全北海道教職員組合:『国民の切実な願いを踏みにじる教育基本法改悪法案強行採決に怒りをこめて抗議する』(声明)
2006年12月19日 全北海道教職員組合(道教組) 執行委員長 小林幹二
自民・公明の両党は、「子ども達の健やかな成長にとって教育基本法の改悪は必要ない」という圧倒的多数の父母・教職員・国民の声を無視し、12月15日の参議院本会議で採決を強行しました。変える理由も示さないまま、そして、どの世論調査をとっても「慎重な審議を」と国民が求めていることを顧みることなく教育基本法改悪法案の強行に踏み切ったことに、日本の教育の歴史に汚点を刻んだ暴挙であると、怒りをこめて抗議するものです。
先の通常国会で政府与党が改悪案を上程して以来、約60年前に憲法と一体となって制定された「教育基本法」の理念がどのようなものであったのかの議論が、国民の中で急速に深まりました。そしてそのことは、教育基本法の輝かしい理念を再発見させることになり、現在の教育上の諸課題を招いたのは教育基本法ではなく、その理念を軽視し実現の努力を怠ってきた教育行政こそが襟を正すべきだということを改めて実感させるものでした。
だからこそ、教育関係者のみならず様々な団体や市民が全国各地で立ち上がり、「変えてはならない」の大合唱を巻き起こしたのです。それは、教育基本法の改悪は、子ども達が自分らしく生きるということよりも、国策の要請に応えるために生きることを強いるものであり、その真のねらいには憲法9条の改悪のめざす「戦争する国」の人づくりにあるという重大な危険性についてを見抜いているものでした。
現職の学校長の3人に2人が改悪に反対し、日本教育学会の歴代の会長声明や日本弁護士連合会の声明に見られるように、教育の専門家も法律の専門家も声を大にして否定するこの「改悪法案」のどこに大義があるのでしょうか。それにもかかわらず、なりふり構わず強行採決の暴挙に出た安倍内閣と自公与党を断じて許すわけにはいきません。
しかし、政府与党が悪法を通そうとすればするほど、国民的討議と国会論戦の中から教育の本質を国民全体が再認識することになりました。それは、教育権は国家ではなく国民そのものにあるのであり、子どもも教職員も内心の自由は誰からも侵されず、そして、教育行政の教育への介入は抑制的ではならない、ということが子ども達の人格の完成をめざすことを目的にした教育にとっていかに大切なことであるかということの理解でもありました。
そしてそのことは、憲法の13条(国民の幸福追求権の保障)、19条(思想、良心の自由)、23条(学問の自由)、26条(教育を受ける権利)に歴然としてうたわれたものであり、旭川学テ事件に対する最高裁判決の判例に示されたものでもあります。どんな悪法も、近代国家が歴史的に勝ち取ってきた普遍の原則を前にその効力を発することはできないということ。そのことを、はからずも「改悪案」の国民的討議と反対の運動の中で国民一人ひとりが体得したことは、国民の大きな財産であり、改悪教育基本法を盾にした関連法の立案を阻止するための大きな足がかりとなりました。
また、この間のたたかいは多くの教職員の誇りと良心を奮い立たせるものとなりました。そのことは、結果としてこの北海道でも教職員組合の上部組織の違いをこえて改悪反対の一点での大きな共同を生み出すことになりました。このことは、憲法の改悪を許さない今後のたたかいの展望を大きくきりひらくことに確信を持たせるものであります。
私たちは、父母・国民との共同、一致する要求での共同という、この間のたたかいの中で蓄積された大きな力に依拠しながら、今後とも子どもと教育を守るために全力で奮闘していく決意を表明するものです。
【添付ファイル】
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