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【談話】2005/04/06 
『中学校新教科書の検定結果の発表について』

2005年 4月 6日 全日本教職員組合 教文局長 山口 隆

 2005年4月5日、文部科学省は2006年度から中学校で使用される教科書の検定結果を発表しました。
 この検定結果については、大きく言って2つの重大な問題があると考えます。
 
 第1は、歴史の真実をゆがめ侵略戦争を賛美し、憲法改悪論に子どもたちを誘導する「つくる会」教科書を引き続き検定合格させたことです。
 「つくる会」歴史教科書は、日本国民310万人、アジアの人々2000万人という大きな犠牲を引き起こした太平洋戦争を「大東亜戦争」とよび、これを「『自存自衛』のための戦争」と描くなど、日本がアジア諸国を侵略した歴史を美化し、子どもたちに日本の歴史に対する誤った認識を形成する大変危険なものです。こうした教科書が国内外から強い批判をあびることは当然です。
 平和と友好を基調とした国際社会をつくりあげるべき21世紀を生きていく子どもたちにとって、自国の歴史を、犯した過ちもふくめて正しく理解することは不可欠であり、それは、いま求められる重要な基礎学力の一部をなすものです。
 また、「つくる会」公民教科書では、基本的人権よりも前に「憲法改正」の項をおき、日本国憲法を「世界最古」などと誹謗し、憲法「改正」を公然と主張して、憲法改悪の流れへと子どもたちを引きずり込もうとするものです。こうした教科書を検定合格させたことは、特定の政治的意図のもとに憲法・教育基本法を改悪しようとする流れに教育を従属させようとする動きに呼応したものであり、文部科学省の責任が厳しく問われます。これは、「お国のために命を投げ出してもかまわない日本人を生み出す」という教育基本法改悪のねらいを、教育を道具にしてすすめようとするものであり、子どもたちが自然や社会についての基礎的な知識や理解をはぐくむ上での「主たる教材」としての教科書のになう役割を逸脱するものです。
 こうした教科書を検定合格させた文部科学大臣の責任はきわめて重大といわなければなりません。
 
 第2は、「習熟度別学習」の導入を中心に、学校教育を子どもの成長・発達を保障する場から子どもをえり分ける場へと変質させる学習指導要領路線によって、いっそう教科書の内容をしばりつけるものとなっていることです。
 いま、子どもの学力をめぐる問題が、学力にかかわる国際調査の結果もあいまって、大きな国民的関心事となっており、子どもに基礎的な学力を、という父母・国民のみなさんの強い願いが寄せられてきています。ところが、検定結果は、そうした国民の根本的要求にこたえるものになっていません。
 新教科書では、2005年度から使用されている小学校教科書に引き続き、学習指導要領の範囲を超えた内容が「発展的記述」として扱われています。文部科学省は、2003年に学習指導要領を一部改訂して、現行学習指導要領で削除した内容を「発展」という形で教えてもよい、としました。ただし、それをすべての子どもに教えるのではなく、一部の「できる子」には教えよ、というものであり、子どもたちの学ぶ学習内容を「できる子」「できない子」によって、たがえようという重大な問題をもつものです。
 文部科学省は、こうした学習指導要領にもとづく差別、選別の教育を教科書検定によってしばりつけようとしています。それは、教科書では「発展」は「すべての子どもが学ぶ必要がない」とされている事実に明確にあらわれています。
 これは、すべての子どもたちにひとしく教育を保障することを定めた、憲法・教育基本法にそむくものであり、教科書を子どもたちの差別、選別する道具とすることは、教育のいとなみに照らして許されないことです。
 
 以上の重大な問題点を指摘するとともに、8月におこなわれる教科書採択にむけて、私たちは、父母・国民のみなさんとともに、以下のとりくみをすすめるものです。
第1に、侵略戦争を美化し、憲法改悪へ子どもたちを誘導する「つくる会」教科書の問題点を明らかにし、全教も参加している「子どもと教科書全国ネット21」をはじめ市民団体とともに学習、宣伝を強め、世論形成をはかるとともに、そうした教科書を検定合格させた文部科学大臣の責任を徹底的に追及します。
 第2に、教科書採択にあたっては、教育の専門家であり、日々教科書を使って指導している教師の意見を尊重、反映した採択をおこなうことを教育行政にもとめる市民運動を、全国の採択区で広げます。そして、「教育委員会の責任と権限」を口実にした、現場の意見や子ども、父母・国民の意見を無視した採択をさせないとりくみを強めます。
第3に、「子ども参加・父母共同の学校づくり」のとりくみを一つひとつの学校からすすめ、子どもたちの基礎学力をはじめ、その人間的な発達をはぐくむ教育づくりに全力をあげてとりくみます。
 
 今回の教科書検定の背景に、憲法9条をとりはらって、日本をアメリカとともに海外で武力行使できる国に変えてしまおうとする憲法改悪の動き、これと一体に「戦争する人づくり」をねらう教育基本法改悪の動きがあります。
平和な世の中は、子どものすこやかな成長・発達の大前提です。そして、子どもたちの未来は、平和な世の中でこそ開かれるものです。そうした未来を子どもたちとともに開くためにも、私たちは、あらためて父母・国民のみなさんとともに、憲法・教育基本法改悪を許さぬとりくみに全力をあげることを表明するものです。

以上




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