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【報告】2006/04/27 
『全教からの追加情報』(教員の地位に関する勧告の適用に関するILO・ユネスコ共同専門家委員会 宛)� 殖�

2006年 4月27日
 
教員の地位に関する勧告の適用に関する
ILO・ユネスコ共同専門家委員会 御中
  
全日本教職員組合
中央執行委員長 石元 巌

全教からの追加情報

はじめに 
 全日本教職員組合(全教)は、文部科学省(文科省)が推しすすめている「指導力不足教員」政策と新しい教員評価制度の導入と運用において、ILO・ユネスコ『教員の地位に関する勧告』(以下、『教員の地位勧告』)が遵守されていないとして、CEARTに対し「申し立て」(ALLEGATION)を行い(02年6月)、受理されました。そして、CEART第8回会議の討議結果が「勧告」として03年12月に文科省と全教に届けられ、さらに、06年1月に第294回ILO理事会で了承されたCEARTの「中間報告」が届けられました。
 ILO・ユネスコは、「これらの諸問題に関するその後の展開についての情報を、CEARTに常に提供する」ことを求めています。私たちは、今年の9月に予定されているCEART第9回会議において、私たちが『教員の地位勧告』に沿った解決を求めている「指導力不足教員」政策と教員評価制度の問題が引き続き議題として審議されることを期待して、この「追加情報」を提出します。
 
 
1.CEARTの「中間報告」(06年1月)について 
(1)「中間報告」に対する全教の見解とその普及
 CEARTからの「中間報告」を受け取った全教は、「『指導力不足教員』政策と新教職員評価制度に関して、ILO・ユネスコが、再度、文科省の政策転換を求める」との中央執行委員会声明(03年1月16日)を明らかにしました。
 私たちはその中で、次のことを指摘しました。第1に、「中間報告」が「これまでに誠実に継続的にとりくまれているような適切な対話をさらにすすめるよう」勧告している点に着目し、全教としては文科省と誠実で意味のある協議・交渉を行えば、自主的に解決できると考えており、引き続き粘り強くとりくむ決意をまず述べました。
 第2に、「中間報告」が「双方が全国的なレベルと特に県レベルで」と表現し、『教員の地位勧告』が文科省だけでなく、直接、地方教育委員会も対象としていることを高く評価しました。なぜなら、一部の教育委員会は、ILO・ユネスコ勧告は日本政府が対象であり拘束されない、と対応してきたからです。
 第3に、「中間報告」は「実際、指導力不足の定義や評価制度の適用において、県ごとに相当のバラツキがあり、平等な取り扱い上、問題をおこしているので、文科省は、すべての県教育委員会が共同委員会の勧告を効果的に適用できるような措置をとるべきである」「日本のような地方分権制度のもとでは、しかるべき行政手続きや方法が実際に策定され、実施されているレベルで、そのようなプロセスが行われることが必要である。すべての教員に対する適切な手続きや方法が一貫した方法で採用され、適用される手段についてのガイダンスの提供に文科省が関与することが、このプロセスを容易ならしめることは間違いない」と記述しており、文科省の積極的なイニシアティブが要請されていることを指摘しました。
 そして全教は、CEARTの「中間報告」、全教からの追加情報などを内容とするパンフレット2万部を作成し、文部科学省、各教育委員会、マスコミ各社、教職員組合の組合員などへの普及に努めています。この間の『教員の地位勧告』の普及・学習の取り組みの反映として、有力な三省堂「解説教育六法」(2006年版)に、03年のCEART勧告が掲載されました。
 
(2)「指導力不足教員」研修命令に係る訴訟の文科省「追加情報」について
 文科省は全教からの情報開示の求めに応じて、CEART「中間報告」11項、12項に記載されている「指導力不足教員」研修命令に係る訴訟結果についての「追加情報」を明らかにしました。 
 それによれば、東京都江東区立小学校教諭慰謝料請求上告事件について最高裁は「上告却下」を判決し、研修命令は職務命令の一種に過ぎず、不利益を与えるものではないので、異議申し立ての権利が認められないとしても、手続き的に違法となるものではないとした原判決が確定しました。文科省は、この最高裁の結論を錦の御旗にして、「文科省がILOに説明してきたわが国の指導力不足教員に係る人事管理が適切であることの一つの証拠となるものである」と主張しています。
 しかしながら全教は、原判決の中の「本人の資質、能力についての評価に対し、反論する機会がないことに不満があるとしても、この評価とこれに対する反論につきどのような手続を設けるかは、それぞれの事柄の性質に応じて制度設計を考えるべきもの」との記述に注目するものです。これは日本の司法当局が教育行政を司る文部科学省・教育委員会に、異議申し立て権などの制度設計を委ねたものであり、「指導力不足教員」認定などにおける適正手続きを保障することを排除するものではありません。したがって全教は、CEART「中間報告」の13項;「この決定は、勧告は雇用契約の両当事者に直接的な法的拘束力を与えるものではないとした上で、職務の一環として研修を受ける必要は、関連する勤務契約のもとでの法的権利の変更をもたらさないので、したがって違法な手続きではないことを認めたに過ぎない」との検討結果に賛意を表するものです。
 
(3)文部科学省の不誠実な対応
 今度のCEART「中間報告」を踏まえ全教は2月8日に、文科省に対し、下記の要求を掲げ、交渉の機会を設けるように申し入れました。
 
� 。達釘腺劭坿�告に基づき、「教員の地位に関する勧告」(1966年、1997年)を尊重して、教育行政をすすめること。
�◆。娃廓�CEART勧告、05年『中間報告』の内容を、すべての教育委員会に伝えること。
�� 「指導力不足教員」制度に係る文部科学省の「事務次官通知」(「地方教育行政の組織及び運営に関する法律の一部を改正する法律の施行について(通知)」、2001年8月29日)を見直し改善するため、誠実で意味のある交渉・協議の場を設けること。
�ぁ 嵜靴燭紛軌�評価制度の導入と実施」に関して、「教員の地位に関する勧告」が求める水準の客観性、透明性、公正を確保するため、誠実で意味のある交渉・協議の場を設けること。
 
 しかしながら今のところ、日程調整がつかないとして文科省は回答し、交渉は実現していません。文科省の対応が遅い理由として、日本の公務員制度では、労使協議する権利が認められていないこと、国際基準の遵守に対する日本政府の消極的な姿勢などが影響しているものと推察されます。公立学校に働く教職員の労働基本権も制約されており、文科省は全教をはじめとする教職員組合と正式には会見しかおこなっていません。
 
 
2.教職員評価をめぐる最近の情勢と課題 
(1)教員評価による賃金・人事政策を強める文部科学省
 日本政府は、労働基本権を制約したまま公務員の定員・総人件費の削減、公務・公共業務の民営化・民間化、「能力・成果主義」に基づく人事評価・給与制度の導入など、公務員労働者の労働条件に重大な影響を与える「行政改革」を推進しています。しかも、労働基本権制約の代償機関である人事院は、この「改革」の方向に忠実に従った「給与構造の改革」を05年8月に勧告しました。そこには、給与制度における能力・業績主義を強化する、勤勉手当への実績反映の拡大、「査定昇給」の導入(資料1参照)などが盛り込まれました。この内容は、総務省の「指導」のもと、教職員を含む地方公務員にも押しつけられました。
 新設の査定昇給制度は、これまでの普通昇給と特別昇給を統合し、各職員層毎に5段階の成績判定区分毎の昇給幅とその分布率を設定するものです。
 
※(資料1)「査定昇給制度の仕組み」、(資料2)「職員層別の昇給区分後との分布率」はPDF版を参照ください。PDF版URLはこのページの最後に表記しています。  
 
 
 一方で文部科学省は、政府の方針である「教員の一律処遇から、能力等に応じた処遇システムへの転換」(「骨太の方針2003」)のもと、03年度から「教員の評価に関する調査研究」を全国の教育委員会に委嘱し、従来の勤務評定制度とは異なる新教職員評価制度の試行・実施が行われています。この新しい教職員評価制度では、「資質能力の向上、学校組織の活性化」が主な目的であることが強調されています。しかしながらこれまで、多くの教育委員会は、評価結果の賃金・処遇への反映に消極的乃至は慎重な態度をとってきました。
 しかしながら、全教が「申し立て」(ALLEGATION)で警告していた通り、査定昇給などの差別的な給与制度の導入が迫ってくる中で、新しい教職員評価の評価結果と賃金・処遇との連動が現実的な課題となってきました。
 中教審の答申「新しい時代の義務教育を創造する」(05年10月26日)では、「学校教育や教師に対する信頼を確保するために、教員評価への取組が必要である」「優れた教師を顕彰し、それを処遇に反映させたり、教師の表彰を通じて社会全体に教師に対する信頼感と尊敬の念が醸成されるような環境を培うことが重要である」と記述されています。文科省は「教員評価を徹底し、優秀な教員を顕彰し処遇に反映させる。問題教員を教壇に立たせない仕組みを強化する」(「義務教育の改革案」)政策を急速に強めています。
 文科省は、全教の「申し立て」における主張は「誤解に基づくものや事実を正確に伝えていない」と反論しました。このことを、CEART勧告は、次のように表現しています。「25.大前提として、文部科学省は、導入しようとしている勤務成績の評価制度は「勧告」124項に言う「給与決定を目的とした勤務評定制度」にはあたらないのであり、同項は適用されないと主張している。文部科学省は、新たな勤務評定制度は教員の能力開発が主な目的であって、人事考課は給与を決定するものではない、したがって同制度は勤務条件と関係がないと断言している」
 しかし、この間の経過は、事実を正確に伝えていないのは文科省であることを明白にしてきています。全教が求める『教員の地位勧告』124項「給与決定を目的としたいかなる勤務評定制度も関係教員団体との事前協議およびその承認なしに採用し、あるいは適用されてはならない」、64項「(1)教員の仕事を直接評価することが必要な場合には、その評価は客観的でなければならず、また、その評価は当該教員に知らされなければならない。(2)教員は、不当と思われる評価がなされた場合に、それに対して不服を申し立てる権利をもたなければならい」などを遵守した具体化が、ますます必要不可欠になっていると考えます。
 
(2)地方教育委員会における動向の特徴
 05年1月の「追加情報」で報告した通り、能力・業績主義による人事管理を全国で一番強く推進している東京都において、苦情相談制度の創設などで一定の前進がありました。しかし05年度の評価結果による昇給延伸に関する苦情申出の状況では、校長の評価が不適切であるとして教育長から「指導・注意」を受けた件数が、東京都教職員組合に相談が寄せられた中でも7件にのぼりました。評価基準の不明朗さ、事実誤認、恣意的な評価などの事例が明らかになっており、CEART勧告に沿った抜本的な見直しが喫緊の課題となっています。(別途、都教組からの「追加情報」があります。)
 
 文科省は、ILO・ユネスコ『教員の地位勧告』に消極的な姿勢を取っており、このことは、都道府県教育委員会にも影響し、『勧告』は「日本政府に対するもの」としてコメントを避けるところが多くあります。このような中で、岡山県教育委員会は初めて公式に「その趣旨は,尊重されるべきものと考えている」と回答しましたので次に紹介します。
 
 岡山県教育委員会は05年8月に、試行を行っている教職員評価制度に関する高教組の質問に対し、「口頭回答」をおこないました。その内容は、次のとおりです。
 
質問1.教育活動は、憲法、教育基本法、子どもの権利条約、ILO・ユネスコ教員の地位に関する勧告等に示されている教育の条理に基づいて行われるべきですが、これらを意義あるものとして尊重されますか。
(口頭回答)教育活動は、憲法、教育基本法、学校教育法、学習指導要領等、さまざまな法律等に基づいて行われるものであり、児童生徒の人権の尊重・保護の促進をめざす子どもの権利条約や教育水準の向上をはかることを目的として教員の地位を高めるために各国に対して共通の目標を示したILO・ユネスコ教員の地位に関する勧告についてもその趣旨は,尊重されるべきものと考えている。
 
質問2.ILO・ユネスコ教員の地位に関する勧告第9項には、「教員団体は、教育の進歩に大いに寄与しうるものであり、したがって教育政策の決定に関与すべき勢力として認められなければならない」とあります。これまで、貴職は、教職員評価制度については,岡山高教組との交渉に応じられていませんが、なぜですか。
(口頭回答)日本政府は、この勧告を全体として教員の地位向上に資すると判断して、採択したものであり、勧告自体は国内法を拘束するものではないと解されていると聞いている。勤務成績の評定は、職員が一定の勤務条件のもとで一定の期間、勤務した実績について評定をし、記録をするものであり、勤務評定の制度自体は、勤務条件そのものと考えることはできないと解されていると理解している。勤務成績の評定についての企画,立案及び実施に関する事項は、県教育委員会の権限と責任に基づいて実施すべきものであると考えている。しかし、この新しい教職員の評価システムが教職員の資質能力の向上と学校組織の活性化をはかるという目的を達成するためには、教職員の理解と協力が不可欠であると考えており、試行の過程を通じてみなさんと引き続き話し合っていきたい。
 
質問3.同124項には、「給与決定を目的としたいかなる勤務評定制度も、関係教員団体との事前の協議およびその承認なしに採用し、あるいは適用されてはならない」とありますが、現在、貴職が試行を強行されている制度は、高教組との交渉および承認を経ていません。この制度は、給与決定を目的としたものでないと理解してよいですか。
(口頭回答)この勧告に対する考え方は、国内法等を拘束するものではない。新しい教職員評価システムは、県民の期待に応えられるよう、教職員の資質能力の向上、学校組織の活性化をねらいとしたものであり、現行の勤務評定の問題点を改善しようとするものである。教育委員会としては、まず、システムの定着を図り、評価結果については、教職員の資質能力の向上や意欲の向上、及び研修などの人材育成や適材適所の人事配置等に活用する方向で検討している。また、今後の公務員制度改革の動向等も踏まえながら、給与等処遇への反映についても検討していく必要があると考えている。
 
 そして高知県教育委員会も、「条約と異なり、法的拘束力を持つものではないが、制度の構築及び運用の過程においては、教職員団体との十分な協議が必要であり、客観的な評価基準や評価過程での公開性、透明性、さらには異議を申し立てる場の設定など指摘に配慮した対応が求められている」(05年2月県議会での大崎教育長の答弁)と『教員の地位勧告』の意義を理解し、前向きな姿勢を取っています。
 ところが、国から査定昇給制度の導入(管理職は06年度から、一般教職員については07年度から)を押し付けられる中で、高知県教委は「査定に関しては別の評価制度をつくるのは時間的困難。人事評価と昇給は別のものとしてとらえ、育成型人事評価制度は校長が完結させて」、教育委員会が、人事評価制度の結果と他の要素を参考に教職員を相対評価し、査定昇給に反映する、との方針を明らかにしました。これは木に竹を接ぐ首尾一貫しない内容となっており、下記の通り、高知県教職員組合の要求に対し、極めて矛盾した回答(06年2月22日)を行っています。
 
要求:「新しい人事評価制度」を査定昇給制度に活用するなど、賃金・処遇にリンクさせないこと。」
回答:直接はリンクしない。『新しい人事評価制度』は育成型のものであり、4段階(SABC)の絶対評価。査定昇給制度は、5段階(ABCDE)の相対評価。しかし、『新しい人事評価制度』で得られた結果(評価)は、まったく無視することはできない。直結はしないが、結果として関係してくるのは当然。
要求:「新しい人事評価制度には、「人事評価書」の本人開示、教職員の異議申立権を制度化すること。
回答:基本的に開示の方向である。異議申立てについては、直接処遇に反映するものではないのでなじまない。評価者との意思疎通が図れない場合に、教育委員会に設けた機関(苦情相談員)が必要では。
 
 これらの岡山県教育委員会や高知県教育委員会の回答が例示しているように、文部科学省は、地方分権の時代だから、各教育委員会の自主性・自立性が尊重されると主張していますが、教育行政の基本方向は文科省の方針に拘束されています。『教員の地位勧告』の趣旨は尊重されるべきとの立場をとっている教育委員会が、それと矛盾した方針を打ち出すのは、「勧告は国内法を拘束するものではない」「評価制度問題は管理運営事項であり、労使協議の対象ではない」との国の路線の制約の中で検討せざるをえないからです。つまり、地方の教育委員会に任されているのは、国の方針の枠内での具体的な運用に限られており、そのため、事態の改善には日本政府及び文科省の政策転換が不可欠となっています。また、CEART「中間報告」が「文科省の関与がプロセスを容易ならしめる」と指摘していますが、まったく同感であり、問題解決の早道であると考えます。
 
 
3.「指導力不足」教員認定制度の運用の問題点 
 
4.「教員の地位勧告」の遵守に向けて、重ねて文科省への働きかけを要請します
 
 
 
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