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【行動】2006/12/11 
第18回ゆきとどいた教育をすすめる全国3000万署名集約集会【運動報告】

【運動報告】永島 民男 全国私立学校教職員組合連合 書記長


 早朝より全国各地からお集まりいただいた父母、教職員の皆さんご苦労さまです。また、全国各地での3000万署名のとりくみ、本当にご苦労さまでした。
 今年度の3000万署名運動は教育基本法「改正」法案が国会で審議される中で、教育基本法の「教育の機会均等」や「義務教育の無償」を生かした教育づくり・学校づくり、教育基本法にそった教育行政のあり方を問う運動としてとりくまれました。この間「いじめ」自殺問題、単位未履修問題、タウンミーティングでのやらせ発言等、教育に関する話題のない日はないほど、教育問題が国民的な関心事になり、教育基本法「改正」法案に対しても、マスコミの多くのアンケート調査でも国民の大多数が十分な審議を求め、強行採決反対を回答し、地方公聴会でも「改正」反対や慎重審議を求める意見陳述が相次いでいます。私たちの運動がこうした教育基本法「改正」反対の運動としっかりと手を結んで、教育への国民世論をつくってきたということに確信を持って、ゆきとどいた教育をすすめる運動に今後もとりくんでいきましょう。
 
 本集会は昨年同期を上回る750万筆にのぼる署名に託された私たちと国民の切実な願いを国会と政府に届け、来年度予算編成に反映させることと、併せてこの秋のとりくみをお互いの確信にし、私たちの願いを実現するための今後のとりくみについて確認するための署名集約集会です。
私たちは、さる7月12日、全国から600人の父母、教職員が東京に集まり、全国3000万署名スタート集会を行いました。ゆきとどいた教育をすすめる会代表委員の丸木正臣和光学園理事長は、「教育予算は削られる、貧しいものは切り捨てられていることを、国民にきちんと伝えていかなければならない」と述べました。また、「教育費・教育予算と学費無償化」と題した講演の中で三輪定宣千葉大学名誉教授は「教育基本法『改正』法案は、『愛国心』教育を中心とする国の教育内容統制と国・教育行政の教育条件整備の責任放棄が表と裏の関係にある」と指摘、その上で、「3000万署名運動は、政府の不作為を追究する真に『教育基本法を守り生かす』運動である」と強調し、運動の推進を訴えました。発言では、高校生の手による北海道私学フェスティバルのとりくみ、15年連続して1万筆、有権者の3割から署名を集めるとりくみを続けている北海道・桧山町の運動、大阪からは就学援助の実態が語られました。また、埼玉の定時制高校生は「定時制の灯を消さないで」と訴え、統廃合で近くに定時制がなくなり片道1時間以上もかけて通っている学校への思い、私立和光高校生徒会で私学助成署名と運動を担っていきたいという発言、北海道での生徒が中心となっての私学助成金増額に向けたとりくみなど、参加者の感動と決意を新たにさせるものとなりました。
 
 
いま、小泉政権5年間の結果としての経済格差の拡大が、子ども達の学校生活と将来にきわめて深刻な影を落としています。
 全国私教連がこの秋に行った「2006年度私立高校生学費滞納調査」は全国23都道府県の200学園で行われ、9月末現在で3カ月以上の学費滞納している高校生は2947人、1.75%、1校当たり14.74人と調査を開始した1998年以来、2004年(16.76人)に次ぐ過去2番目の人数になっています。経済的な理由で4月以降に中途退学・除籍になった高校生は81人(1校当たり0.41人)います。滞納の最高月数は39カ月で、高校3年の9月までで30カ月ですから中学時代からの滞納ということが考えられます。埼玉私教連のおこなった新入生父母学費アンケートによると、私学へ入学させている家計の収入が10年前に比べて平均で103万円も減少していることが報告されています。新潟県の私立高校生への学費補助制度は年収490万円以下の世帯へ行われますが、1999年に受給者が2090人(14%)でしたが、2004年には2664人(20%)となっています。
 
 「景気の回復」が言われていますが、リストラによる解雇・失職、倒産・経営不振が相変わらず続いており、経済的理由で修学旅行に行くことをあきらめる、クラブ活動に参加できない、アルバイトに追われて学校生活どころではなくなっているといった状況が、各地で大きく広がっています。学費滞納調査を報じた各紙とも「減らぬ学費滞納」「景気回復の効果表れず」「教育にも格差」と大きく報道しました。こうした経済格差の拡大のなかで、低所得者層にとって私学助成がセーフティーネットとなっています。
公立高校でも、授業料減免を受ける生徒、各種の奨学金を受ける生徒が急増し、私学と同じように経済的理由で修学旅行に行けない生徒が増えています。日高教の行っている「高校生の就学保障に関する調査」の中間報告によると、授業料滞納者数の全校生徒に対する割合は全日制の場合、2004年度の2.87%から2005年4.76%、2006年5.15%と増え続けています。また、定時制高校では同比較で、18.52%→19.92%→22.27%と高い水準で推移しています。
公立小中学校でも、経済的に困難な家庭に学用品などが支給される就学援助制度の利用者が増え、2004年度は全児童・生徒数の12.8%にあたる133万人が受けていますが、これは2000年度から36%も増えています。
 
 ところが、「三位一体改革」のもとで地方財政が逼迫し、地方自治体が就学援助制度の切り下げ、授業料減免対象基準の引き上げによる対象者の削減などが実施され、生徒、父母をさらに厳しい状況に追いやっています。
 文部科学省は「学校給食の徴収状況に関する調査」を実施しています。この調査は、増加している経済的な理由によって給食費等が納入できない家庭への援助をすすめるためのものではなく、むしろ「意図的に学校給食を未納している」家庭の「責任感や規範意識」を問題にし、「法的措置」も含めて徴収方法を強化する方向に誘導しようとしているもので、問題のあるものです。

 高校生の就職難も深刻です。日高教と全国私教連がおこなった2007年3月卒業予定の高校・障害児学校生徒の10月末現在の就職内定調査(26道府県345校)では内定率は69.9%(男子75.6%、女子61.0%)と昨年同期比で6.3ポイント改善しています。厚生労働省の9月末の調査でも昨年同期比4.4ポイント内定率が上回っていることからも就職内定は幾分改善されていることがわかります。しかし、男女間の格差、職業学科と普通科との格差、地域間格差は依然として厳しいものがあります。就職したいと思っても出来ない、自分の将来の仕事に夢を持って社会に巣立っていくことが難しい、そんな現状にぶつかりながら、多くの子ども・生徒達は、現在の社会とおとなたちの在り方に、鋭い眼差しを向けているのです。
 
 
こうしたなかでとりくまれた今年度の全国3000万署名運動は、3つの大きな特徴を持っています。
 
 第1の特徴は、各県での生徒達の活躍です。多くの生徒達が、自分たちの学ぶ権利を守るために様々なとりくみを自主的に組織し、自分たちの意見を積極的に社会へ、行政へ表明する自主的なとりくみとして大きな流れになって来ていることです。
 私学ではフェスティバルやつどいの高校生実行委員会が新たに東京、神奈川、千葉、茨城で結成され、学校を越えた様々なつながりを広げながら運動を活性化させるとともに、より主体的に運動へとりくんできています。北海道では北星学園女子高校で、生徒会授業料安定委員会の呼びかけで全校生徒600人による大通りでの街頭署名活動が2回も行われるとともに、市内7校の生徒会連合主催で600人でのパレードが行われました。愛知では「教育に公平を」というスローガンで高校生だけで8000人のパレードを成功させました。京都でも昨年の1.5倍の4500人で私学フェスを成功させるとともに800人の高校生が繁華街でのパレードを行いました。熊本でも私学助成増額を求めて高校生が繁華街をパレードをしました。宮城では私学フェス実行委員会のなかに学習局というパートをつくり、高校生が県私学文書課へ私学助成の実態を調査に行き、4校の高校生28人と先生方1人で私学助成の学習会を成功させました。
 
 愛知では私学奨学基金1億円募金がついに4月10日に目標の1億円を達成しました。このとりくみは1999年に教職員と父母が始めた運動を高校生が引き継ぎ、この7年間に月1回の募金活動に参加した高校生が延べ4万人という数にも示されるように、仲間を救う募金活動が自分の課題となって引き継がれてきました。これまでに年額12万円の奨学金を615人の高校生に貸与したこの活動は、1億円の達成を前にテレビを始めとするマスコミで「高校生1億円 街頭8年社会に声届く」(中日新聞)などと一斉に報道され、一挙に県民・市民に広がり多くの募金が殺到し一気に達成しました。このとりくみは京都や新潟でも開始されていますが、今年度の愛知の新入生歓迎フェスティバルに参加した高校生によって、北海道や東京、熊本でも奨学金運動を始めたいという高校生の声が続々と生まれています。
 
 公立高校では、高校統廃合に対して、各地で統廃合に反対する生徒の自主的なとりくみが全国で広がっています。長野では9月県議会で18校を9校に統廃合する9議案のうち、6議案を「住民の合意がない」という理由で否決させることができました。この成果を生み出す力となったものが、地域ぐるみでの学校と地域を守るとりくみであるとともに、高校生たちのとりくみの広がりでした。県教育委員会を招いての全県高校生集会が開催され、統廃合をすすめる県の「高校改革プラン」について、県教育委員会と真剣な討論を行うなど、様々なとりくみが行われました。
 また、夜間定時制高校の統廃合がすすむ中で、首都圏の高校生を中心にして「定時制の灯を消さないで首都圏集会」が開催されるなど、全国各地で「存続させる会」や「守る会」をつくり、定時制統廃合に反対するとりくみが大きく広がっています。
 こうした生徒の学校の枠を超え、外と繋がったとりくみは、確実に生徒の成長の場となっており、さらに父母・教職員をはじめ、社会をも大きく励ますものとなっています。
 
 
 第2の特徴は、7月に閣議決定された「骨太方針2006」での「私学助成を今後5年対前年度比1%減額」や「児童生徒の減少に伴う自然減を上回る教職員数の純減」などの国の動向と、各自治体での財源不足を理由とした私学助成削減の動きなど国と県が一体となった教育費削減の動きに対して、各県での運動と3000万署名運動を中心とした中央での運動が一体となって、それらに歯止めをかけるものとしてとりくまれたことです。
 今年度国基準の伸び額を大きく下回り、来年度予算編成で私学関係予算の削減計画が明らかになった山形では山形県私学フェスタを昨年を上回る規模と内容で成功させるとともに、署名数でも昨年度を超えるとりくみを行い、知事査定に合わせた生徒・父母・教職員・経営者一体となった大きなとりくみを計画しています。岡山では青年組合員が中心になって、夏に全市町村要請を行うとともに、報道各社へのレクチャーの実施、知事査定期の県庁1000人包囲行動の立案など青年教職員が、まさに自らの将来と私学助成を二重写しにしたとりくみを行っています。各県でのこれまでを上回るフェスやつどいの取り組み、私学助成運動の集大成として昨日、「12・10銀座パレード」がとりくまれ、日比谷野外音楽堂での集会と銀座パレードに全国から500人の高校生の参加を始めとした3000人の参加者で大きく成功しました。
 
 公立では、経済財政諮問会議「骨太方針2006」に向けた「制度の維持・拡充と教職員定数削減反対」の署名、文部科学大臣宛の「『第8次教職員定数改善計画の策定』等を盛り込むことを求める署名」にとりくむとともに、全国各地で自治体キャラバンにとりくみました。全国キャラバンでは、教育基本法「改正」問題とともに教育条件整備についての懇談が行われ、「地方を切り捨てず、地方を考えた教育行政を」等と都市部と郡部の格差是正を求める意見とともに、「少人数学級実施学年を拡大してほしい」「少人数学級実施は市独自では困難、義務教育は国の責任で」等、国の責任での少人数学級の実施、教職員の増員を求める意見が出され、自治体関係者との教育条件整備にむけた共同を広げることができました。
 文部科学省の2007年度予算概算要求は私学助成(高校以下)については30億円増の1068億5000万円を要求し、今年度恒久的措置になった授業料減免事業等特別経費についても2000万円増額要求しました。しかし、昨年度は5カ年計画の第8次教職員定数改善計画初年度の予算要求をしましたが、今年度の概算要求では教職員定数改善計画の策定を放棄し、代わって「優秀な教職員の確保及び教育課題に対応するための緊急的な教職員配置」が盛り込まれましたが、特別支援教育と食育の推進のため3カ年で1510人を増員する計画です。しかし、3カ年の自然減は4000人あり、結局教職員数を2590人減らすという「教職員定数削減計画」です。こうした文部科学省の姿勢は父母・国民の願いに背を向けたものといわざるを得ません。
 
 今年実施されている文部科学省の教職員勤務実態調査(中間まとめ)で示された、月65時間余りという過労死ラインに相当する教職員の超過勤務を減らすために、さらに子どもたちの個別の指導にあたる時間が1日平均11分しかとれない多忙な実態を解消するためにも、教職員を増員することが求められています。
 
 
 第3の特徴は、教育基本法「改正」法案が国会に上程されるなかで、教育をすすめるための諸条件を整備する教育行政の役割や、経済的な理由で教育上差別されてはならないという機会均等の原則など、教育基本法が定める理念や原則の改めて学び直しながら、教育基本法を生かしていくとりくみとして、3000万署名運動がとりくまれたのです。全国各地で「右手に3000万署名、左手に教基法改悪反対署名」のとりくみが展開されました。それは3000万署名運動が教育基本法の精神を生かす運動であり、教育基本法を守る運動、教育基本法に基づく教育づくり・学校づくりのとりくみであるからにほかなりません。
 そうした結果、昨年の集約集会の署名数を上回る署名が本日、集約されました。このことは、多くの国民が教育基本法を生かした教育と学校づくりを切望しているということであり、その実現を願っているということの反映でもあります。
 
 
この年末に向けて、国の次年度予算編成作業がすすめられ、12月20日までには財務省原案が出される見通しです。私たちの要求や願いを実現するための国の予算編成は、今、その最大の山場を迎えています。今日の午前中には、私たちの代表団が財務省や文部科学省など、関係各省庁に強力に要請を行い、各県の参加者の方々には地元出身議員への要請に、旺盛にとりくんでいただきました。年末の政府予算案決定に向けて、残された期間、それぞれの地元で一層大きな世論を広げ、署名運動を継続しながら、「私学助成を増やし、国の責任で30人学級を実施してすべての子どもにゆきとどいた教育を」の声を一層大きく国に向けてあげていこうではありませんか。
 
 すべての参加者の皆さん。
 私たちは今日、全国各地からすべての子どもにゆきとどいた教育を、という願いで集められた767万6001筆の署名を集約しました。この署名の1筆1筆には、すこやかな子どもの成長と、その子どもたちの夢にあふれた未来を願う多くの国民の気持ちが込められています。今、子どもをめぐる困難な状況の中、大人と社会の在り方が問われています。教育と学校をめぐる大きな激動の時期だからこそ、子ども達とともに未来の希望について語り合うために、父母、教職員、地域の大人達のつながりの輪を一層大きく広げて頑張っていこうではありませんか。



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