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大阪教職員組合:『憲法を守り生かすたたかいを機軸に、教育の営みを守りぬき、子どもと日本の未来を切りひらこう』

2006年12月18日 大阪教職員組合(大教組) 中央執行委員会

1.戦後教育史に最大の汚点を残す教育基本法改悪法案強行 
 政府・与党は、12月15日の参院本会議で教育基本法改悪法案を強行可決しました。
 法案のもつ数々の重大問題を不問に付したまま、慎重審議を求める国民大多数の声にも耳を傾けず、「教育の憲法」としての重みをもつ教育基本法の根本的改悪を強行したことは、戦後教育史に最大の汚点を残す暴挙です。
 大教組中央執行委員会は、この歴史的暴挙を糾弾するとともに、教育基本法改悪後の新たな情勢のもとで、憲法を守り生かすたたかいを機軸に、父母・国民のみなさんと力を合わせて教育の営みを守りぬき、子どもと日本の未来を切りひらくたたかいに全力をつくす決意をあらためて表明するものです。
  
2.教育基本法改悪反対闘争が生み出した巨大な財産 
 この間の大阪と全国のたたかいは、日本の国民運動の歴史に残る大きな到達点を築くものとなりました。民主勢力のたたかいが国民世論やマスコミを動かし、世論の変化が国会を動かして、政府・与党を土俵際まで追いつめ、あと一歩で成立阻止に持ちこむところまで迫りました。内閣支持率は記録的な急落をとげ、憲法改悪を公然とかかげ、鳴り物入りで発足した安倍内閣は、発足後3ヶ月足らずで、早くも重大な政治的窮地に陥っています。
 教育基本法の改悪は強行されたものの、私たちはこのたたかいを通して今後に生きる大きな財産を生み出すことができました。
 
 その第1は、教育と教育基本法についての国民的討論と共通認識が大きく広がったことです。
 「いじめ」や自殺をはじめとする教育問題はなぜ引き起こされるのか、どうすれば解決につながるのか、それらの問題と教育基本法はどうつながっているのかなどについて、学校、PTA、地域、職場、団体、マスコミなど、さまざまな場でかつてない議論が展開されました。それらをとおして、少なくない人々から「はじめて教育基本法を読んだ。こんなすばらしい法律を変えさせてはならない」との共通認識が広がりました。また、全国の公立小中学校長の66%が「改正に賛成できない」と表明し、日本教育学会歴代会長4氏による反対声明に教育学者1085人が賛同署名を寄せました。全国で50の弁護士会と2つの弁護士会連合会が会長声明・意見書・決議などを発表しました。こうした結果、どの世論調査においても「教育基本法改正は慎重審議すべき」との声が国民世論の大多数を占めるにいたりました。
 このような国民的議論の到達点は、改悪された教育基本法の具体化を許さず、あくまでも子どもの成長、発達のために行われる教育を守りぬくとりくみの力強い土台となるものです。
 
 第2は、「教育基本法を守るたたかいは憲法を守るたたかい」との認識が広がり、憲法改悪を許さない国民的エネルギーがより強大なになったことです。
教育基本法改悪反対闘争とむすんで、府内各地に憲法改悪反対の地域共同センターが結成され、九条の会は全国で約6000、大阪では571を数えるまでになりました。そこでの学習や論議によって、多くの人々が憲法と教育基本法の深いかかわりをつかみとり、憲法改悪を許さない国民的な力は質量ともにより強大になりました。
 大阪では憲法9条にちなんだ「9の日行動」を、9月29日に120箇所・1400人参加、11月9日に313箇所・3500人参加、12月8日に408箇所・5000人参加で成功させ、まさに府民世論をゆり動かすような史上最大の宣伝・署名行動を展開しました。こうしたとりくみの中で、労働組合や民主団体の人々が教育基本法をわがこととして語り、憲法を守りぬくことの大切さを誰もが訴えるという状況が生まれました。
 第3は、全教結成以来最大規模で教職員の決起と教職員の共同が発展したことです。
全国各地で教組史上最大の参加者を結集した集会が次々と開催され、学習、宣伝、署名、地元議員要請などは民主勢力全体のとりくみへと発展しました。中央集会、国会行動が連日のようにとりくまれ、職場からは教職員の総決起へむけた創意的なとりくみ、青年教職員の闘争参加への努力が続けられ、たたかいの中で組合加入がつづくなど、全教結成以来最大のたたかいが日本列島各地でくりひろげられ、この間集約された署名は312万人分を数えました。
 同時に、組合所属のちがいをこえた教職員の共同が、職場や教職員組合間で飛躍的に前進しました。11月25日の北海道での全教と日教組加盟組織との共同による1万人集会をはじめ、すくなくない県で全教加盟・日教組加盟の組織が教育基本法改悪反対の1点で共同集会を開催しました。大阪においても、日教組分会との合同職場集会、日教組加盟単組とのエール交換、府高教・高教組両委員長出席のもとでの府立高校職場九条の会交流会など、89年の労働戦線再編以来なかった前進が見られました。これらのことは今後の教育運動、憲法闘争にとってもきわめて重要な意義をもっています。
 私たちは、教育基本法改悪攻撃に真正面から立ちむかう中で、憲法と民主教育を守る力を高め、日本の社会進歩につながる巨大な財産をつくりだしました。
 
3.教職員組合の真価が問われる激動の時期へ 
 改悪された教育基本法は、�々餡箸砲茲襦岼�国心」の強制など、憲法第19条の「内心の自由」「思想・良心の自由」を侵すものであり、��教育内容への無制限の国家的介入を可能にし、憲法に保障された教育の自由と自主性を踏みにじるという重大問題をもっています。いいかえれば、人間の権利としての教育を保障するための国や行政の責任を示したものから、国家が国民にむかって、「このような人間になれ」「このように行動せよ」と命じる規範へとその性格を根本的に変質させたものであり、もはや「教育基本法」の名に値しないものです。
 さらに安倍内閣は、この改悪教育基本法を根拠にして、学校教育法をはじめとする関連法規を改悪し、教育振興基本計画の策定、学習指導要領の改訂など、教育の大改悪計画をおしすすめようとしています。その具体的内容は、安倍「教育再生プラン」に示されている、全国一斉学力テストとその結果の公表、学校選択制の導入、教育における「成果主義」としての教職員評価・学校評価制度の導入などです。
 教育を「戦争する国」と「格差社会」をつくる国策に利用しようとするこのような計画にたいして、これまで憲法と教育基本法にもとづく教育の推進につとめてきた教職員組合が、主権者である父母・国民と力をあわせて、教育の営みをどう守りぬくのか、今その真価が問われる時期を迎えています。
 
4.子どもと教育の未来を切りひらくのは国民 
 どのような教育改悪計画が実行に移されたとしても、子どもの成長・発達へのエネルギー、教育に対する父母・国民のねがいを封じ込めることはできず、国家による教育支配は決して成功しません。子どもと教育の未来は国民が切りひらくものであり、われわれはその力と展望をもっています。
 
 それは第1に、教育の条理、教育の営みがもつ本来的な力が国家による教育支配を許さないからです。
 教育基本法を改悪しても政府は教育を思いのままに動かすことはできません。子どもの成長・発達は、教師が子どもの人間的なねがいを大切にし、真理と道理にもとづいて子どもを導き、子どもとの間に信頼関係、人格的ふれあいが生まれるという教育の自由と自主性が尊重されることによってはじめて可能になるものです。それを保障したのが憲法13条の国民の幸福追求権、19条の思想・良心・内心の自由、第23条の学問の自由、第26条の教育への権利です。政府・文科省は教育基本法の条文を改悪することはできても、これら憲法の諸条項の制約からは逃れられず、そこに示された教育の条理そのものまで変えることはできません。ここに教育に対する権力的支配を打ち破り、教育の営みを守りぬく展望があります。
 加えて、どのような悪法が制定されようとも、教育にたずさわるのは、子どもや父母と直接結びついている教職員です。教職員が行政権力に魂を売りわたさない限り、国家が最終的に教育を牛耳ることはできません。こうした教育の条理を否定した上で、時の政権の国策に役立つ人間の育成をめざしたとしても、それは教育を荒廃させ、国民によるきびしい批判を引き起こすだけです。
 
 第2に、憲法と教育基本法の精神に支えられ、子どもの人間的成長をねがってとりくまれてきた民主教育と国民的な教育運動の大きな蓄積があるからです。戦後のしばらくの時期をのぞいて、教育はたえず憲法と教育基本法の精神を空洞化する攻撃にさらされてきました。その逆風の中で、日本の教職員は教育実践と教育研究を統一させ、世界に誇ることのできる民主教育の到達点を築いてきました。また国民は、教職員と力を合わせて、教育基本法の中心理念である「権利としての教育」を実現させるため、教科書無償化、学級規模の縮小、教育費父母負担の軽減、障害をもつ子どもの教育保障などの教育運動を前進させてきました。いまこれらのとりくみは、「子ども参加、教職員と父母の共同による学校づくり」、「ゆきとどいた教育の実現をめざす3000万署名運動」となって大きな発展をとげています。こうした民主教育と国民的教育運動の蓄積は、改悪教育基本法のねらいを打ちくだき、教育政策の抜本的転換を求めるとりくみへと発展していく必然性をもっています。
 
 第3に、アメリカのイラク戦争の失敗、米軍基地再編への自治体ぐるみの反対運動、ワーキングプアの社会問題化、「庶民増税、大企業減税」への批判など、現在の支配政策である「戦争する国づくり」と「弱肉強食の格差社会づくり」に対する怒りと反撃が国民的規模で広がっていることです。いま多くの国民が「戦争への道だけはすすみたくない」「こんなむごい競争社会・格差社会を子や孫に残したくない」との思いを強め、「もう一つの日本」を模索しています。それは、憲法にもとづき日本社会の民主的改革をすすめるたたかいに必ず合流するものです。このたたかいに国民の側が勝利することは、すなわち子どもと教育の未来を守りぬくことになります。
 
 第4に、以上のすべてのとりくみの土台として、日本国憲法が確固として存在していることです。平和、基本的人権、国民主権、議会制民主主義、地方自治の5原則を確立した日本国憲法こそ、国民のくらし、平和と民主主義を守る砦です。平和と社会進歩をめざす世界の人々との連帯の旗印です。
 どのような法律、法規、政策も憲法の制約から逃れることはできません。改悪教育基本法を具体化すれば、憲法違反を次々と積み重ねていくことになり、憲法と改悪教育基本法の矛盾を前向きに解決することが切実な国民的課題となります。国民の期待に応えて日本の教育の前進を図ろうとすれば、改悪教育基本法にもとづく教育政策をもう一度転換させ、憲法にもとづく民主教育の方向へすすむ以外に道はありません。憲法を立脚点として、改悪教育基本法の具体化をくいとめ、民主教育と教育運動をいっそう前進させ、子どもと日本の未来を切りひらきましょう。
 
5.憲法と教育基本法の精神こそ不滅の真理 
 かつて教育基本法の制定を準備した教育刷新委員会副委員長であった南原繁氏は、「今後、いかなる反動の嵐の時代が訪れようとも、何人も教育基本法の精神を根本から書き換えることはできないであろう。なぜならば、それは真理であり、これを否定するのは世界史の流れをせき止めようとするに等しい」と喝破しました。憲法と教育基本法の精神こそ不滅の真理であり、子どもと日本社会の未来を切りひらく羅針盤となるものです。
 われわれ教職員はこの不滅の真理、羅針盤をよりどころとし、どのような困難があっても教職員の責務として、子どもの成長・発達を目的とする教育の営みを守りぬく決意です。そして、憲法を守り生かすたたかいを機軸にすえ、父母国民のみなさんと手をたずさえて21世紀の新しい日本社会を打ち立てる事業に邁進することを誓うものです。
 
 
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