全教 全日本教職員組合 憲法と教育基本法を生かす学校と教育を
HOME
全教紹介
This is Zenkyo
全教最新情報
>活動報告
>声明・見解・談話・要求書など
>専門部の活動報告
ピックアップ
刊行物案内
障害児教育
青年教職員
全教共済
資料室
リンク集
INDEX 全教最新情報

声明・見解・談話・要求書など 声明・見解・談話・要求書などindexへ

【意見】2005/07/25 
『中央教育審議会義務教育特別部会における意見発表』

2005年 7月25日 全日本教職員組合

1.義務教育全体について

 憲法第26条第1項は、教育を受ける権利を規定し、第2項は、国民がその保護する子女に普通教育を受けさせる義務、義務教育の無償を規定しています。つまり、義務教育は、子どもの教育を受ける権利を現実に保障する手段として、国と社会および父母が教育機会の配慮の義務を負うものととらえなければなりません。このことをふまえ、教育基本法は、第3条で「すべて国民は、ひとしく、その能力に応ずる教育を受ける機会を与えられなければならない」と教育の機会均等の大原則を定め、第4条で義務教育を規定しています。
 中教審義務教育特別部会での審議対象として、�ゝ遡涯軌蕕寮�度・教育内容の在り方、��国と地方の関係・役割の在り方、�3惺察Χ軌薜儖�会の在り方、�さ遡涯軌蕕坊犬詒駘冑蘆瓦虜澆衒�、�コ惺擦伐板蹇γ楼茲隆愀検μ魍笋虜澆衒�、があげられていますが、義務教育の制度、条件、内容、教育委員会のあり方等、教育行政、財政についての検討をおこなう場合には、国民の教育権、なかんずく子どもの学習権、父母の教育権を保障するために、国、地方公共団体、社会がどのような義務を負うべきかという角度からの検討が求められると考えます。「審議経過報告(その1)」を見る限りでは、「すべての論点について意見を集約するまでにいたっているわけではない」と述べられているように、総論的な議論の入り口という印象を持たざるをえませんが、「全国的な学力調査」の問題や、「教員評価」の問題等、ここで出されてきている論点の一つひとつについても意見があり、別途意見表明の機会を与えていただきたいと考えます。
 また、今後の審議に当たっては、憲法・教育基本法を議論の根底にすえた検討を強く求めたいと思います。
 

2.義務教育費国庫負担制度について

 以上を前提として、この間義務教育特別部会での議論の中心となっている義務教育費国庫負担制度について、意見を述べます。「審議経過報告(その2)」では、義務教育費国庫負担制度の維持を求める意見と、義務教育費国庫負担金の一般財源化を求める地方6団体の意見が、両論併記的に述べられています。ここでの主要論点となっている問題は、大きく2つあると考えます。1つは、「国の責任」論であり、いま1つは、「地方の自由度の拡大」という問題であり、まず、この論点について、見解を述べます。
 
(1)「国の責任」論について
 
 すでに述べたように、義務教育は、憲法・教育基本法にもとづいて国が定める制度であり、このことから、当然、国の責任と義務が生じます。
 その第1の責任と義務は、子どもの学習権を保障するために、教育の機会均等を制度的、財政的に保障することであると考えます。義務教育費国庫負担制度は、教育の機会均等の大原則の実現のために、国の責任と義務履行として課せられている重要な財政制度であり、その意味で、「国の責任」でおこなうべきものです。 
 問題は、国が国庫から財政支出するからといって、「国の責任」を理由に、地方の自由度や学校の自主性を拘束してはならないという点にあります。たとえば、いまでこそ、文部科学省は、少人数指導の加配教員の少人数学級への転用を認めていますが、それ以前には、地方の努力で少人数学級をおこなう場合に、これを支援するのではなく、妨げることすらやってきた経過があります。こうした地方自治体や地方教育行政の自主的判断と、施策を「国の責任」論でそこなってはならない、と考えます。
 また、「審議経過報告(その2)」でも散見されるように、学習指導要領を文部科学省が定めていることも「国の責任」論として述べられています。1958年に文部大臣(当時)が、学習指導要領を官報告示したことをもって、学習指導要領に「法的拘束力」があるとして、現場の闊達な教育活動をしばってきたことが、教職員の自主性や権限発揮を妨げ、これが子どもたちの学習権を保障するうえで、大きな問題を引き起こしてきています。学習指導要領を大綱的基準として、学校や教職員の創意工夫を引き出すことこそが国の責任であり、「国の責任」論をもって、教育活動を狭めることは、本末転倒です。
 「国の責任」論が問題となるのは、これまで文部科学省がおこなってきたこうした教育行政の実態があるからです。こうしたやり方は、権利としての義務教育にそむき、実質的に教育を国民の義務に転化させるものであり、これをあらためることこそが求められます。
 
(2)「地方の自由度の拡大」の問題について
 
 「地方の自由度の拡大」は、この「国の責任」論と裏腹の関係にある問題であると考えます。地方自治は、憲法が定める大原則であり、国が地方自治を尊重し、保障することは、憲法が国に対して要請する責務です。ところが実態的には「3割自治」という言葉が生まれたように、国がおこなう財政支出を口実に、地方自治体が住民のためにおこなうべき施策をしばり、さらには、地方交付税までも削減し続け、その自由度を低めてきました。それは、すでに述べたように教育についても同様であり、地方6団体が地方の自由度の拡大を強く要請しているのは、こうした実態に照らして当然であると考えます。
 しかし、それは、義務教育費国庫負担金を一般財源化することとは、性格を異にするものであるといわなければなりません。義務教育費国庫負担制度は、これもすでに述べたように、憲法・教育基本法にもとづいて、国の責任で教育の機会均等を財政的に保障する教育条件整備の根幹ともいえる制度です。この制度によって、どの地方に生まれ育っても、同様の水準の教育が受けることが可能となっています。問題は、この制度を口実に、国が地方自治体の裁量や自由度を狭めているというところにあり、これを改善することがもっとも求められる方策であると考えます。
 
(3)私たちの考え
 
 以上をふまえ、私たちは以下のように考えます。
 
�ゝ遡涯軌虍餽餮防蘆汗�度について
 義務教育費国庫負担制度は堅持するだけでなく、これをいっそう拡充することが求められます。この点では文部科学省が主張する「制度の根幹を維持する」というだけでは、きわめて不十分であり、これまでおこなってきた旅費及び教材費の一般財源化、共済費長期給付等の一般財源化、退職手当等の一般財源化、そして、2005年度予算での4250億円の減額など、この制度を崩してきたことに対する、抜本的な検討を求めたいと考えます。
 また、「総額裁量制」によって地方の自由度が高まったとされていますが、「定数崩し」ともあいまって、現場では非常勤講師など非正規雇用教職員が増大し、このことが、学校という組織体として教育活動をすすめていくうえで、子どもたちの生活指導にあたって、教職員集団としての十分な対応ができないなどの困難を引き起こしていることも事実であり、大きな問題点をもつものです。
 そもそも、義務教育費国庫負担制度の削減、廃止という議論は、教育をよくするためにどうするか、という角度から出されてきた問題ではなく、「分権改革」や「財政再建」という観点から持ち出されてきたものであり、あらためて、教育論にたった検討と論議が求められると考えます。
 これらの検討にうえにたって、標準定数法にもとづく教職員配置にとどまらず、これ以外にも教育条件を整えるために、地方自治体が地方の実情をふまえて必要と認める、いわゆる加配についても、一定の条件で国が財政措置できる制度を確立し、地方財政を圧迫しない施策をとることが必要であると考えます。
 とりわけ、国の責任での30人以下学級の実施や、それを可能とする標準定数法の改正、第8次定数改善計画の策定などが国民の切実な要求となっています。また、教職員の多忙化が義務教育特別部会でも議論されていますが、教職員の労働条件は、子どもにとってもっとも重要な教育条件の1つです。教職員定数増による教職員の長時間・過密労働の解消は、喫緊の課題です。
 こうした国民的要求の実現、切実な教職員の要求を実現するためにも、義務教育費国庫負担制度の拡充は不可欠であると考えます。
 同時に、国庫負担制度を口実とした中央集権的教育行政を抜本的に見直し、地方がその自主的判断にもとづいておこなう諸施策について、これを支援する行政へと抜本的に転換することを強く求めます。また、学校に対しては、学校の自主性、自主的判断にもとづく教育活動が闊達に展開できるよう支援する施策へと抜本的に転換することを求めます。
 とりわけ、学習指導要領については、これによって、学校と教職員の教育活動を拘束するのではなく、これを大綱的基準として、各学校が教育課程編成権を発揮し、子どもと地域の実態に応じた教育活動計画が立てられるよう、支援するとともに、教職員がそうした教育活動に闊達にとりくめるよう条件整備をおこなうことが必要です。中教審として、以上のことが盛られた答申が出されるよう、義務教育部会での引き続く真剣な検討を望むものです。
 
�△修梁勝∋劼匹發粒惱�権を保障するための財政措置について
 憲法26条2項が規定する義務教育無償の原則を真に保障するための諸施策をおこなうことが求められます。そのため、「審議経過報告(その2)」でも大きな異論は出されていないようですが、教科書無償給与制度は、当然、維持されなければならないと考えます。また、長引く不況、親が経営する企業の倒産やリストラなどで、家庭が経済的打撃を受け、このことを原因として、給食費や修学旅行の費用などの学校への納付金が払えない子どもたちが増大しています。経済的理由によって、教育の機会均等が実質的にそこなわれている実態を早期に改善する施策をとることが、これも緊急に求められており、そうした方向での議論、検討を求めるものです。さらに、学校施設・設備にかかわっても、たとえば耐震工事など、子どもの安全・安心の学校のために緊急に求められる条件整備についても、必要な国庫負担によってすすめることが必要であり、これらも、今後の審議対象とされることを望みます。
 
��そのための教育予算の増額について
 「審議経過報告(その1)」でも触れられているように、日本の教育費の公財政支出の対GDP比は、OECD加盟国中最低となっています。これを平均並みに引き上げるだけで、小中高校までの30人学級の実現や大学までの無償が実現できます。このことは、長期的視野に立てば、日本の財政力、経済力の発展に寄与するものでもあると考えます。いまの限られた予算の枠内の、しかも「三位一体の改革」の路線のもとでの議論ではなく、大きく議論の土俵を広げることが必要であると考えます。そうした土俵での議論をおこなえば、今のところ対立しているように見える意見も、これを解消できるのではないでしょうか。
 財政論で教育を律するのではなく、中央教育審議会という名にふさわしく、教育論を前面に立てて、財政当局ときりむすぶ審議を心から期待して意見表明とします。




▲ページトップへ




〒102-0084 東京都千代田区二番町12-1 全国教育文化会館3階 TEL: FAX:
Copyright(c)2005 全日本教職員組合 All rights reserved.