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『未来をひらく教育のつどい2006』 第 4〜 6分科会


◆第 4分科会  数学教育  ※文中の括弧半角数字は分会ごとのレポート番号 
 
 今年度は小学校9、中学校3、高校8、の計20本のレポートが提出されています。これらについて全体会(第1日午前と第2日午後)と小、中高の小分科会(第1日午後と第2日午前)とで話し合い学び合うことにします。
 
第1日目(午前)全体会
 まずはじめに、(9)と(3)を全体で討論します。(9)は受験等では数学を必要としない3年生での「毎回読み切り」授業の報告ですが、生徒が期待し歓迎する授業や題材について深めます。(3)は速さについてのきめ細かな指導を土台とした一次方程式の授業の報告です。たいへんていねいな授業のようすがわかります。この2本の報告により、子どもの実態や授業のあり方などを話し合うとともに、小学校の立場からも自らの授業の「先の方の見通し」を考えてみたいものです。
 
第1日目(午後)小学校分科会
 まず、1年生の加減算に関する(15)と(6)の報告を受けます。(15)では、5―2進法を基本にして、指操作を含んだ数の「分離」と合成をおこなう意味が、また(6)からは繰り上がりのある加法を10のかたまりを作ることで解決できることを知らせるために、5と5のかたまりから始める実践がそれぞれ報告されます。これらの報告を受けて、数の仕組みを計算以前から十分に扱うのか、それとも加法算や減法算とともに扱うのかについての検討がさまざまな観点からおこなわれるでしょう。
 続いて、(17)の直角を含んだ四角形の授業の報告を受けます。ここでは、3年生にふさわしい角の扱い、そして平面図形にとどまることなく立体図形へ発展させる課題についても議論されるでしょう。
 最後に(20)の報告を受け、分数のさまざまな意味、あらわれ方をふまえた導入について検討します。
 
第1日目(午後)中学校・高校分科会
 (11)は中3「多項式」を面積図を中心にして指導した報告です。応用問題を適当な所に配置することにより、学ぶことの動機づけをしています。(5)は数学�気痢嵎進�完成」と数学基礎(数学�機法嵜�式の割り算」で生徒のわかりたいという気持ち、わかるとうれしいという気持ちを大切にした報告です。(18)は微分の導入に「組み立て除法」を使い、教科書と違った視点から微分を見ることで、数学の面白さを生徒たちに味わわせることができたという報告です。(4)は中1の「比例・反比例」を学年の最後にし、中2の最初に「1次関数」を指導しています。ねらいは指導する教材の順序を組み替え、これらの関数の指導を連続させ、学習効果を高めようとするなど意欲的な報告です。
 
第2日目(午前)小学校分科会
 操作を取り入れたかけ算とわり算に関する3本の報告を受けます。これらの報告を通して、それぞれの計算がもつ意味を重視し、それらの計算力を伸ばし育てるための授業課題が議論されるでしょう。まず、(12)から「子どもとつくる」かけ算の実践の報告です。ここでは、「ばらばら屋」「おなじ屋」による意味づけと、アメリカのスターンが提唱した教具の操作から積を求める学習との関連などが課題になります。わり算では
(16)と(14)により整数および小数のわり算がそれぞれ報告されます。(16)では、等分除場面を用いながら、あまりのあるわり算の扱いが報告されます。これらの報告をうけてわり算の意味づけとその意味にふさわしい計算法に関する討論が深まることが期待されます。
 
第2日目(午前)中学校・高校分科会
 (10)は「数学A」の平面図形という単元で折り紙を持ち込み、平面図形の「5心」を求めるという楽しい授業の報告です。(13)も「数学A」で平面図形の指導において、文章による証明はできるだけ避け、図を使って証明したり、図で問題を与えることにより生徒の理解を深めることをめざした報告です。(8)は「コマまわし」という操作活動を取り入れる中で平面図形の重心、内分と外分、座標空間における内分と外分、それと重心の計算などを指導しています。楽しく面白い授業の報告です。(2)は正弦定理・加法定理・三角関数の合成を作図により証明したものです。視覚的に定理を証明することで生徒の理解を深めたいというものです。
 
第2日目(午後)全体会
 この全体会では、(19,1,7)報告を受け、教師の成長や力量形成、望ましい数学学力のあり方や指導方法について話し合います。(19)は2年目のフレッシュ教師からの報告です。(1)はTTの担当になったことから、通信なども出しながら他の先生方との共同の授業づくり、教師同士の実践交流のコーディネイトをすすめてきた報告です。(7)は割合の学習を中心とした少人数授業の実践です。少人数授業の問題点とともに子どもたちが「体験しながら学んでいく」ことの重要性を指摘しています。
 また、ここでは共同研究者の問題提起で、すすめられている学習指導要領「改訂」の問題点についても話し合います。
 

◎<参加者の感想>「ふーん なるほど!」 工夫された教具の数々 ◆生徒が興味をもって学習にとりくめるような実践が聞けて、とてもよかったです。教具も見せていただきました。また、小中高の先生方の多様な意見を聞く、貴重な機会となりました。今日、明日としっかり学習し、今後に生かしていきたいと思います。(高知・中学校教師・女性)
◆今回初めて教育研究全国集会に参加しました。全国各地から集まった諸先生方の報告に、驚きながら楽しむことができました。何よりも、日々さまざまなアイディアを練ろうとしている先生方の姿に、自分の怠慢な姿を反省しました。今後、本日の報告・アイディアを活かすとともに、自己研鑽に励みたいと思います。(群馬・高校教師・男性)(速報「たまっこ」より)
 

◆第 5分科会  理科教育
  ※文中の括弧半角数字は分会ごとのレポート番号 
 
1 今年度教研の課題
 
(1)基調提案:学校教育の現状と自然科学教育過度な競争と粗末な多様化が強いられ、学校教育が格差社会の中に組み込まれようとしています。習熟度別学習が先進的教育であるかのように推進され、一部だけに小中一貫教育や中高一貫教育の学校が設置されています。義務教育で大きな学力差が生じるのは当然とされかねない状況です。高校教育の多様化は、大学合格者の多寡による高校の序列化を追認する方向へと矮小化されています。高校が、義務教育段階でつくり出された学力差をうやむやにする場所になってしまいます。
 
 こうした状況であるからこそ、すべての子どもたちに自然科学を教育するという目的をあらためて確認しなければなりません。競争と多様化を強いられる中で、小学校では、自然科学の基礎の学習――たとえば、重さ、体積、温度といった概念の理解など――を低学年からしっかりと学べるようにしましょう。中学から高校にかけては、入試の数値目標に縛られた教育、人材の生産でしかない教育に抗して、自然科学を含む諸学問の成果を学び、自立して生活する人を育てる教育を実現しましょう。
 2日間で話し合い学び合いましょう。
 
(2)教育課程と「教科書検定」
 小中学校の教科書は、この4月から発展的内容の頁が増え厚くなり、出版社によっては判も大きくなっています。こうした教科書の変化は教師や子どもにどのような影響を与えているのでしょうか。また「発展」をふくむ理科総合AやB、理科基礎、物化生地の�気旅盥散飢塀餮…蠅�おこなわれました。その特徴と問題点は何でしょうか。教科書検定とその採択について話し合います。
 
 
2 小・中学校、高校の一貫した教育課程の自主編成
 
(1)教育課程の自主編成と基礎・基本の学習
 現状の小学校理科教育の問題点を解決するため、「方位」「物の温度」「光集め」の3つの単元から構成される小3の指導計画と授業づくりを研究した東京・小学校の実践、小学校や中学校で削減された質量、体積、密度という基礎概念の学習についての広島・中学校の報告をもとに、本当の基礎・基本を大事にした自主編成のあり方を話し合います。
 
(2)自然科学をなぜ学ぶのか
 考える力を育てる授業の工夫をとおして自然科学を学ぶ意味を考え合います。合わせて、最新の科学技術にかかわる問題や自然災害から命を守るすべを科学の学習から身につける道すじを話し合います。
 
 
〔物理・化学小分科会〕
 
(1)力学学習をどう組み立てるか
 中学校の力と運動と高校の理科基礎での「力学」の授業報告をもとに、わかりやすく本質に迫る力学学習をどうきずきあげるか、小学校での学習内容も見通しながら話し合います。
 
(2)磁石の学習をどう組み立てるか
 京都・小学校の磁石の実践報告をもとに、小中高の磁石、磁界の学習について話し合います。
 
(3)理科教育と実験・実習
 ドライアイス利用の楽しい実験や生徒とつくりあげた化学実験の報告を受け、授業の中で実験はどう位置づけられるべきなのか、また高校化学では何をどう教えるかについて話し合います。
 
〔生物・地学小分科会〕
(1)小学校における地学学習
 地域の自然と地質を教材として、地学分野を学習して、地層観察の実習も含めて地域を理解することの意義について検討し、火山と地震の課題選択の意味を話し合います。
 
(2)中学校における地学学習
 地域の自然を活かした地学教材のあり方を考え合います。
 
(3)高校における地学学習
 野外実習が困難でも、実験室での実習を工夫することで補う試みを学び合います。
 
(4)生物学習における植物教材
 クチクラ層の観察を教材化することで、何がわかるようになるのか、検討し合います。
 
(5)生物学習における動物教材
 図を多用する生物学習の中で教材を視覚化して身につけさせる原則と方法を確認し、合わせて動物解剖の意義を話し合います。
 また、小中高をとおして生物学習で大切な進化の観点なども話し合います。
 
 
3 これからの研究運動の課題
 高校理科教育には共通必修科目がありません。中学校の削減内容をふくむ理科総合Aを実験中心で実践した報告を受け、小中学校理科教育、高校理科教育をどう改革していくとよいかを教育課程の自主編成とその実践課題とをかかわらせて話し合います。(速報「たまっこ」より)
  

◆第 6分科会  美術教育
  ※文中の括弧半角数字は分会ごとのレポート番号 
 
基調提案
 
 労作的な物づくりは、IT産業が発達し環境が人工化した今日、学校教育の場で確保されねばなりません。なぜなら素材と手・頭との格闘は人間の最も基本的な能力を育てるからです。手仕事による美的表現は、能力主義が支配し格差社会が生まれる中、広く人間教育において求められます。なぜなら、美しいものを表わし確かめる仕事は同時に、それを人に伝え働きかけることを意味し、それだから、人と人との交わりを生み、そして小さな共同体を作っていく能力の基礎を育てるからです。美的表現も労作的仕事も人間力を培うのです。だから美術教育は重い課題を負っています。自負心をもって発表し合い、討論しましょう。
 
第1日目(午前)
(1)子どもの表現と自立を求めて
 ��は深い課題意識のもとに、素朴で力強い表現活動によって思春期中学生の自立心が育つ道を開いています。生徒に達成可能な課題の設定がポイントになっています。
 ��は、「崩れそうになった」子どもが自分を美術表現することで「心や体が解放され、自分という確かな存在を認識して」いくよう促します。それと同時に、例えばザリガニと「たっぷり遊んでから、地べたに座って」手作りペンと墨で描く、という子ども
の美術表現の基本を踏まえています。
 
第1日目(午後)〜第2日目(午前)
(2)表現の可能性を求めて
 (2,4,8,7,1,6,10)を中心に、「補強」する実践報告を参加者からも受けながら学び合います。
 ここ数年「描けない子」「描かない子」の増加、顕在化が問題になっていますが、指導要領の思想性、教科内容(特に造形あそび)について検討しながら、困難な中でも着実に子どもの豊かな表現を引き出してきた優れた実践を、「表現の可能性を求めて」として討論してきました。前記の諸氏の実践も学級の子どもたち一人ひとりを大切にしながら、教材やテーマ、授業の工夫を試行しながら図工、美術の時間を創り上げています。
 自動車のミラーに映った空や木々の鮮やかさに驚いたことがありませんか。振りむくと空も木々もやわらかいデリケートな色調をしています。近ごろのハイビジョンのテレビ画像もミラーに映った像のように鮮やかです。印刷されたカレンダーの桜の色も紅葉の色もやけに鮮やかです。いずれもデジタル画像でどこまでも鮮やかさを追求しています。こうした画像に囲まれて育っている子どもたち、否、大人たちも感性に影響がないとは思えません。
 今日の子どもたちは自然の中で過ごすことも、外で遊ぶことさえ困難になっていますが、デジタル画像でない自然の細やかな像と向き合い、対象とのやりとりを通して、対象に能動的にかかわることで感得した像こそ求められています。対象を明瞭な色や形で表現できる力を持つことはデジタル画像を乗りこえる力になります。後藤実践も森下実践も年間の長い計画の中でみごとに陶冶しています。
 最近、「格差社会」「負け組」「勝ち組」など先行きの不安に多くの親が煽られ、動揺しているのでしょうか、幼児低学年向けの「○△□で絵が描けるようになる」本が何十万部も売れているといいます。描く順序がきちんと説明されています。こうしたトレーニングブックで描かれたアリや象の「表現」とは何を意味するのでしょうか。子どものくらしの中から生まれた表現の要求といかに結びつけていくかが問われるでしょう。
(7)も(6,1)も生徒たちの内面の掘り起こしに時間をかけながら、自分の表現を生み出す努力をしています。
 
第2日目(午後)
(3)美術文化と地域とのむすびつき
 (5)は美術部員を、NPO法人との協力のもと、松代「寺巡りスタンプ」の原画作りをする仕事に導きました。デザインの基本学習と自立性・積極性・責任感情などの育成とが両立しています。美術教育の新分野です。
 

◎子どもの作品を真ん中にして  会場にはいると床一面に子どもたちの作品が並べられていました。その作品一つひとつをていねいに見ながら話し合いが進みます。子どもたちの表現は、意図されたものなのか、偶然なのか、子どもの思いは、大人の見方になっていないかなど、鋭い論議が交わされます。「今の子どもたちは造形物に対する経験が貧弱になっている、造形遊びはいまできることを失わせているだけ、描くことが内に吸収することでもある」と、共同研究者からの発言がありました。
 
<参加者の感想>
全国から集まった作品たちを観賞していると、それらを制作した子どもたちの姿が見えてきます。1つの作品を通して子どもが成長していく様子などを聞いて、共にうれしくなりました。美術教育の中で課題とされていることは、やはり、時数の減少による造形活動の縮少化です。子どもに取り組ませたいこと、身につけさせたいことがたくさんある中で、時間が取れないというもどかしさ。なぜ、教科として美術、図工があるのか、その意味をもっと声を大にして言いたいです。持ち寄った作品の中にそれぞれの現場の苦労が感じられました。(群馬・教職員)(速報「たまっこ」より)
 

 
※本稿は、「教育のつどい2006」要綱からレポートの特徴と討論の組み立てについて紹介しています。また、合わせて速報「たまっこ」で取り上げられた当日の分科会の様子を紹介しています。速報の内容は、全日程を通じて取材したものではありませんのであらかじめご了承ください。



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