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【教研】2005/08/18 
「未来をひらく教育のつどい2005」討論のよびかけ

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「つどい」のテーマは、憲法・教育基本法

 いよいよ、「未来をひらく教育のつどい」がはじまりました。今日から4日間、研究、討論を深めましょう。討論のよびかけをおこないます。
 
 この「つどい」のテーマは、憲法・教育基本法です。日本国憲法の中心点は、平和・人権・民主主義であり、教育基本法はその中身も、つくられた時期も憲法と一体です。教育基本法は、子どもたちを平和な世の中のつくり手として、また、お互いがお互いを権利主体として尊重し、民主主義を大切にする主権者として育てようという重要な意味をもっており、それは、子どもの権利条約の精神と響きあうものです。これをふまえ、教育は国民のものである、ということに確信を深め、国民の手で教育をつくりあげることの大切さと、それとかたくむすんで教育研究をすすめようということをお互いに、確かめ合いたいと考えます。
 
 みなさんごいっしょに、考えあい、深め合い、そのねうちを確かめあいましょう。そして、それを力に、学校、地域のすみずみから、国民の手で教育を大きく前進させようではありませんか。
 
 討論のよびかけの第1は、ここにつどったみんなで子どもを語り、教育を語り合いましょう、そして、子どもの成長・発達を保障する教育をみんなの手でつくりあげましょう、ということです。
 
 相次ぐ「少年事件」や子どもの学力をめぐる問題、など子どもをめぐる問題が社会問題ともなり、父母・国民の不安もふくめた強い関心が寄せられています。これは、子どもたちが悪くなったからなのでしょうか。いや、そうではありません。子どもたちは、大人でさえ生きづらい世の中を必死になって生きています。そのなかで、学ぶことの意味や生きることの意味を一生懸命探そうとしています。子どもたちは、本当はしっかりと学びたい、人間らしく生きたいという願いを強めながら、生きているといってよいと思います。しかし、それがなかなかつかめないもどかしさといらだちのなかで、時にはそれが屈折的に表現されたり、ゆがんであらわれたりという場合があります。日本の子どもたちは自己肯定感が低いという国際調査の結果もあり、なかなか自分が自分であってよい、という感覚を持ちえなくさせられているのではないでしょうか。
 
 いま求められることは、大人たちが、そうした子どもたちの願いをよみとき、子どもの苦悩に共感し、願いを共有することではないでしょうか。子どもの成長発達に直接携わっている父母、教職員をはじめ、国民みんなの知恵と力をあつめ、子どもたちのすこやかな成長を保障する教育づくり、学校づくりをすすめることが、なんとしても求められています。そのため、子どもの声に耳を傾けつつ、学校での子ども、家庭での子ども、地域での子ども、を大いに語り合いましょう。
 
 ところで、いま、文部科学省がすすめている「教育改革」路線は、こうした子どもの願いにこたえるものになっているのでしょうか。決してそうなってはいないのではないでしょうか。逆に、子どもたちをいっそう苦しめる方向に働いているのではないでしょうか。文部科学省は子どもを競争で追いたて、追いつめることを続けてきました。日本の教育制度は、すでに1998年に国連子どもの権利委員会から、日本の子どもたちは、「高度に競争的な教育制度のストレスにさらされ、発達障害にさらされている」と指摘されるまでになっており、2004年には、そうした勧告をおこなったにもかかわらず、「改善されていない」と指摘されています。学習指導要領が変えられ、今年から使われている小学校の教科書には「発展」が入れ込まれました。これは、子どもを早い時期から「できる子」「できない子」によりわけて、一部のエリートづくりのために、もっと競争を強めようとするものであり、学校を子どもの成長・発達を保障する場から、子どもをより分ける場へと変質させようとするものです。
 
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 また、教職員をはじめ、学校現場への管理を強めるやり方も大きな問題です。「学校評価」や「教職員評価」を押しつけ、教職員をこうした文部科学省の「教育改革」路線の忠実な担い手にしていくことや、東京の障害児学校で引き起こされたように、教職員が父母と合意をえてすすめてきた性教育を、教育行政が議会やマスコミと一体となって乱暴にふみにじること、「日の丸・君が代」を学校現場にねらいを定めて押しつけ、処分までおこなうことなど、文部科学省、教育行政は、教職員の教育活動をしばりつけることに力を入れ、いまや大きな国民的要求となっている30人学級をはじめとする肝心の教育条件整備は、ことのほかおろそかにしてきています。
 
 子どもたちのすこやかな成長のためには、こうした「競争と管理」の教育政策の転換こそが求められるのではないでしょうか。各教科、各分野から「教育改革」路線の具体的なあらわれと、それが引き起こしている問題点を出し合い、深めましょう。
 
 そのためにも、教育についての国民的討論が求められています。教育は国民のものです。国民的討論をすすめ、国民の手で教育をつくりあげましょう。
 いま、子どもたちが、学校のこと、教育のこと、世の中のことについて発言し、行動しています。学校統廃合が各地ですすめられ、大きな問題となっていますが、「私たちの意見も聞かずに、勝手に学校をつぶすのは何ごと」と、子どもたちが学習権の持ち主として立ち上がっています。また、高校での「三者協議会」をはじめ、子どもの意見を聞き、父母と教職員が力をあわせて教育活動をすすめるとりくみが前進しています。30人学級実現のために自らが主権者として、その運動の担い手となってがんばる父母のみなさんが、各地であらわれています。教職員も過労死寸前といわれる長時間・過密労働とひどい管理統制にさらされながらも、「子どものために」と、身を粉にしてがんばっています。
 
 こうしたとりくみを総結集すれば、私たち国民の力で教育をつくりあげることができます。ぜひ、力をあわせようではありませんか。大いにとりくみを交流しましょう。
 
 子どもを権利主体として尊重すること、教育権の持ち主である父母と、その負託をうけて、専門性を発揮して教育活動にとりくむ教職員が力をあわせて、学校づくり、教育づくりにとりくむこと、これが、憲法・教育基本法・子どもの権利条約にもとづく教育の姿です。これらを前進させるために、「未来をひらく教育のつどい」では、「教育フォーラム」にとりくみます。学力問題、教科書問題、「少年事件」の問題など、いま、私たちが直面し、解決しなければならない問題をテーマに、みんなで語り合う試みです。また、特別企画として、「憲法・教育基本法・子どもの権利条約シンポジウム」を持ちます。憲法・教育基本法・子どもの権利条約のねうちを、みんなで確かめ合いましょう。
 
 第2は、これまでにつみあげてきた教育研究の蓄積を大切にしながら、みんなの手でさらに前進させましょう、ということです。
 教育研究全国集会は、1951年に日光で第1回目の集会が開かれたのがはじまりです。以来、教職員組合が主催する教育研究集会という世界でもまれに見るスタイルを確立し、教育研究活動を発展させてきました。そして、全教が作られた1989年以後、この教育研究集会の積極的伝統と研究の蓄積をうけつぎ、発展させる立場から、教育研究全国集会がとりくまれてきました。そこでは、登校拒否・不登校問題や、子どもたちの「新たな荒れ」、「学級崩壊」問題など、その時々の教育問題が真剣に議論され、これらの解決、克服のために大きな力を発揮してきました。
 
 こうして積み上げられてきた研究の成果を大いに生かすときです。これまでも各教科の分科会では、子どもが基礎学力を身につけるために必要な教育内容や指導方法などについて、子どもの実態をふまえた研究、討論がすすめられ、教職員がすすめる日々の教育実践や教育活動に大きな励ましと力を与えてきました。
 
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 いま、「学力」をめぐる問題が、これまでになく国民的にも大きな関心を呼んでいるもとで、ここでの議論は大変重要です。教職員と研究者のみならず、多くの父母・国民がいっしょになって、大いに研究、討論を発展させましょう。
 
 また、各課題別分科会でも、子どもの願いをどう読み解くべきか、という重要な問題をはじめとして、真剣な話し合いと研究がなされてきました。冒頭に述べた子どものとらえ方も、ここでの研究、討論の到達点に導かれたものです。これをはじめ、現代的課題と切り結ぶ研究、討論が繰り広げられ、これも教育現場の実践に大変役立つ成果を積み上げてきています。大いに研究討論をすすめましょう。
 こうして、教職員どうしが力をあわせ、父母・国民、教職員が力をあわせた教育研究活動として、研究、討論をすすめるならば、子どもの困難を打開し、教育をもっと前進させることができます。
 
 これらのとりくみは、「参加と共同の学校づくり」の前進に直結します。すでに述べたように、子どもの参加、父母・国民と教職員が共同した学校づくりをすすめることは、教育を国民の手にとりもどすことであり、憲法・教育基本法を学校教育に具体化するとりくみにほかなりません。このとりくみと一体に、教育研究活動を大いに発展させましょう。
 
 第3は、戦後60年、平和憲法・教育基本法の持つ意味をみんなで確かめ合いましょう。そして、世界と日本の平和のために、何よりも子どもたちのために、憲法・教育基本法を改悪してはならない、という気持ちを一つにむすびあいましょう、ということです。
 
 相次ぐ「少年事件」に胸が痛みます。しかもそれが、親子関係や家族関係、友人関係などの親密な人格関係の中で引き起こされるという新たな事態となっています。本来は、お互いが心と心を通わせるべき人と人との関係までが、いわば暴力的といってもよいほどの「競争と管理」の力ずくの支配によって変質させられているのではないでしょうか。このことは、平和憲法を投げ捨て、憲法9条を変えて、最大の暴力である戦争へとこの国と国民を導こうとする動きと決して無関係ではありません。
 
 私たちは、教育研究集会で一貫して憲法・教育基本法にもとづく教育を、と掲げ続けてきました。そして、この「つどい」では、いっそう高く、それを掲げつつ、同時に、平和の文化を築き上げよう、というスローガンを新たに掲げました。それは、こうした子どもたちを苦しめている世の中の実態があるからです。
 
 私たちは、子どもたちを苦難から救い、すこやかな成長と発達を保障するために、なんとしても、憲法・教育基本法改悪をゆるすわけにはいきません。この「つどい」でその気持ちをひとつにむすびあわせようではありませんか。
 
 憲法・教育基本法を変えようとする動きは、たしかに激しくなっていますが、一方でこれを許さぬ国民のとりくみも、これまでになく発展しています。大江健三郎さんや井上ひさしさんなどがよびかけてつくられた「九条の会」は、結成わずか1年あまりで全国3000をこえてつくられ、あらゆる地域、あらゆる分野に広がっています。戦後60年、平和憲法のもとで生きてくらしてきた国民の中に、憲法の力がずっしりと定着しています。この力が、憲法と一体の教育基本法を守る大きな力となり、この国会でも教育基本法改悪法案提出を許さなかった、という重要な到達点を築いています。
 
 このもとで、憲法・教育基本法を変えてしまおうという勢力は、国民から、そして世界から孤立しています。文部科学省が、侵略戦争賛美の「つくる会」教科書を検定合格させた問題、小泉首相の靖国神社参拝問題などは、日本国内はもとより、世界ではアジアのみならず、ヨーロッパやアメリカのマスコミなどからも強い批判が寄せられており、日本外交のゆきづまりという重大問題を引き起こしています。日本政府がこの道をつきすすむならば、それは、日本がアジアと世界で孤立する道を選ぶことにほかなりません。私たち国民は、そうした道を決して選ばない、このことをみんなで確かめあいましょう。
 
 憲法9条は、日本国民310万人、アジアの人々2000万人という大きな犠牲のうえに立ってうちたてられた、2度と再び日本は戦争をしないと世界に誓った国際公約です。そして、戦争のない世界をつくろう、その先頭に日本国民がたとう、という決意を世界の人々に明らかにしたものです。子どもが私たちの宝であるように、憲法は、日本の宝であり、世界の宝です。この憲法の指し示す方向でこそ、核も戦争もない世界と平和の文化を築き上げることができるのではないでしょうか。
 
 そして、教育基本法は、この憲法の理想の実現を教育の力に求め、一人ひとりの子どもを人間として大切にし、その力をどこまでものばしていこう、という教育本来の目的を定めたものであり、このことが「教育の憲法」と呼ばれるゆえんです。この教育基本法こそ、教育のゆがみを正し、子どものすこやかな成長を助け、21世紀の教育をきりひらく大切な道しるべです。みんなで力をあわせて、憲法・教育基本法を守り、生かそうではありませんか。
 
 みなさん、今日からはじまる4日間、大いに学び、話し合いましょう。そして、その成果をそれぞれの地域、学校に持ち帰り、広げましょう。この力が、子どもを守り、育てます。私たち国民が力をあわせれば、必ず教育を前進させることができる、この確信を共有し合える集会として、みんなの力で成功させようではありませんか。
 以上を申し上げ、今日からはじまる4日間、この「よびかけ」にこたえた研究、討論が展開できることを心から願って「討論のよびかけ」とします。よろしくお願いいたします。




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