切であり、いっそう公私共同のとりくみを前進させましょう。
 さらに、今日の劣悪な教育条件は、小泉内閣の「構造改革」路線が招いたものであり、また、「構造改革」路線は、貧困と社会的格差を広げ、子どもたちの家庭を直撃し、子どもたちの学習権を脅かしています。この「構造改革」路線をゆるさぬ社会的連帯のたたかいを重視したとりくみをすすめましょう。
 そして、子どもたちのすこやかな成長のために、憲法・教育基本法に盛り込まれた理念を、教育と学校と私たちの運動に生かしていきましょう。



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