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『未来をひらく教育のつどい2006』 第16〜18分科会
◆第16分科会 思春期・青年期の進路と教育 ※文中の括弧半角数字は分会ごとのレポート番号
1 分科会の課題―豊かな青年期の創造と学校づくり・地域づくり
この分科会は、主として中等教育(中学校・高校)の制度改革と教育実践の創造を研究の課題としています。しかし、学校の中だけでなく、子ども・若者の学習と生活の場である家庭や地域をふくめて青年期教育の全体を視野においています。
とくに、自立と進路という視角からみると、同じ世代の不登校・登校拒否をしたり、高校を中退した子ども・若者をも視野に入れる必要があります。また、在学している子ども・若者についても、彼らの人格と能力の発達の状況は困難と危機に満ちています。今回提出されているレポートにもあるように、若者たちは他者や社会とのかかわりを拒否し、ひきこもろうとしているかのように見えます。そのことともかかわって、学習の意味をつかむことができず、意欲をもてない状況もあります。
このような状況に対して、教育政策は新自由主義的な手法によって、競争を強化することで若者たちを学習に駆り立て、奉仕活動や「新キャリア教育」の強制によって「社会」に動員しようとしています。
この分科会は、進路の保障という立場から中等教育後の教育制度や就職問題にも重大な関心を持ちます。ニート・フリーター問題は、現代日本の社会問題でもあり、同時に中等教育にとっては教育実践の課題でもあります。また、就職保障は、地域や社会全体がとりくまなければならない課題です。
この分科会は、学校づくりなど教育実践においても教育運動においても、子ども・若者、父母・地域住民の参加と、教職員を含めた共同が重要であるという認識をもっています。また、学校づくりにおいても仕事おこし(就職保障)においても地域づくりが求められてくると考えています。
2 分科会の進行と討論の柱
(1)高校入試制度改革と高校再編・統廃合反対のとりくみ
少子化は本来なら高校への希望者全員入学や教育条件の充実の絶好の機会であるはずなのに、教育政策はそれをも口実にして、教育制度の競争的性格を強め、教育機会を削ろうとしています。高校入試の受験機会の複数化、高校通学区の拡大・自由化によって、いっそう激しい競争が学校制度に持ち込まれようとしています。
(2)の報告は、青森県における高校入試制度改変についてのもので、全国初の「前期一般選抜、後期特色選抜」の導入の経過とその問題点を明らかにしようとしています。
高校統廃合、高校再編成も大きな問題です。(6)は、大阪からで、この間の高校統廃合問題についての実践と運動の総括と提言が盛り込まれています。「数的な検証」と「質的な検証」の両面から、個別学校の問題としてだけでなく、地域の問題としてとらえる視点が出されています。
(2)青年の進路と自立を支える学習と教育
ニート問題や若者の不安定雇用の増大、格差社会の拡大など、就職と労働をめぐって青年たちは深刻な状況におかれています。これらの問題に対する認識を深めつつ、青年たちの自立を育む学習や教育、自立を支える家庭・学校・地域の課題について議論します。学校での進路学習、学校の内外での社会参加などが、青年の自立をどのように支えうるのか、そのなかで青年が獲得する力と今日の青年の自立の姿について学びあいます。
(1)は、学習意欲をいかに高めるかをテーマとした授業・HR実践の報告です。学習の基盤に子どもの自立があると指摘しています。子どもの自立も含め、この報告に関連して若者たちの姿や彼らがおかれている状況について議論します。
(4)の報告は、市教委から一方的に市内の中学校現場に押しつけられた「職場体験」事業についての報告です。この報告に関連して「キャリア教育」についても議論します。
(5)は、高校の「総合的な学習の時間」における進路学習の実践報告です。この報告をもとに青年の勤労観や、就職や労働をめぐって青年を取り巻く状況についても議論します。(3)では、さまざまな�狃于颪き瓩箸いΝ狢慮嚇�な学び�瓩鮹羶瓦砲垢┐秦躪膤惱�の実践報告です。報告者は大人・自立した人間となる基礎づくりを総合学習の目的のひとつとしています。(1,4,5,3,7,8)の報告をもとに、進路学習のあり方や目的(どのような力を育てるか)について議論します。
(3)総括討論
地域における就職保障のとりくみ、仕事おこしのとりくみなどをふくめて、今後の課題と展望を明らかにするような総括的な研究討論をおこないたいと考えています。
◎学力の高い子だけが選択?!
第16分科会『思春期・青年期の進路と教育』では、青森県の高校入試制度が今年から�〜梓�と後期の受験機会複数化、�∩憾�一区の入試制度となりました。前期の募集枠を九割とする高校が多く、学力の高い受験生だけが「主体的に選択できる」制度となります。また、後期入試が特色選抜とうたいながらも、合格する保障もなく、落とされた生徒を不安にさせるものとなりました。結果、前期不合格者の中から後期を受けない生徒が23%も出ました。私学との関係から追募集をしないため、定員に満たない高校も出て、将来の統廃合の対象校となる可能性も出てきています。
入試制度が中学教育をゆがめ、夏休み・冬休みの補習が強いられ、入試が生徒指導のために使われる傾向や、高校での適格主義を求める現場の声に対して「子どもをどのようにとらえていくのか」「教基法改正の先取りになっている」との意見が出されました。(速報「たまっこ」より)
◆第17分科会 両性の平等と教育 ※文中の括弧半角数字は分会ごとのレポート番号
はじめに
依然として激しいジェンダー・バッシングが続いていますが、本分科会には、それに抗する多彩な実践報告が、さまざまな職場・団体から寄せられています。とくに今年度は、性教育にかかわる実践レポートが増加するとともに、昨年度に引き続いて男女の働き方や職業・進路をテーマにしたレポートが多数揃いました。
第1日目(午前)
(1)ジェンダー・性教育をめぐる情勢
分科会を始めるにあたり、報告者の自己紹介とともに、(12)の教科書をめぐる状況をふまえながら、各地域や職場でのジェンダーと性教育バッシングをめぐる動向、情勢のとらえ方や実践の課題と展望について共通認識を深めていきたいと思います。また(9)は、2つのテレビドラマをとりあげ、その作品にひそむジェンダー視点を明らかにしようとするものですが、メディア作品の分析を通じて、報告者のいう「通俗的なジェンダー視点」、そして「新しい時代を予感させるジェンダー視点」とは何か、討論したいと考えます。
第1日目(午後)
(2)働くこととジェンダー
日本のジェンダー問題の中で、とりわけ労働問題はその状況が深刻であるだけに中核的な課題であるといえます。今年度は昨年度からの継続的・発展的なレポートが多く提出されました。
昨年度の子どもの権利条約の学びから性教育を展開した報告に続き、それを就労の問題につなげたのが今年度の(6)の実践報告です。やはり就労問題にとりくんだ(10)の実践とともに交流したいと思います。愛知高教組は長年女性卒業生を対象に労働実態調査をおこなってきました。今年度大学を経て教員になった卒業生たちについて報告してくれるのが(5)です。教え子たちのその後から今日の女性の就労問題を明らかにするとともに、振り返って高校までにつけるべき力は何か、また新任教員の状況についての議論を期待します。(4)は、昨年度の男性教員の育児休業を取得した報告に対して、育児休業を交互に取得した夫婦の教員からの報告です。過度の忙しさの中で結婚も出産もしにくくなっているといわれる女性教員たちの現状について議論するとともに、人間らしく生きることのできる職場づくりをめざす運動について考えます。
第2日目(午前)
(3)性と生の教育
2日目の午前中は、性の学習をテーマにした3つのレポートで議論をすすめていきます。
(2)の「育ち行くからだとわたし」は、小学校4年生を対象とした、自分のからだの成長について学ぶ実践です。ていねいな学習の流れの中で、自分のからだを肯定的に受けとめることをねらいとしています。特に、意識的にとりくまれている「個人差をどう学習するのか」という点について、参加者とともに確認し深めていきたいと思います。
(7)の「小学5年生の性教育」は、理科という教科の中に位置づけられた「ヒトのたんじょう」の学習を中心とした報告です。宿泊学習前の女子に対する月経指導と並行しておこなった男子に対する月経の学習などについても取り上げられています。子どもの疑問にていねいに答えるかたちですすめられ、子ども・親の感想を詳細に記録している報告によって、性教育の重要性の確認が可能だと思いますし、さらに、どのような課題があるのかについて議論したいと考えています。
(8)の「性の教育をめぐる問題」では、広島における教師のおかれている状況を見すえたうえで、性の教育を実践するためにどのような課題があるか提起しています。それは、学習の内容、特に生物学的な視点からの問題や、歴史的な視点の必要性など多面的なものであり、それらについて議論を深めていきたいと思っています。
子どもに性の学習を保障することに困難な状況が相変わらず続いていますが、こうした意欲的な実践報告によって、性教育の内容を深めることが可能だと思います。
第2日目(午後)
(4)ジェンダーと性の教育を広げるために――総括討論
性教育やジェンダー問題学習に対するバッシングは激しく、とりわけ東京都では性教育を授業でとりくむことが困難になっています。しかし、子どもたちの性やジェンダー問題への関心は強く、社会からも求められており、まさにその要求に応えることこそが重要であると、この分科会で確認されてきました。(3)は、保護者たちの要求に応え、彼(女)等と子どもたちとでしっかりとした性教育の授業をつくった実践です。(11)は、長年の授業実践を総括的にまとめています。(1)は、校内研修会でジェンダー問題を取り上げ、教員たちが学習したプロセスをていねいに分析した報告です。
2日間の討論をふまえ、参加者全体でジェンダーと性の教育をいかに広げていくかを議論したいと思います。
◎私自身が人間らしく 生きること
激しいジェンダーバッシングが続いていますが、それらを押し返してジェンダーの平等を実現するため、多方面からの実践報告を受け討論しています。教科書の問題では、家庭科・歴史・公民等で連携を図りながら、民主的な採択制度にしていくことの大切さが確認されました。TVドラマ「風のハルカ」・「熟年離婚」をもとに、開かれた家族、人間として対等な家族、夫婦の心や体の共有の問題等が話し合われました。夫婦で育休を半年ずつとったレポーターが「私自身が人間らしく生きることで生徒に還元できると思っている」と言っていたのが印象的でした。(男女平等教育全国ネットの参加者)(速報「たまっこ」より)
◆第18分科会 子どもの人権と学校・地域・家庭 ※文中の括弧半角数字は分会ごとのレポート番号
1 子どもの権利をめぐる現状
政府は構造改革と「教育改革」をすすめています。この構造改革は、「弱肉強食」の世の中をつくり出し、若者の就職難、非正規雇用の増大をうみだし、格差社会が重大な社会問題になっています。その中で「教育の格差づくり」がすすんでいます。いま子どもたちは、その置かれている家庭の状況や環境を配慮することなく、「能力」の名のもとに、低学年から選別・棲み分けさせられ、自己責任の名のもとに差別され、あきらめさせられ、そして本当の自分を発見する機会さえ与えられることなく、社会(国家)に適合する・役にたつ自分づくりを強いられているのではないでしょうか。
このような中では、<1>平等や教育を受ける権利、社会権の保障が後退させられ、<2>人間としての尊重を保障し、人間関係を形成し、成長発達していくために不可欠な意見表明権は、一部で素晴らしい実践がなされながらも、まだまだ理解がすすんでおらず、<3>子どもの権利行使を支える親や教職員の労働条件や生活は悪化しており、<4>教職員に対する管理統制が強まっています。
1998年、国連子どもの権利委員会は第1回勧告書の中で、日本の子どもが家庭・学校・施設などで「…高度に競争的な教育制度等によって、ストレスにさらされ、遊びを奪われ、その結果、子どもたちの成長・発達に精神的・肉体的歪みを生じている」ことを指摘し、是正勧告を出しました。しかしながら、日本政府はその後もこの勧告を無視し、むしろ逆行する政策をつぎつぎと実施してきました。2004年1月、国連子どもの権利委員会は第2回勧告書において、「教育制度の過度の競争的な性格が、子どもの肉体的および精神的な健康に否定的影響を及ぼしている」ことを指摘し、ふたたび是正を勧告しています。国連子どもの権利委員会の日本政府報告に対する第3回審査が2008年1月に予定され、第3回市民・NGO報告書を作る会の活動が開始されています。
他方、文部科学省が設置した「人権教育の指導方法等に関する調査研究会議」は、人権教育の指導方法等の在り方について「第2次とりまとめ」(2006年1月)の中で、「人権尊重の精神の涵養」が「具体的な態度や行動に現れるようにすること」を人権教育の目標としています。子どもの権利問題を、教育基本法改悪法案が強調する、道徳・しつけの問題にすり替える危険な動きです。
2 本分科会の課題
このような中で開催される本分科会は、子どもの権利条約の意義を学び、生かす活動の課題と展望を語り合いたいと思います。
また、各地の子どもの意見表明権に関するとりくみや、子ども一人ひとりを大切にし、その成長発達権を保障しているとりくみ、さらにはそれを支える親や教職員・子どもたちにかかわる関係者の権利やその環境について議論し、子どもの権利の発展につながる実践的・研究的討論と交流をはかっていきたいと考えています。
3 全体の組み立て
第1日目前半(午前と午後の一部)では、「子どもの権利条約をめぐるとりくみ」について報告を受け議論します。国連子どもの権利委員会の第2回勧告の意味・意義を学び、今後それを生かす活動の課題と展望を討論します。また、第3回審査に向けてのとりくみも討論します。
午後には「子どもの意見表明権と学校づくり」の実践報告をうけ、子どもの意見を実現していくために必要とされる実践等について討論したいと思います。
第2日目午前には、「子どもの居場所と学級づくり」の実践報告を受けます。一人ひとりの子どもが成長し発達する権利を保障した教師の実践について討論し、深めたいと思います。
午後には、「子どもの人権に関する教材と授業」の実践報告を受けます。学校のなかで、子どもの人権に関する学習はさまざまな切り口、身近な問題意識からとりくむことが可能であり、教師や親が子どもから学ぶこともあるし、また子どもたちがみせる成長の姿は、子どものすばらしさを認識させ、さらには教育の醍醐味すら感じとることができます。自由におおらかに語り合いたいと思います。
◎子どもたちの願い国連に
第1日目午前中には、共同研究者の福田雅章さんから「『子どもの権利条約』における意見表明権の意味」と題する基調報告と「子ども全国センター」からのレポート「子どもたちや大人の日常を報告書にして国連にとどけましょう」をもとに討論をおこないました。子どもの権利条約に反対する「児童の健全育成を守るNGOネットワーク」が日本政府にたいして、「国連・子どもの権利委員会」への第3回政府報告書を出さないようにはたらきかけている中で、子ども全国センターのレポーターは教育関係団体・者が地域や学校での子どもたちの実態や願いを、国連に届けることが大切と強調しました。(速報「たまっこ」より)
※本稿は、「教育のつどい2006」要綱からレポートの特徴と討論の組み立てについて紹介しています。また、合わせて速報「たまっこ」で取り上げられた当日の分科会の様子を紹介しています。速報の内容は、全日程を通じて取材したものではありませんのであらかじめご了承ください。
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