【行動】2006/12/11
第18回ゆきとどいた教育をすすめる全国3000万署名集約集会【主催あいさつ】
【主催あいさつ】三輪 定宣 帝京平成大学教授・千葉大学名誉教授
教育基本法をめぐる緊迫した忙しい中で、3000万署名運動を推進され、ご参集いただきましたみなさんに、心から敬意を表したいと思います。
過去17年間、3億5000万という署名数は、毎年平均約2000万、有権者1億人の5分の1、総選挙の自民党の得票数に匹敵する巨大な数であります。
それが現実の政治・政策にどのようなインパクトを与えたか、数字で確かめてみたいと思います。公教育費の対GNP比、政府の教育財政への実績や努力度を測る指標でありますが、その比率は運動前には、つまり1981年度から89年度までの8年間に、5.7%から一挙に滑るように、4.6%へと短期急落しました。この重大な危機感を背景に、バネに、3000万署名運動がスタートしたわけでありますが、その後90年度から2003年度までの13年間は、4.5〜4.7と、ほぼ横ばいで、この間の経過をしっかりと食い止めてきました。
2004年度以降の決算は未公表ですが、この傾向は変わりません。要するに、運動が全体としての教育予算と、教育条件整備の後退の歯止めとなったことが、数値によって実証されます。しかし、学校教育費の公財政支出のGNP比は、よく紹介されていますように日本は3.5%で、OECD平均5.1%、日本が30カ国中29位。逆に私費負担は、日本が1.2%でOECDが0.7%で、日本がダントツで第2位であります。教育予算の大削減により、子ども・父母・国民を最も苦しめている国が日本なのです。主要国で最悪の学級規模や学費、その下での教育の困難や危機は、まさに政治災害そのものです。
国際人権規約A規約第13条の定めるあらゆる教育の無償制導入を留保する日本に国連は、撤回を迫るという異例の2006年問題、これは日本の教育の異常さと独善、そして無責任さを浮き彫りにしております。
また同条は、教育職員の物質的条件の不断の改善を規定しておりますが、過大な学級規模、多忙化、そして非常勤講師の濫用など、事態は悪化の一途をたどっておりまして、この面でも条約無視は露骨です。教育基本法第10条は、戦前の天皇制軍国主義への痛恨の反省に基づいて、政府・教育行政の教育に対する不当な支配を禁じ、教育条件を重要な教育的価値と認め、その整備こそ本来の任務と位置づけて、ゆきとどいた教育の条件を整えることにより、教育に奉仕することを定めていまして、まさに同法の根幹・命とも言うべき条文です。
しかし政府は、教育基本法の敵視・空洞化政策の象徴のごとく、教育条件整備の責任を回避・放棄し、行政改革・構造改革などの不当な支配に服してきました。これに対し、同条の実行を政府に迫り、その運動を通して教育基本法を守り、生かし、根付かせてきたのは、国民の側の教育条件整備の運動、その代表である3000万署名運動であり、それをすすめられたみなさんでした。
その運動の根拠である教育基本法、特にその第10条が事実上廃止されれば、愛国心教育をはじめとする教育の国家統制が、軍国主義の方向で格段に強化される反面、教育条件の低下や悪化は避けられず、教育の荒廃を助長し、子どもや父母・国民をいっそう苦しめることは必至です。国連の機関・ユネスコの最近1996年の勧告は、教育政策の決定は当局と諸団体、学会などとの対話・協議によるべきこと、それは実施段階だけではなく、計画・作成から点検・評価までの全過程が含まれるべきであると、明記しています。
教育学界の主な学会を網羅した29の学会の歴代会長が、教育基本法のいわゆる改正案の廃止を求めるなどということは、教育史上前代未聞の出来事です。私もその行動に参加し、記者会見や集会などで強調してまいりました。国民の反対大合唱の中で、これを強行採決しようということは、教育政策決定の国際的ルールにも完全に違反するものです。17年に及ぶ3000万署名運動が蓄えてきた総力を振り絞って、全ての人たちと連帯し、何としても教育基本法改悪の暴挙を阻止しようではありませんか。
以上、呼びかけ人のあいさつとします。
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