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『未来をひらく教育のつどい2006』 第13〜15分科会
◆第13分科会 発達・評価・学力問題 ※文中の括弧半角数字は分会ごとのレポート番号
1 子ども・青年の発達と学力をめぐる状況と分科会の課題
(1)今日の子どもの発達課題に対応する学力形成とは
今日、教育政策および財界を中心とした立場から学力に対する要求がさまざまに出されています。しかし、その多くは、政策的な統制や人材養成の都合からのみ学力を語っており、今日の子ども・青年の発達課題をリアルにとらえるという点では極めて皮相なものにとどまっています。
今、必要なのは、子ども・青年の実態と発達課題を深く捉えることをとおして、今日求められる学力形成、また、それを実現するための教育的価値と具体的な教育実践のあり方を明らかにしていくことです。
(2)保護者や子ども自身が求める発達と学力とは
子ども・青年の発達を保障し、学力を形成するうえで、教師と保護者や地域の人々との連携が大切であることは言うまでもありません。しかし、新自由主義的な価値観の広がりもあり、発達や学力形成についての保護者の要求は多面的になっています。こうした状況の中では、発達や学力をめぐる合意形成も容易ではなくなっています。子ども・青年の幸福につながる発達や学力形成のあり方はどのようなものかを、保護者、そして子どもたち自身の深部の要求を捉えることをとおして、教育実践を支える合意がどこで可能になるのかを探っていく必要があります。
(3)発達と学力を保障するにふさわしい教育制度とは
近年、教育基本法「改正」、教員免許更新制、習熟度別学級など、さまざまな次元の教育制度改革案が提案され、また実行に移されています。そしてそれらが従来の日本の教育のあり方に不満をもつ国民の期待を一定程度取り付けているという現実もあります。しかし、こうした施策は本当に子ども・青年の発達と学力を保障するうえで適切なものでしょうか。
私たちは、(1)(2)の観点を含めて、あくまでも子ども・青年の実態と、教育実践・教育学の専門的な見地にもとづき、求められる教育制度のあり方、施策を構想し、真の改革を要求していかなければなりません。
2 提出されたレポートの概要と予想される討論の柱
(1)小学校低・中学年の発達課題と学力形成
入学時の学力格差の大きい低学年の子どもの実態に対して学習規律と基礎学力の形成にとりくんだ実践、「つながり合い」「学び合い」という観点から子どもにアプローチした実践、また、日々の授業をとおして何ができるのかに改めて挑んだ実践が報告されます。異なる角度をもつ実践をとおして、今日の低・中学年の子どもの実態と課題を浮かび上がらせていきます。(1,6,9,4,13)
(2)小学校高学年の発達課題と学力形成
習熟度別授業を乗り越えるために、漢字、計算を中心とした基礎学力形成に学校ぐるみでとりくんだ実践、同様に習熟度別授業に対する批判を含んで子どもたちが支えあい、考え合う授業にとりくんだ実践が報告されます。ここでも、習熟度別授業に対する批判をともにしつつ、異なる角度をもった実践を検討することをとおして、課題を多面的に捉える議論をしていきます。(2,8)
(3)小学校における表現活動・総合学習のとりくみ
7年間の実践をとおして見たパソコンによる情報教育の可能性と課題を指摘するレポート、および総合学習を1つの軸として学校ぐるみの教育課程づくりにとりくんだ実践が報告されます。(3,7,12)
(4)中・高校生の発達課題と学力形成
子どものつまずきを分析したうえでプリント学習を位置づけた中学校の実践、高校生の心身の不調に注目して発達課題を問題提起するレポート、学ぶことと生きることの接続にかかわって、保護者や教員の「基礎学力」の考え方について検討したレポートが報告されます。
中学、高校の実態と課題を捉えるのはもちろんのこと、そこに至るまでの教育に何が求められているのかを考えていきます。(10,5,11)
◆第14分科会 障害児教育 ※文中の括弧半角数字は分会ごとのレポート番号
今年度教研がめざすこと――すべての子どもたちにゆきとどいた教育を――
3月7日、政府は学校教育法等一部「改正」法案を国会に上程しました。盲学校、聾学校、養護学校の制度から特別支援学校の制度に改変することを中心的な課題とするこの法案は、センター的機能や複数障害種への対応など障害児学校に新たな機能を付加しながら、それに見合う教職員定数などの条件整備を保障していないため、これまで私たちが築き上げてきた教育実践を後退させる危険性をはらんでいます。また、障害児学級の弾力的運用を条件整備しないままおこなおうとすることにも同じ危惧が感じられます。
また、通常学級に在籍するLDやADHDなどの特別な教育的ニーズのある子どもたちの教育についても、通級指導教室の大幅な増設などの条件整備はほとんどなされていませんし、法案からはその期待を感じることができません。
私たちは、すべての子どもたちにゆきとどいた教育をおこないたいと願っています。そのためには障害児学校、障害児学級、通級指導教室、通常学級のすべての場が、子どもたち一人ひとりの教育的ニーズに応じて、しっかりした教育条件整備のもと豊かな教育をおこなっていかなければならないと考えています。今年度教研では、これまでの障害児教育の素晴らしさへの確信を強めさらに充実させること、通常学級に在籍する特別な教育的ニーズのある子どもたちへのゆきとどいた教育の実現への展望をもつこと、この2つが相反しないでどちらもが実現するための課題を明らかにし、実現に向かう方法を深め合いたいと考えています。
小分科会構成と討論の柱
第1日目(午前)開会・全体会
基調提案とそれにもとづく討論、特別報告をおこない、情勢や今年度教研の課題を確認します。
第1日目(午後)〜2日目
6つの小分科会に分かれ、以下の柱にもとづいてレポート報告と討論をおこないます。
A 分科会子ども期の教育(小学校)
<1>子どものねがいにこたえる学級づくり・授業づくり
<2>すべての子どもを大切にする学校づくり
B 分科会子ども期の教育(障害児学校)
<1>子どものねがいをつかむ
<2>ことばを育てる
<3>教材づくり・授業づくり
<4>障害をのりこえ自立する力を育む
C 分科会思春期の教育
<1>中学校・障害児学校のあり方
<2>思春期の課題にこたえる授業づくり
D 分科会青年期の教育
<1>青年期教育をめぐる情勢と課題
<2>高等部における授業づくり
<3>青年期の発達課題に挑む
E 分科会特別支援教育の論点
<1>養護学校の地域支援のあり方
<2>小学校における特別支援教育のあり方
<3>高校における特別支援教育のあり方
F 分科会豊かな教育と生活を保障するための条件整備
<1>学校の教育条件整備
<2>生活・教育支援体制の充実
<3>障害の重い子の実践と教育条件整備
第2日目 閉会・全体会
各小分科会からの報告と総括的な討論をおこないます。
◎<参加者の感想>体をひらいて心をひらく
○この分科会で素敵なメッセージにたくさん出会えました。「体をひらいて心をひらく」「言葉の教育は『経験』と『絆』として再認識することが大切」の話に引き込まれ、うなづきの連続でした。自分の実践にもぜひ生かしていきたいです。
○特別支援教育に向けて、養護学校のたいへんな状況がよくわかりました。�狠楼荵抉膈瓩鮗�けるほうの立場の私たち(通常の学級)はそれでも何でも知りたい、何か教えてほしい…とワラをもすがる思いです。子どもの視線で日々実践しておられる養護学校の教職員の方々と、思いを共有できたらいいな、子どもたちの話ができたらいいな…と熱い気持ちをもっています。「教育のつどい」でしっかり学んで帰ります。(速報「たまっこ」より)
◆第15分科会 幼年教育と保育 ※文中の括弧半角数字は分会ごとのレポート番号
1 この分科会でめざすもの
この分科会では、幼稚園・保育所の先生方と小学校の先生方が、保護者の方とともに子育てや子どもの発達と教育について考えていきます。日頃、案外と出会うことの少ない就学前教育の実践者と小学校教師が語り合える貴重な場です。そうした新たな出会いによって、それぞれの実践を異なった角度から深めていきましょう。また、乳幼児や低学年の子どもの保護者の方々にも多数ご参加いただいて、子育てのなかで感じておられる不安や疑問を出し合いつつ、幼稚園・保育所・小学校の先生方と同時に交流できる楽しい集まりにしたいと思います。
大きく分けると次のようなことについて話し合っていく予定です。
(1)乳幼児期から低学年期の子どもの現状と発達保障の課題
この間、幼児期や低学年期において、配慮の必要なかかわりにくい子どもたちの存在が指摘されています。指導の難しい子どもを発達的に理解し、すべての子どもたちが自分への手応えを感じ、生活の主人公になるための課題について話し合います。
(2)幼保・小の接続を考えた教育内容の検討
幼稚園・保育所から小学校への入学は、教育方法や内容が大きく異なり、子どもにとっては大きな転機です。この移行に伴う問題は「接続」問題と呼ばれています。子どもも保護者も安心して、小学校教育に移行できるためにどんな実践が求められているのかについて考えていきたいと思います。
(3)安心して子育てができるための保育条件と公的責任
「認定こども園」の本格実施がすすめられる中、国と自治体の公的責任があいまいにされる危険性が増しています。また、教育基本法「改正」案には、家庭の教育に対する一義的責任を唱える条項が加わっていますが、法律によってそうした内容を規定することには問題が多く、一方で財政的な公的責任が曖昧にされる危惧も覚えます。上記2つの課題を実践するために、情勢認識を深め、保育条件の充実のための方向性を明らかにしましょう。そのなかで、これからの子育て支援に何が求められているのかを考えていきましょう。
2 分科会での討論の柱
第1日目(午前)
(1)基調報告と課題提起
共同研究者から、この分科会でどんなことが議論されてきたのかを整理して報告し、今日の幼年教育・保育が直面している問題について提案します。
(2)「指導の難しい子ども」の現状と実践課題(その1)
今日、さまざまな問題が低年齢の子どもたちにおいて指摘されていますが、子どもや保護者にていねいに寄り添いながら実践されている(6)を受けて、指導のあり方について考えます。
第1日目(午後)
(3)「指導の難しい子ども」の現状と実践課題(その2)
「気になる子ども」の実態と対応について(4)から学び、�犹劼匹發蕕靴記瓩鮗茲衞瓩靴討垢戮討了劼匹發燭舛�主人公になれるための課題について(2)にもとづいて考えます。また、(1)から脳研究の成果を学び、子ども理解における脳科学の果たしている役割について考えたいと思います。
(4)豊かな保育内容を創造するために
幼児にとって豊かな体験とは何か、そうした体験によってどんな力が養われていくのかについて、(8)では3歳児の木工活動、(10)では地域の人たちとの交流活動という観点から考えます。
第2日目(午前)
(5)低学年期の教育実践と接続問題(その1)
小学校からの実践を報告いただいて、幼児教育との「接続」のあり方について話し合います。テレビ・ビデオといったメディアとのつき合い方について考え(3)、低学年での生きる力の形成(9)や文字指導(11)といった点を切り口にしながら、低学年期までに獲得したい力とは何かを、いろいろな観点から話し合っていきます。
第2日目(午後)
(6)低学年期の教育実践と接続問題(その2)
幼稚園・保育所と小学校の連携に関して、によって報告していただき、各地域での現状を出し合いながら、連携のあり方について検討します。
(7)子育て支援の実際と今後の課題
(5)では、大学における子育て広場のとりくみと、そこに参加する学生の成長を紹介していただいて、支援者養成という観点も含めて、今後の子育て支援について考えたいと思います。
(8)全体討論
参加者の皆さんの子育てや実践での悩みを出していただきながら、今後の子育てや保育・教育に関するこれからの課題について話し合っていきます。
◎子どもが夢中になれることは?
おっ!30人のうち男性が8人。少ないなと思ったら、さらにそのうちのほとんどが要員の方でした。「3歳児の木工活動」(東京・幼稚園の先生)のレポートと質問から。
なぜ、木なのか?手触り・温もり・子どもにとっての安心素材で加工可能。これに金槌で釘を打つ魅力。怖さもあるが…。3歳児それぞれの舟づくり。(木片を紙やすりで磨き、土台の木に2本の釘を打つ、そのあとは自分がつけたいだけ木片を追加する。できた舟を仮設池に浮かべて遊ぶ。)そのプロセスでの子どもとのやりとりがいきいきとレポートに描かれており、実作品や写真の回覧もあり、目に見えてわかりやすく工夫されていました。子どもがどれだけ夢中になれるか、興味・関心を引き出せるかを十分考えながら対応することが必要。
共同研究者の方から、「小学校(教育課程上3年から)、養護学校(学部ごと発達段階に応じて)など、同じ木工活動でも校種ごとに様々な実情をどう見るかという視点も教育上のひとつの論議になります。また木工活動は、教えている先生の再体験(レポーターは小6以来で自分も木工に燃えた)にもなりましたね」とコメントがありました。(速報「たまっこ」より)
※本稿は、「教育のつどい2006」要綱からレポートの特徴と討論の組み立てについて紹介しています。また、合わせて速報「たまっこ」で取り上げられた当日の分科会の様子を紹介しています。速報の内容は、全日程を通じて取材したものではありませんのであらかじめご了承ください。
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