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『未来をひらく教育のつどい2006』 第 7〜 9分科会


◆第 7分科会  音楽教育  ※文中の括弧半角数字は分会ごとのレポート番号 
 
育ち合う授業の創造
 
(1)音楽と政治
 時折、「音楽は政治に左右されるか」「されてはならない」いうような問答を聞くことがありますが、「音楽は政治を左右する」と、発想の転換をしてみてはどうでしょう。
 政治は一部の「偉い人」がするものではなく、多くの民が為すものです。人間が政治をするのですから、政治の質は人間の質で決まるとも言えます。いまから10年後、15年後の政治はどうなっているか、それは私たちが授業でかかわっている子どもたちが、質の高い文化をどれだけ吸収するかだと言い切るのは、言い過ぎでしょうか。「教研」がその鍵を握っていると思うのですが。
 
(2)子どもたちと音楽の授業
 先生が全力でピアノを弾いてうたっているのに、子どもたちは口を結んでいる授業があります。しかし、40人の中に1人、2人、内心でうたっている子どもがいることを見逃してはならないと思います。
 「他人がうたわないと自分もうたえないという自分の情けなさが情けない(中3)」
 「ほんのちょっとだけど自分の口がうごいた(中3)」
 私たちの授業の「希望」はここにあります。一つの小石が波紋をつくるように教室の空気を動かす歌が生まれます。
 「ちょっと前までは口さえ開けられなかった私たちだというのに、みんなが先生の声についていって、混ざりあって、一つになろうとしていました。ほんとうはうたいたくてうずうずしていたんだ。歌が人間の歴史から消えない理由がわかったような気がします(中3)」
 音楽は人間に働きかけ、からだを駆けめぐります。「うたうよろこび(表現のよろこび)が子どもたちを育てます。
 「最初、『歌なんか絶対うたうもんか』と思っていたが、今では音楽というものは、ぼくの心を表すものになっています。みんないっしょにうたう、かしこい人も、運動の得意な人も、絵が上手な人も、一つのことをみんなで共にする。これがぼくの心を変えたのかもしれません(中3)」
 「とても楽しくうたえた。こういう楽しい時間があるからこそ、学校にきてるんだなと思える(中3)」
 
(3)育ち合う
 教育・保育は、決して「一方通行」のものではありません。育ち合ってこそ、そこは保育園であり、学校だと言えます。
 私たちは、長い年月をかけて「教材」を真ん中にして育ち合う授業を研究してきました。教えるだけでなく教えられる、友だちの歌に触発され育っていく子どもたちの事実を報告して、教育という仕事に誇りさえ感じてきました。音楽分科会は、教師の「腕前披露」の場ではなく、「子どもたちと教師たちの成長の事実」を語り合う場となっています。3日間の分科会で、参加された人たちに発見があり、早く子どもたちに会いたくなる、そんな研究と報告を大切にしてきました。
 
(4)分科会の中身
 報告はレポートを中心にしていますが、文字と言葉だけでなく、授業のひとこまを録音したテープ(MD、VTRも)によっても、具体的に報告されます。毎年歌が主ですが、オペラ、尺八、リズム表現なども報告されます。
 いわゆる立派な実践報告だけではなく、右手だけのピアノでのもの、やっと声を出し始めた芽吹きのような歌を大切に聴きます。保育園の子どもたちから高校生までを聴けるので、さまざまな学びが展開されます。また、分科会参加者がうたう歌も、年々充実しています。歌曲集を準備し、授業の場に生きる歌をうたいかわします。
 
(5)不自由をはねのける
 本来、なによりも自由であるはずの教育活動を、怪しい力でコントロールしようとするものに対して、個々の力で立ち向かうのは至難です。互いに語り合い、理解を深め、知恵をもらいあって現場での励みにしたいと思います。
 「君が代」の次に教育基本法改悪で「愛国心」を「法」をもって植えつけようとしています。自分を愛し、人を愛し、文化を愛することこそ、国を世界を地球を愛することだと、私たちは教研で確かめ合ってきたのです。不自由をはねのける「たたかい」は、教研であり、分科会であり、日々の研究と交流です。肩肘をはらないで、しなやかに自由を手にしましょう。「たたかい」の原点は、子どもたちです。子どもたちの事実にたちかえって研究を深めましょう。
 

<参加者の感想>◎レポートのあいま毎に全員合唱(熱唱)! ○レポーター(中学)教員歴22年 毎年参加
自分の音楽感覚を磨き続けたいと思ってきました。
○参加2回目レポーター
 近いと言うこともあり、開会集会から全日程参加しようと意気込んできました。しっかり全て頭に入れていこうと思っています。
○一般参加(小学校専科)
 30数年前に子連れでレポート参加して以来毎年参加しています。その時に周りの方によくして頂き、子育て中の女性でも(学校で)子どもの前に立つ事を考えると男性と同様にしっかり学ばなければという思いで来ました。初参加の時に連れてきた息子が埼玉でやはり音楽専科の教師になっています。職場の状況が厳しいようですが、今度は息子と一緒に参加できたらと思います。
○一般参加(現在は学校ボランティア 嘱託も経験)
 もう初参加以来50年たちます。レポートは3回くらいかな。こういうところに来ると年齢に関係なく昔やっていたときと変わりなく勉強できるのがいいですね。
○一般参加(小学校2年担任)
今日のレポートでは「ピアノが弾けない」とおっしゃってましたが、子どもたちの歌声を聞くと、とても素敵な実践でした。悩みながらも子どもと向かって歌っているのを聞くと、私もあきらめないで前向きに頑張っていかねばと思いました。(速報「たまっこ」より)
 

◆第 8分科会  書写・書教育
  ※文中の括弧半角数字は分会ごとのレポート番号 
 
1 書写・書教育をとりまく状況
 
(1)状況
 最近、「漫画を読めない子どもたち」という記事を目にしました。4コマ漫画は読めるけれど、割付にしたがってコマが上下左右に移っていく通常のストーリー漫画が読めない子が増えているというのです。以前は文章の読めない子どもたちの増加ということで、歴史や古典・小説などを漫画で読むことの是非が論議になったものですが、現実はここまで来たのかと絶句してしまいました。
 子どもの頃からテレビゲームの中で育ってきた子どもたち。刺激に対する瞬間的な反応はよいものの、自ら考え筋道を組み立てていくことがまったくできなくなってしまっているのです。
 学校教育もそれに追い打ちをかけています。格差社会をつくりあげるために仕組まれた競争原理の中で、できないのも自己責任とあきらめさせられ、目の前の成績を上げることだけに価値観を認め、画一化の中に押し込められています。OECDの学力調査の結果なども、そのような日本の子どもたちの現実を反映しているといえるでしょう。
 このような現実の中で、子どもたちの心を解放し、潜在的な能力を引き出してやる芸術教育の役割は、一層重要性を増しています。
 
(2)課題
 状況に示したように、即物的・画一的価値観の押しつけの中で育ってきた子どもたちに、感動を与え、価値観の多様化を認め合うすばらしさを実感させるために、書写・書教育ではどのようなかかわりがもてるのか、今までの到達点を確認しあいながら、新たな実践の掘り起こしと、多様な観点について論議を深めていきます。
�‐�・中学校における書写指導
 小・中学校の書写指導が「言語事項」に位置づけられたことによる弊害は、今まで多くの論議がなされています。しかし、昨年はそこに新たなメスが入れられました。「言語」とはそもそも表現なのだということです。指導要領の問題点の指摘に終始するのではなく、「表現」としての言語をどのように理解させ、それを書写指導にどうつなげていくのかという、積極的なとらえ直しが求められています。
 小学校での英語教育が、十分な論議のないままにすすめられようとしています。国語教育そのものさえも、削られかねない状況です。国際人としての真の教養は、英語を話せることではなく、確かな自己表現の力を持つことです。広く国語の表現指導のあり方にも目を向けながら、書写指導の必要性とあり方の論議をすすめたいものです。
��高校における書教育
 昨年は、英語の授業に書を取り入れるという画期的なレポートが話題を呼びました。ここでも、「言語は表現活動そのものだ」ということが話題になりました。自分の言葉を持たない子どもたちが増えているといわれる中で、文字や言葉を使いながらも言葉そのものの表現とはまた異なる表現としての書は、自分の言葉づくりにどのような働きかけを持つのか、新たな課題が見えてきました。
 もちろん、臨書と創作の問題など、永遠の課題ともとりくみながら、広く実践の交流が期待されます。
 
 
2 討論の柱と展開
 
(1)豊かな表現力を求めて
 授業開きといわれる第1時間目。ここでの教師の語りかけは、これからの授業の展開に大きく影響します。(3)は、自分のやろうとしたことはどんどんやる。他人の真似や目は気にしないとし、筆・墨・紙・文字の可能性を100%使おうと訴えています。(4)は、用具の準備や書く姿勢、筆を自由に使うことなどを「基礎体力」と考え、生徒を励ましながらすすめています。
 太い線や細い線、ときには筆で絵を書きます。大胆な筆づかいで、自己の解放に迫ります。
 
(2)表現の可能性を広げる
 上記1日目の論議をふまえ、予想される当日持ちこみレポートなども交えた討論の展開を期待しています。司会者・共同研究者からも、新しい象形文字作り、オノマトペを使った文字群の学習、修学旅行にあわせた詩文の作品制作など、自主的な教材の工夫も紹介しながら、実践の交流を図ります。当日参加の持ちこみレポートや、子どもたちの作品持参を歓迎します。
 
(3)地域と学校を結ぶ子どもの作品
 生徒数の減少から学校再編がすすみ、地域が学校に向ける目も厳しくなりました。書写・書道の時間数も減少傾向です。
 (1)や(2)は厳しい授業環境の中で、生徒が生き生きとりくむ方式を開発し、その作品を地域に展示することで、地域の人々がそれに感動し、学校や書道に対する見方を変えていった報告です。生き生きした子どもたちの作品が学校づくりにつながっていくことを広く論議します。
 

◎高校生も参加しているョ  高校生3人を含め、20人の参加。床いっぱいに生徒の作品を並べてレポート発表が行われました。群馬県から参加した高校2年生の3人は、書道部に入っていて、「今までこのような『つどい』が行われているなんて知らなかった」「学校によってやってる(授業の)内容が違うなあと思いました」と感想を語ってくれました。(速報「たまっこ」より)
 

◆第 9分科会  技術・職業教育
  ※文中の括弧半角数字は分会ごとのレポート番号 
 
 1 レポートの傾向
 
 レポート数は、中学校4、高校6、その他1の計11本です。
 中学校のレポートは授業実践が4、そのうち1は昨年度、生徒は「学びの主人公」と報告されたものの4年間にわたる総括です。また、設備と技能の向上の関係を検討した報告や授業が成立しない中で奮闘した報告があります。
 高校からのレポートは普通高校での11年目になる総合学科、地域との結びつきを考えてとりくまれた工業高校からの報告、商業高校での「総合的な学習」の成果など、いずれも強い共感を与える報告がそろいました。北海道の私学からは資格取得へのとりくみが報告されます。
 日高教「高校生の就職実態調査」、教科書検定に関する報告が昨年に続きあります。
 青年、働く人々をとりまく状況は日々深刻さを増しています。今年報告されるレポートはそうした状況の打破につながる心強いものを感じさせてくれます。
 
 
2 討論の内容
 
第1日目(午前)
(1)子ども、職場の現状と技術・職業教育
 参加者全員による5分間スピーチにより、子ども、職場の状況を交流し、今年度教研で討論すべき課題を明らかにします。中学校技術科の困難な状況、高校の再編問題や進路の問題、専門性を生かした地域との結びつき、資格・検定の問題などについて具体的に交流します。
 
第1日目(午後)
(2)困難な生徒の現状からスタートした授業実践
 (5)は、困難な生徒の現状を受け入れながら、教師と生徒、生徒同士の関係づくりをもとに学ぶことにとりくんだ実践です。(7)は、卓上スライド盤を活用し、作品の完成度を上げ、生徒に作る喜びを与える授業実践です。ていねいな指導と技術科の特性を生かして、自ら発見し学んでいく、また生徒同士の学びを意識的につくりあげていく過程を学びたいと思います。
 (9)は、教室に入るが授業に参加しない生徒、席に着けない、私語が多く説明が聞けない現状から、技術室の設備を整え、個々の生徒に対応する授業を工夫し、約束ごとをつくりあげていく実践レポートです。
 
(3)学校教育予算と技能の関係・教科書検定
 (4)は木材を正確に加工できることをめざした実践です。生徒に与える道具の数と技能の向上との相関関係を追跡調査したレポートです。
 (10)は、教科書検定の特徴と「教科書攻撃」についての理解を深めます。
 
第2日目(午前)
(4)専門性を生かし地域と結びつく授業実践
 (1)は、学校から地域へ家電修理を広げ、「自分で調べて自分で直す」自主性を尊重した実践です。(2)は、学校祭で地域の人々が楽しめるような企画として「ベイブレード大会」を実践した報告です。(8)は、環境教育の一環として「桜の山公園」づくりにとりくんだ実践です。この3本のレポートをもとに、専門性を生かし地域と結びついた実践の成果と今後の発展性について議論します。
 
第2日目(午後)
(5)職業教育で生き方や進路を保障する試み
 (3)は、「総合学科」として自分の体験にもとづいて労働、職業や生きがいについて学ぶことを試みた報告です。(11)は、資格取得と進路指導を軸にクラスづくりにとりくんだものです。(6)は、自己のあり方、生き方について考えさせるため、専門性を深め、自己理解と進路選択の授業実践をした報告です。加えて、日高教「高校生の就職実態調査」や、若者の雇用実態を踏まえ、職業教育で生き方や進路を保障する指導のあり方を探求したいと思います。
 
3 総括討論 技術・職業教育の役割と今後の課題
 
 レポートの報告と議論を受け、その中から課題を絞って討論を深めます。中学校では条件整備、とりわけ、授業時数と教師の問題も含めて、現状を出しあい、議論を深めます。高校では、卒業後の生徒たちの状況を出しあい、若者の困難な状況を共有しましょう。すべての人に仕事をする能力の保障と就職の機会を保障することは社会的な要請です。しかもこのことは、世界中、すべての国に共通です。人類が平和に1日も長く、生きつづけるためにも、そのことが、今、一番大切であることを確認したいものです。
 

◎働き、生きていく場がなく なってきている…  この分科会には、県外からの一般参加者も加え、会場いっぱいで話し合が始まりました。
 午前中は、参加者全員の3分間スピーチで、各地の職場の現状や子どもたちの様子、実践の概要などを交流し合いました。その中で、具体的な職業能力が身につかない学校制度や、働いて生きていくという基本的な場がなくなってきていることが、世界的に起きてきていることが指摘されました。
 午後からレポート報告をもとに話し合いです。(速報「たまっこ」より)
 

 
※本稿は、「教育のつどい2006」要綱からレポートの特徴と討論の組み立てについて紹介しています。また、合わせて速報「たまっこ」で取り上げられた当日の分科会の様子を紹介しています。速報の内容は、全日程を通じて取材したものではありませんのであらかじめご了承ください。



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