【行動】2007/03/11
改悪教育基本法の具体化をゆるさず、民主教育をすすめる学習・討論集会【基調報告��/2】
【基調報告】山口 隆 全日本教職員組合 副委員長(教文局長)
※本「基調報告」は、3月11日に開催された「改悪教育基本法の具体化をゆるさず、民主教育をすすめる学習・討論集会」で提案されたものを、加筆・補強したものです。
はじめに
全教は教育基本法改悪を許さぬたたかいをたたかい抜き、戦後教育運動史上特筆すべき重要な到達点を築きました。全教は、2月10日から12日まで開催した第24回定期大会で、この歴史的たたかいから教訓を汲みつくし、憲法闘争を基軸に、憲法と教育の条理に立脚して教育を前進させようという方針を確立し、教育基本法闘争の総括・大学習運動を提起しました。これをすすめるために、本日、みなさんにお配りしている職場討議資料を作成し、職場、地域からの総括・大学習運動を呼びかけるものです。本日の学習討論集会は、このとりくみをすすめるための出発点と位置づけます。
すでに、大会方針をうけて具体化の計画を作成したり、具体化をはかったりしている組織もあることと思いますが、本日の学習討論集会では、あらためて、この間の教育基本法闘争の到達点を確認するとともに、この基調報告で、このたたかいが築き上げた到達点のもつ意味を解明し、討論をとおして深め、各組織からの参加者で共有し、総括・学習の大運動を展開する重要な契機としたいと考えます。
同時にそれは、実践的総括・大学習運動として展開されるべきであり、本学習討論集会では、「参加と共同の学校づくり」の実践的意思統一をすすめるとともに、当面の全国一斉学力テスト押しつけをゆるさぬとりくみ、改悪教育基本法具体化としての教育改悪3法案を阻止するたたかいの意思統一を行いたいと考えます。
1.教育基本法改悪をゆるさぬとりくみが築いた壮大な到達点
あれこれの到達点については、討議資料にかなりくわしく記載していますので、それに譲りつつ、ここでは、概括的に到達点を確認するとともに、築き上げた到達点は、今後のたたかいにとってどういう意味をもっているのかを中心に提起します。
(1)どの指標をとっても、文字通り全教結成以来最大規模のたたかいに
まず、宣伝については、昨年1年間に全教が作成したビラだけでも6種類650万枚にのぼります。全国各地で作成された独自ビラや手づくりビラなどを含めると、このたたかいで作成、配布されたビラは全国で2000万枚を超えました。駅頭、街頭での宣伝行動も大阪での408駅頭5000人の宣伝行動をはじめ、各地で無数に、しかも大規模に展開されました。
集会では、東京での2万7000人集会をはじめ、北海道の組合所属の違いを超えた1万1000人集会、大阪で7500人、岡山で4000人、長野で3000人、山口2100人、島根1150人など、それぞれかつてなかった規模での集会を開催し、成功させてきました。そうした大規模集会と同時に、地域・草の根からの中小規模の集会、学習会が無数に開催されました。
中央集会にもこれまでにない結集がありました。連日日比谷野外音楽堂があふれかえり、臨時国会最終盤に開催した12・13集会は2日前に決めたにも関わらず、4500人が日比谷野音に集結しました。
(2)かつてなく強まった労働組合、民主団体との共同・団結
労働組合、民主団体との共同も大きく広がり、それは、憲法改悪を許さぬとりくみと固く結んで展開されました。当初は、教育基本法問題は、教職員と教育現場の問題という認識が、日本の将来にかかわる大問題という認識となり、民主団体、労働組合は我がこととしてとりくみました。このたたかいの前進の中で全労連議長を代表とする労働組合、民主団体の共闘組織である「教育基本法改悪をゆるさない各界連絡会」が結成されましたが、これは、その後のたたかいにきわめて重要な役割を果たしました。
全教は連日の国会前座り込みを敢行し、ここに民主団体、労働組合が連日集結し、毎日、連帯のあいさつを行いました。民主団体、労働組合は、教育基本法問題は、教育にたずさわるものにかかわる問題ではなく、日本の将来にかかわる大問題という認識を高め、教職員組合のとりくみへの協力ではなく、文字どおり共同のとりくみとしてたたかうという質的な転換をとげたといえます。
(3)戦後教育史上最大規模で展開された教育についての国民的討論
このたたかいをとおして、展開された国民的討論は、戦後史上最大規模のものとなりました。そしてその国民的討論は、「教育とは何か」「教育とはだれのためのものか」という根源的問いかけを含んで展開されたことがもっとも重要な特徴です。それゆえ、この国民的討論は、国民的大学習運動として展開されたといえます。「はじめて教育基本法を読んだが、平和を希求する国民の願いに根ざし、子どもたちを人間として育てるいとなみを励ましている教育基本法に強く心を打たれた」という感想が各地から寄せられたことにも、そのことが示されています。
(4)目を見張る教職員の立ち上がり
このたたかいの先頭に立ったのが、全国の教職員でした。それは、教職員の誇りと尊厳をかけたたたかいとして展開されました。教職員は、月80時間を越える超過勤務という激烈な多忙のもとにおかれていますが、そのなかでも、少しの時間を見つけて職場で話し合い、学習し、集会にかけつけ、ビラを配り、駅頭でマイクを握り、国会にはせ参じ、大奮闘しました。中には、学級での指導困難を抱えていたり、親の介護などの家庭の事情などで、直接には立ち上がれなかった教職員も、あったと思います。しかしそうした中であっても、力をこめてとりくまれた日々の教育活動自体が、教育のいとなみを太くする重要な力であり、教育基本法を学校教育に具体化するとりくみであったことを、あらためて指摘しておきたいと思います。
(5)教職員と教職員組合が果たした重要な役割と社会的信頼、権威の高まり
「新聞全教」新春座談会で「集会、宣伝、国会傍聴などのとりくみが中央・地方で無数に行われましたが、それは全教なしにはできませんでした。たたかいの最終盤には、地方の新婦人のニュースに教職員組合のことが記事として載るんです…それは、連帯という気持ちだけにとどまらない、私たち親も心を揺さぶられてという思いがあります」と新婦人の方が語っています。冒頭に述べたように、全教は、地域・草の根からの運動と国会闘争を結び、最後の最後までたたかい抜きました。このたたかいをとおして、日本の教育運動は、全教抜きには語れない、という状況がつくりだされました。全教は、文字どおり、社会的信頼と権威を高めました。それは、今後の憲法改悪を許さぬたたかいを基軸に、憲法と教育のいとなみに立脚して教育を国民的につくりあげるたたかいにとって、はかりしれない重要な意義をもつものです。
(6)これらは、今後のとりくみにとってどのような意味を持つのか
以上、概括的に述べてきたこの間の運動の到達点は、どのような意義をもつのでしょうか。ここでは、それを5つの重要な意義として整理したいと思います。
第1は、後に述べる、改悪教育基本法との実践的対決点としての「参加と共同の学校づくり」の条件を限りなく広げたことです。この間の教育についての国民的討論の展開は、そのまま教育についての大学習運動でした。そして多くの父母・国民が教育においては、子どもが一番大事、そしてその教育は父母・国民、教職員が力をあわせてつくるのだ、という当然といえば当然の、しかし、それが教育基本法改悪勢力との基本的対決点であった中心部分をしっかりにぎったことが重要です。教育基本法闘争は、教育を語りあう土壌を、これまでになく大きくきりひらきました。これは、「参加と共同の学校づくり」の前進にとって、きわめて重要な積極的条件となっています。
第2は、国民的に教育をつくりあげる運動の展望を大きくきりひらいたことです。今後、改悪教育基本法具体化をゆるさぬたたかいが、日常的、連続的に求められます。このたたかいは、「参加と共同の学校づくり」と固く結んで、地域・草の根からの国民的教育合意運動として、展開されなければなりません。この間の国民的討論の展開と、労働組合、民主団体との団結・共同の強化はこの運動をすすめていく土台を地域から築いたといえます。当面、全国一斉学力テスト押しつけ反対のたたかい、教育改悪3法案阻止のたたかいが求められますが、全国一斉学力テスト押しつけ反対にかかわって、すでに全国各地から、出足はやいとりくみの開始が報告されていることは重要です。このこと自身、教育基本法闘争が築いた到達点を確信させるものであり、今後の運動発展の展望を示すものです。確信を持ってとりくみをすすめましょう。
第3は、この運動を主体的にすすめる教職員と教職員組合の果たすべき社会的役割と権威を大きく高めたことです。すでに述べたように、このたたかいをとおして、全教は社会的信頼を大きく高めました。それゆえ、私たちに対する期待も限りなく大きくなっています。いま、私たちは、この社会的信頼をいしずえに、父母・国民の期待にこたえる教職員組合運動を、父母・国民のみなさんと力をあわせて大いに展開する歴史的時期に立っています。この運動を地域からすすめるうえで、この間の全教への信頼と権威の高まりは、何よりも大きな条件をつくりあげました。
第4は、憲法闘争を国民的に大きく広げる展望をきりひらいたことです。大会や中央委員会でも繰り返し議論されたように、この間の教育基本法は憲法闘争と一体に、あるいは、その重要な一環としてとりくまれました。そのことが、教育基本法闘争が憲法闘争を押し上げ、憲法闘争が教育基本法闘争の裾野を広げた、といえる状況をつくりあげた重要な要因です。この位置づけを明確にしたからこそ、いま私たちは、憲法と教育のいとなみに立脚して、父母・国民とともに教育をつくるという、展望のある正確な方針を共有しているのです。同時に、憲法闘争と一体に教育基本法闘争をたたかいぬいたからこそ、安倍内閣が憲法改悪を公言し、あろうことか、5月3日までに、憲法改悪のための手続き法案を通すといっている重大な情勢に対して、憲法改悪を許さぬ当面の重要なたたかいとしてこれを位置づけ、全力をあげなければなりません。教育基本法闘争をたたかい抜いた力をさらに広げ、何としても改憲手続き法案を阻止しましょう。
第5は、教職員にとっての憲法闘争は、憲法9条を守れという課題のみならず、教育の立脚点をより強固に、確かなものにするたたかいという重要な意味を確認することができたことです。
この間の教育基本法闘争をとおして、憲法と教育のいとなみとの関係が大いに語りあわれ、学習されました。私たちは、教育のいとなみは、憲法第13条(個人の尊厳と幸福追求の権利)、第19条(思想・良心・内心の自由)、第23条(学問の自由)第25条(生存権)、第26条(国民の教育権)等に源を求めることができることを学びあいました。ここから、教職員にとっての憲法闘争は、教育のいとなみの立脚点をより強固に、確かなものにするたたかいであるという重要な位置づけを行うことができました。したがって、憲法闘争における教職員の果たすべき役割は、一段と重要です。全力をあげてこの歴史的使命を果たそうではありませんか。
もちろん、これらをすすめていくうえで、課題も残しています。この間の教育基本法闘争に、立ち上がることができなかった職場もあり、立ち上がることができなかった組合員、教職員がいたことも事実です。直面する歴史的な憲法闘争に、文字どおりすべての職場、組合員、教職員が立ち上がる状況をつくりあげることは、もっとも重要な課題です。常に、職場がどうなっているか、職場教職員の要求や悩みはどこにあるのか、に目を注ぎ、多忙化のもとで、なかなか課題が見えにくくなっている組合員一人ひとりにていねいに話しかけ、働きかけ、たたかいへの立ち上がりをうながすとりくみを、もっと意識的にすすめましょう。そうすれは、組合員、教職員の力をもっと引き出し、職場の底をついたとりくみをすすめることができます。立ち上がりきれない職場や組合員、教職員を残したということは、逆に言えば、すべての職場から組合員、教職員が立ち上がれば、さらに強大なエネルギーを発揮することができ、さらに壮大なたたかいを展開することができるという大きな可能性を示しています。職場のもつエネルギーに信頼し、大きくとりくみを発展させましょう。
2.憲法と教育のいとなみに立脚してとりくみをすすめることのもつ重要な意義
(1)憲法に立脚することの根拠
憲法に立脚するとは、どういうことでしょうか。それは、単に「教育基本法が改悪されたが、憲法がある」という位置づけではありません。上述したように、教育の条理の根拠は、憲法に求めることができます。旭川学テ最高裁判決の最大の意義は、憲法的原理から教育の条理を導き出しているところにあります。教育基本法は「われらは先に日本国憲法を確定し」と述べ、「憲法の理想の実現は根本において教育の力にまつべき」としていましたが、このことの意味は、憲法と教育基本法が一体であるということにとどまらず、憲法の諸条項、とりわけ第13条、19条、23条、26条が教育に要請するものを、教育に関わる根本法として確認、確定したということを意味します。先に述べた旭川学テ最高裁判決もこれを確認しているのです。
討議資料には、教育のいとなみの本質は、憲法の中に包み込まれている、と述べましたが、それは、このことを意味します。改悪教育基本法は強行されましたが、憲法と教育基本法=教育は一体という基本性格は変わらないし、変えようがありません。したがって、私たちは、憲法に立脚するというとき、それは、教育を前進させるきわめて積極的な位置づけを行っていることを意味します。このことをお互いに確認したいと思います。
(2)教育のいとなみに立脚するという意味
同時に、教育のいとなみに立脚する、とはどういうことでしょうか。それは、「法が教育を規定する」のではない、ということです。教育基本法は、きわめてすぐれた立派な法律です。私たちも、ずっと教育基本法にもとづく教育という言い方をしてきました。
しかし、本質的には、教育基本法があって教育のいとなみがあるのではなく、人類が営々と築きあげてきた教育といういとなみがまずあって、その教育のいとなみの本質を教育基本法が法として確認してきたということです。つまり、法律にどう書かれようとも、教育のいとなみは厳然と存在するということです。
教育のいとなみは、本質的に子どもの成長・発達を助けるいとなみであり、それは、子ども、父母・国民、教職員との直接的関係でいとなまれるものです。それは、人間が成長・発達し続ける存在であり、その成長・発達は、人間の集団の中で可能であるという人間存在の本質に由来するものです。
この教育のいとなみの本質は、何人も、またどのような力をもってしても絶対に消し去ることができません。この教育のいとなみの力があったからこそ、国民の中に厳然と存在する憲法的力としっかりむすんで、半世紀以上にわたる憲法改悪、教育改悪攻撃をおしとどめてきました。この教育のいとなみの力があるからこそ、これからも教育改悪攻撃から子どもを守ることができます。
いくら教育基本法を改悪しようとも、教育のいとなみが子どもの人格の完成をめざすいとなみであり、それは、国民との直接的関係でおこなわれるという本質を変えることなど、絶対にできないのです。教育のいとなみに立脚するということは、この教育に本質に根ざすということであり、それは、はかりしれない大きな力であるということです。
3.「参加と共同の学校づくり」は改悪教育基本法具体化との学校教育におけるもっとも重要な実践的対決点
改悪教育基本法の眼目は、教育の目的の変質と、教育についての国家権力が無制限に介入できるしくみづくりです。だから、「国民全体に対し直接に責任を負って」を削除し、「不当な支配に服することなく、この法律及び他の法律にもとづいて」を入れ込みました。したがって、学校教育における基本的対決点は、国家権力による教育目的の変質と教育に対するコントロールを許さず、教育の目的である子どもの人格の完成を目指す教育を国民全体に対し直接に責任を負ってすすめることにあることは、疑いありません。つまりそれは、「参加と共同の学校づくり」として具体化されるものにほかなりません。私たちは、これまでも、「参加と共同の学校づくり」は、政府・文部科学省による教育改悪攻撃との戦略的対抗軸、と位置づけてとりくみをすすめてきましたが、改悪教育基本法強行のもとで、「参加と共同の学校づくり」は改悪教育基本法具体化との学校教育におけるもっとも重要な基本的対決点となります。この意義を踏まえて、とりくみをすすめることが重要です。
4.「参加と共同の学校づくり」と固く結んで、教育についての国民的合意運動を
同時に、安倍内閣は、改悪教育基本法の具体化としての全国一斉学力テスト押しつけ、学校教育法、教免法、地教行法改悪という教育関連3法案の今国会での強行をねらっています。そしてこれ以後も、33法案ともいわれる教育関連法の改悪をねらっています。これらについては、「学校づくり」の枠内にとどまらない国民的運動が求められるものです。したがって、教育課題である「参加と共同の学校づくり」とともに、教育についての国民的運動が必要であることは言うまでもありません。
これを踏まえ、全教は、「参加と共同の学校づくり」と固く結んで、教育についての国民的合意運動を、と提起していますが、それは、教育基本法闘争の到達点を踏まえたもっとも正確で、相手の攻撃と正面から切り結ぶ方針であることを強調しておきたいと思います。
5.具体的なとりくみ
6.当面の「全国一斉学力テスト」押しつけ反対、教育改悪3法案阻止のたたかいについて
7.政治戦での決着を
▲ページトップへ
|