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秋田県高等学校教職員組合:『抗議声明』

2006年12月20日 秋田県高等学校教職員組合(秋田高教組)

 12月15日、参議院本会議は、事実上現行の教育基本法を廃止し、まったく新しい法律にする政府提出「教育基本法案」を可決・成立させました。慎重審議を求める多くの国民の声を無視し、このような採決をおこなったことは、歴史的な暴挙であり、強く抗議するものです。
 
 現行の教育基本法は、戦前の教育が教育勅語にもとづき、軍国主義と極端な国家主義に奉仕したことを真剣に反省し、平和と民主主義を求める憲法の精神を体現して制定された教育の憲法であり、準憲法的な性格を持つものです。
 ところが政府の「改正案」は、前文で「我々日本国民は、たゆまぬ努力によって」ということばで戦前と戦後を連続したものと捉えることで、戦前教育の問題点を免罪し、さらに「伝統を継承」ということばで大日本帝国憲法下での諸価値を復権させようとしています。また、国会の論戦のなかで、政府「改正案」は自民党新憲法草案の精神と一致するという答弁を伊吹文明文部科学大臣がおこなっています。これは、「改正案」は日本国憲法に違反していると答弁したも同様です。
 政府「改正案」は、名前こそ「教育基本法」ですが、現行教育基本法とは内容においても性格においても似ても似つかぬものになりました。
 第1に政府「改正案」は、日本国憲法ではなく、自民党新憲法草案の精神にもとづき作成されたものであり、日本国憲法に違反する法律となりました。
 第2に現行教育基本法は、憲法14条の「法の下の平等」を第3条「教育の機会均等」と第5条「男女共学」に、日本国憲法の条文のなかから教育に関係する文をとりだし、それを教育に即して具体化したという性格を持っています。しかし、政府「改正案」の条文の多くは憲法上の根拠を持たないものであり、「準憲法的性格」を喪失したものとなりました。
 第3に、国民に「国を愛する態度」や「公共の精神」を強制するもので、内心の自由を侵害するものであり、これらは立憲主義の精神を否定するものです。
 政府「改正案」は、「教育基本法」という名前の普通の法律となりました。それゆえ教育最高の指針は、日本国憲法のみが指し示すこととなりました。「教育基本法」の解釈・運用にあたっては、日本国憲法の精神・理念にもとづき、おこなわれなければなりません。
 今後、「教育基本法」に関連する法律(33本)、政令、省令、学習指導要領の改正がおこなわれますが、いずれの場合にも憲法の規定に整合することが求められます。
 教育基本法の「改正」はおこなわれましたが、今後はその「改正」を具体化する法制化を行政が展開することになります。これは、教育基本法「改正」の問題点と憲法との矛盾が明らかになる過程となります。
 私たちは、日本国憲法の精神・理念に基づいた教育の実践を今後とも続ける決意です。
 
 

『憲法に基づく教育実践を』
秋田県高等学校教職員組合(秋田高教組) 書記長 佐々木章

 改悪教育基本法は、内心の自由を踏みにじるとの憲法違反が指摘されています。また、17条の2項で「当該地方公共団体の実情に応じ、当該地方公共団体における教育の振興のための施策に関する基本的な計画を定めるよう努めなければならない」としています。しかし、この「実情」が、地方公共団体の財政力に応じたものであるならば、財政力の弱い自治体は、教育を保障することができなくなる可能性があります。憲法26条で「その能力に応じて、ひとしく教育を受ける権利を有する」としている教育権を子どもたちに保障することができなければ、憲法違反になります。このように憲法上疑義が多くあります。
 
 私たちが教育実践をすすめるよりどころは、教育の条理(人間の発達・人格の完成をめざす)と憲法にあります。
 憲法の「理想の実現は、根本において教育の力にまつべきもの」です。基本的人権の尊重、国民主権、平和主義などの憲法の原則を教育のなかにどう生かすかが、私たちに問われています。この憲法の原則は、教育課程のすべてに貫かれなくてはなりません。
 教科によっては、憲法の原則と関わらないように思えるものがあるかも知れません。しかし、人類がその歴史のなかで獲得した普遍の真理は、憲法の原則と一致します。だからこそ、憲法と一体であった「教育基本法」は、前文で「個人の尊厳を重んじ、真理と平和を希求する人間の育成を期する」と高らかに宣言しているのです。
 
 同時に大切なことは、子ども一人ひとりを大切にし、どの子にもゆきとどいた教育をすすめる努力です。「改正教育基本法」第六条は、「教育を受ける者が、学校生活を営む上で必要な規律を重んずるとともに、自ら進んで学習に取り組む意欲を高める」として、子どもに規律と学習意欲を要求しています。下位法のなかでこのことが、罰則つきで制定されるならば、イギリスでおこったように義務教育を終了せずに社会に放逐される子どもが出てくる危険があります。また、第十条では、「父母その他の保護者は、子の教育について第一義的責任を有するものであって」と親の責任が書かれています。子どもが問題を起こしたときに、親が罰せられる可能性があります。
 
 強制と罰則によるのではなく、「子ども参加、父母との共同」による「開かれた学校づくり」から始める教育づくりが今こそ必要です。
 子どもが基礎的な学力を獲得するために、ドリルや反復練習が必要なこともあります。そのためには、子ども自身がしっかりと必要性を認識し、納得しておこなわれなければなりません。また、発達段階やその子のおかれた状況によって、その方法は異なります。一つの方法論が絶対ということはありません。だからこそ、私たちは、教育実践を交流し、互いに批判もし、学ぶのです。学ぶ視点は、個人の尊重と自由及び幸福追求の権利であり、憲法の視点です。
 憲法に基づき、子どもの「人格の完成をめざし」て、教育実践をすすめましょう。
 
 
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