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長野県高等学校教職員組合:『教育基本法「政府法案」の強行採決と成立の暴挙に対し断固抗議する声明――教育の場に「改正」教育基本法の具体化をゆるさず、教職員、保護者、地域の方々、さらに子どもたちとも協力して教育を国民の手に取り戻すとりくみに全力をあげましょう――』

2006年12月18日 教育基本法を活かす県民ネットワーク

 12月15日午後、教育基本法「政府法案」が参議院本会議で可決・成立しました。前日の特別委員会での強引な審議打ち切りと強行採決を受けての成立でした。「成立を急ぐのではなく、子どもたちの教育のことはもっと慎重な議論を」と望む多くの国民の声を無視した暴挙と言わざるを得ません。私たち「教育基本法を活かす県民ネットワーク」は、今回の「改正」教育基本法に係わる強行採決と、その結果としての成立という歴史的暴挙に断固抗議します。安倍首相、伊吹文科大臣はじめ政府・与党の責任は重大であり、国民の審判を受けさせなければなりません。
 
 そもそも憲法に準ずる性格を持つ教育基本法の審議は、他の法律と同列に審議時間や国会の会期の都合で語られるべきではなく、国民的議論と合意が必要なはずです。しかし、法案の前提となった与党協議会の議事録は明らかにされず、国会の審議を通じても、これまでの教育基本法をなぜ変える必要があるのか納得できる理由はついに説明されませんでした。それどころか、審議の過程で、タウンミーティングにおける「やらせ質問」の事実が発覚し、法案提出の根拠にも大きな疑問が生じました。「改正」教育基本法は、その生い立ちの不当性が今後絶えず問われ続けられることになります。
 
 教育の優れた指針であり教育の普遍的な理念を示している、これまでの教育基本法と「改正」教育基本法とは余りにも対照的です。国や教育行政の役割を厳しく定め、教育への介入を戒めている教育基本法に対して、「改正」教育基本法は、国が教育に無制限に介入し、時の政府が望む国民づくりを行うことを可能にしています。民主主義国家の将来の主権者として子どもたちを尊重する教育基本法に対して、「改正」教育基本法は国家が定める徳目を子どもたちに教え込むことを「教育の目標」としています。この「教育の目標」は「改正」教育基本法において家庭教育、幼児教育から大学教育、そして生涯にわたって貫かれることになります。今、日本では公教育の役割を縮小させ、家計の状況が子どもたちの学びに影響を与えてもかまわないという教育における不公平・不公正さが、いわゆる「教育改革」によって公然と進められています。この動きは今後是正されるのではなく、ますます拍車がかかることになり、教育をめぐる問題はさらに深刻化することになります。国会審議で文科大臣は「改正」教育基本法と自民党の新憲法草案とすりあわせ、整合性を確認していると述べ、今回の教育基本法の改悪が憲法改悪の前段階であることに言及しています。今、この国の民主主義、人権、そして平和は重大な危機に瀕していると言わざるを得ません。
 
 「教育の目標」に「国を愛する態度」を入れ込んで、子どもたちと国民に「愛国心」を法で強制することは絶対に間違いです。国民の声を聞くことなく国民に負担を強いる今の国の状況こそ変えて、国民がこぞって期待できる状況に国を変えなければ、自ら愛するという気持ちは起こるはずはありません。また、「教育は、不当な支配に服することなく」は、「法律」の定めるところによるとし、政治的な力関係で決められた法律や教育行政が発する命令・通達などによって教育現場を締め付けることで問題はまったく解決しません。教育そのものが「国民全体に対し直接に責任を負つて行われるべきものである」という原則は少しも揺らぐものではなく、国や教育行政の教育支配はゆるされません。
 
 今回の改悪は取消のつかない誤りです。教育現場に大きな混乱を及ぼし、その影響は重大なものになります。私たち「教育基本法を活かす県民ネットワーク」は、県内にあって教育基本法改悪を阻止するためにこれまでさまざまな活動を積み重ね、運動を広げ、11月19日には3000人を緊急集会に結集し国会にむけてのとりくみを呼びかけました。その過程で多くの人々とこれまでの教育基本法を今こそ守り、活かそうという強い願いを共有することができました。子どもたちの未来、この国の教育の行く末を自分のこととして考える気運が高まってきました。確かに教育課題は山積しています。しかし、その解決のためには、教職員、保護者、地域の方々と協力して、さらには子どもたちをもパートナーにして「開かれた学校づくり」を進め、それを支える家庭、地域との連携を造り上げていくことが求められています。今後、さらに運動の輪を広げ、教育の場から「改正」教育基本法の危険なねらいを排除し、国のための人づくりの教育ではなく、子どもたちのため「人格の完成」をめざす民主的な教育をいっそう充実させる決意を表明します。今こそ、教育を国民の手に取り戻すとりくみに全力をあげましょう。
 
 

『参議院特別委員会における教育基本法改悪法案の強行採決に抗議する』
2006年12月14日 長野県高等学校教職員組合(長野高教組)

 本日、参議院教育基本法特別委員会は審議を打ち切り、教育基本法政府法案の採決を強行しました。会期の都合と数の力にものをいわせた強行採決であり、先月の衆議院特別委員会に続く暴挙です。私たちは将来の国家のあり方を左右する教育にかかわる重要法案がこのようなかたちで採決されたことに強く抗議します。政府・与党は取り返しのつかない過ちをしてしまいました。
 
 衆議院での採決強行以来明らかになったことは、タウンミーティングでのやらせ質問が次々と発覚し法案の提出根拠がなくなったことと、国民の大多数は「今国会での成立を望んでいない」という事実です。長野高教組が11月末から12月はじめにかけて行った緊急アンケートによれば、回答のあった市町村教育長の7割以上、県立高校のPTA役員の3人に2人が、今国会での成立に反対でした。重要な問題なので国民に信を問うべきだという回答もありました。国会審議を通じて、政府は最後まで現行の教育基本法を変えなければならない理由を語らないどころか、首相、文科大臣の答弁を聞くかぎり、現行法で対応できない教育課題は何一つありません。改定するのなら多くの国民がもっと説明してほしい、もっと国民の間で議論が必要だと考えています。今回の審議打ち切り・強行採決は国民の思いを踏みにじるものであり断じて容認できません。国民の声を無視して、採決を強行した政府・与党の姿勢は、この法案が持っている危険性をあらわにしました。すなわち、これまでの国や教育行政を縛るという教育基本法の性格が、子どもたちや国民を縛るものへと180度転換して、教育行政による教育への介入を無制限に行って、自分で考える国民を育てるのではなく、権力に対して物を言わない国民をつくろうとしているのです。この国の平和と民主主義は危機に瀕していると言わざるを得ません。
 
 私たちは、あまりにも問題が多い今回の法案を廃案にし、教育改革の方向性について一から議論すべきであると訴えてきました。今回の暴挙に断固抗議するとともに、参議院本会議での採決を断念するように強く求めます。今後もひきつづき多くの人々との共同を進め、優れた教育の指針である現行法の精神をいかす教育実践を積み重ね、子どもたちのために民主的な教育をしていく決意です。
 
 
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