【要請】2005/07/22
『2006年度文部科学省予算概算要求にかかわる要求書』
全教は7月22日、30人学級実現、義務教育費国庫負担制度堅持求め文科省交渉をおこないました。
2005年 7月22日
全日本教職員組合
中央執行委員長 石元 巌
文部科学大臣 中山 成彬 様
2006年度文部科学省予算概算要求にかかわる要求書
公教育の充実、教育条件整備におけるご尽力に敬意を表します。
さて、各地で心痛む少年事件が相次いでいますが、子どもをめぐるさまざまな困難を打開することは、国民的課題となっています。そのためにも、すべての子どもたちに基礎的な学力を身につけさせるとともに、人間らしい発達を保障していくことは、きわめて重要な課題となっています。これは、憲法・教育基本法が学校教育に要請する基本任務であり、父母・国民のもっとも基本的な教育要求にこたえることです。
今、何よりも父母・国民が求めている教育的要求は、少人数学級の実施です。それに対して、貴職が、歴代文部科学大臣として、はじめて少人数学級の実施について言及され、中央教育審議会における少人数学級は必要、との委員の意見をうけて、調査研究協力者会議を立ち上げ、検討をすすめられていることを評価します。いまや、少人数学級実現は、国民的な世論となり、私たちの運動と地方自治体の努力で、今年度では45道府県で何らかの形で少人数学級が実施されています。しかし、地方の財源には限界があり、国の責任による少人数学級の実施が求められています。
そうしたとりくみをすすめていくうえで重要なのが義務教育費国庫負担制度と私学助成制度です。両制度は、教育の機会均等を保障する根幹としての財政制度であり、これを縮小・廃止することは、子どもの教育に重大な困難を生み出します。その義務教育費国庫負担制度と私学助成制度が、小泉「構造改革」のもとでの「三位一体の改革」によって、危機に立たされています。とりわけ、財務省・総務省は、義務教育費国庫負担制度の廃止と、私学助成制度の廃止などを強く狙っており、重大な事態となっています。
さらに、昨年、中越地震等の災害が相次ぎましたが、子どもたちの安全を守るため、耐震診断・耐震工事、校舎老朽化に対する整備など、教育条件整備の課題も山積しています。
憲法・教育基本法に規定された国民の教育権を守り、教育の機会均等を保障するために、何よりも教育予算を先進国なみに増額し、義務教育費国庫負担制度と私学助成制度の堅持をはじめ、国の責任による少人数学級の実現や私学助成の増額、山積する教育条件整備の改善など、ゆきとどいた教育を推進する施策の実現を要請します。
記
1 重点要求項目について
(1)ゆきとどいた教育を実現するため、第八次(高校七次)教職員定数改善計画を策定し、国の責任による「30人学級」を来年度から実現すること。
(2)義務教育費国庫負担制度を堅持し、一般財源化をおこなわないこと。
(3)「教育の機会均等」を保障する立場から、私学助成金を国庫補助金で措置し、大幅に増額すること。
(4)標準定数法や人材確保法の趣旨をふまえ、臨時教職員の増大や給与水準の低下を生じさせないよう措置を講じること。
(5)全ての子どもたちの学習権を保障するため、就学援助や奨学金などの予算を増額すること。
2 教職員定数と学級編制基準の改善
(1)学級編制基準については、以下の改善をおこなうこと。
�‐�・中学校30人学級、高校においては普通科30人、職業科25人、定時制20人以下学級を計画的に実施すること。
�∧�式学級早期解消に向けて、学級編制基準を改善すること。
��「特別支援教育」などの制度変更にあたっては、次のように学級編制基準を定めること。
ア「特別支援教育」制度を推進するにあたっては、集団・担任・独自の教育課程などを保障できる障害児学級の学級編制基準を維持し、必要な教職員数を確保すること。
イ 通級指導教室(「特別支援教室」)について、学級編制基準に準じた「教室編制基準」を定め、教職員配置を計画的におこなうこと。
ウ 障害種別を超えた特別支援学校(仮称)の学級編制基準を検討するにあたっては、障害に応じた専門性の確保など現在の教育水準を低下させない教職員の配置基準を明確にすること。
�ど袖の斗椹�童・生徒が安心して学べるため、学籍措置変更の円滑化、合理化をすすめること。
�コ惶虔埓�基準日を3月31日以前に設定すること。
(2)教職員配置基準については、以下の改善をおこなうこと。
� 岾慘聾�上アクションプラン」への優先的な定数加配をやめ、教育の機会均等の原則にもとづく加配をおこなうこと。
�◆崗�人数指導」の加配は、学校の自主性を尊重した配置・活用を行うとともに、小規模学校の定数改善を抜本的に行うこと。加配の算定において土曜日の授業時間減時数分を上乗せしないこと。
��週当たり授業持ち時間数を、LHR、特活などを含め小学校20時間、中学校18時間、高校全日制15時間・定時制10時間、障害児学校・学級15時間を上限として軽減すること。
�ざ疑Π�が、休憩・休息を確保できるための休養室設置や教職員配置などの物的、人的な条件整備につとめること。また、安心して各種休暇、通院、出張などができるように8割の「出勤率」を基礎にした定数保障をおこなうこと。
�ヌ筏�外担当の完全解消、専科教員の拡大などを充実すること。また、教育困難校への加配、病気療養など長期欠席児童生徒の学習権を保障するための加配などを充実すること。教頭配置基準を見直し、教育現場の切実な定数要求の実現をはかること。
�ν楔邏詰,料換伺枌屬鬚垢垢瓩襪箸箸發法∧�数配置基準を抜本的に改善すること。
�Щ�務職員未配置校の解消をめざすこと。配置にあたっては学校事務の共同化・「兼務」を前提としないこと。
�┗浜椰Π�・栄養教諭は1校1名の配置をおこなうこと。
��学校図書館教育の充実をはかるため、専任司書教諭制度の確立をめざすこと。当面、専任・専門正規の学校図書館職員を原則として、全校に配置すること。
��「児童生徒支援加配」の配置にあたっては、実質的な「同和加配」の実態を直ちに是正すること。
��日本に在住するすべての国籍の子どもたちの教育を保障すること。とりわけ日本語以外のことばを母語とする子どもに、母語での教育を保障すること。また、日本語教育をはじめとした指導・援助の充実をはかるため、積極的に教職員を配置すること。
��LD児などを対象とする、特別支援教室(仮称)は、「きこえ・ことば教室」(通級)と別に各校に設置できるよう、年次的な教職員配置改善計画を策定すること。
��障害児学校のセンター的機能をすすめるにあたっては、在籍する子どもたちの学級や授業を担当する教員を減らさず、地域のセンター的な役割を果たすための教職員を別枠で配置すること。
��障害児学校の小中学部自立活動担当教員の配置基準の改善を実現すること。
��通常学級に在籍している「特別なニーズ」をもつ子どもたちに対して、教職員を新たに配置すること。
�亜崙段婿抉膓軌薀魁璽妊ぅ諭璽拭次廚蓮∧模箸把蠖�配置すること。
�姥酋反Π�を学校教育法・定数法など関連法規に位置づけるとともに、当面、現業職員や市町村採用の事務職員を地方交付税交付金の積算通り配置するよう指導すること。
�河�働安全衛生法で義務づけられている衛生管理者、衛生推進者の配置を定数法上位置づけること。
�劃蠖�内の臨時採用を解消し、正規採用をはかること。臨時教職員の労働条件を改善すること。
3 すべての子どもの学習権を保障するため、教育費父母負担の大幅軽減等をはかること
(1)高校定時制・通信制の教科書無償制度を復活すること。副教材も含め父母負担の軽減対策を講じること。
(2)義務教育費国庫負担法や地方財政法に照らして、学校における私費負担をなくす方向で是正すること。
(3)国立大学法人の授業料及び入学金の標準額の設定にあたっては、現行より負担増とならないようにするとともに、学部別格差授業料の導入を行わないこと。また、公立高校や私立学校の授業料などの値上げをしないように授業料補助など必要な対策を講ずること。
(4)学生支援機構の運営に際しては、奨学金制度を教育ローン化することなく、これまでの奨学金制度の理念や役割りを維持すること。
(5)就学援助金の一般財源化をやめ、国の責任による制度の拡充をすすめ、適正な単価の引上げ、対象児童・生徒の枠拡大、認定基準の抜本見直しをはかること。障害児に対する就学奨励費の削減をやめ、内容を拡充すること。
4 施設設備に関わる改善をはじめとした教育諸条件の充実
(1)障害児学校・学級の増設をはかること。マンモス養護学校の実態を国として把握し、改善の手だてをとること。
(2)学校給食民間委託化・センター化を推進する「合理化」通知を撤回し、直営・自校方式の普及につとめ、給食調理員を増やすこと。
(3)遅れている中学校完全給食の普及に力を入れ、100%の国産米による米飯給食・地場生産食品の採用をはじめ給食内容を改善するために、学校給食への補助制度を復活すること。
(4)乳幼児教育のレベルダウンにつながる「幼保一元化」をおこなわず、公立幼稚園の学級編成基準の改善、私立幼稚園への助成の増額をおこなうこと。
(5)児童・生徒数の減少にともなう幼稚園の休廃園や小・中学校、定時制・通信制高校の統廃合、高校の学科再編や学級数削減、盲・ろう学校や寄宿舎の統廃合などを一方的、強制的に実施しないこと。
(6)学校施設の整備にかかわる予算を増額すること。
�々纂法β琉藉曚梁竸鳴敢此�工事の進捗状況を把握し、推進のための予算を増額すること。
�∋劼匹發燭舛侶鮃�を守るため、保健室など必要度の高いところから空調設備の設置をすすめること。
�4躙院ο卦犢纂砲硫�築やトイレの改修をすすめるとともに、防火装置、体育施設・器具や遊具などの安全点検を実施し、不慮の事故が発生しないよう指導すること。
�ぃ裡丕佑砲茲觚�共施設の民間型経営ではなく、行政の公的責任を果たしていくこと。
(7)学校管理下における子どもの事故については、無過失責任制による学校災害補償法の制定をめざすとともに、日本スポーツ振興センターからの給付内容の改善に努め、障害に対しては年金的給付が可能となるよう検討すること。
(8)すべての学校における労働安全衛生体制確立を促進すること。法にもとづく職場環境の改善をはかること。厚労省通達にもとづき、教職員の長時間過密労働実態の、任命権者による把握を促進し、国として全国実態をまとめ、改善策をとること。
(9)僻地教育の就学援助の改善やスクールバス補助限度額の引上げとバス台数増など通学条件の整備・改善をおこなうとともに、教職員住宅の改善を行うこと。
5 憲法・教育基本法、子どもの権利条約の理念と原則にもとづく、子どもを大切にする教育行政をすすめること
(1)学習指導要領の押しつけをおこなわず、学習指導要領は大綱的基準とするとともに、その内容を抜本的に見直すこと。
(2)「教員免許更新制」の導入はおこなわないこと。
(3)「総合的な学習の時間」の内容や方法、指導計画の作成を押しつけないこと。
(4)教科の「評価規準・基準」を押しつける指導をおこなわないこと。
(5)「教育課程実施状況調査」を中止し、その内容と方法を抜本的に見直すこと。
(6)「教員の評価に関する調査研究」のための予算措置をおこなわないこと。
(7)「心のノート」の作成、配布、使用状況調査を中止すること。
(8)教科書検定制度を抜本的に見直すとともに、教科書採択制度の民主化をはかること。
(9)「奉仕活動・体験活動」の強制と評価の押しつけをおこなわないこと。
(10)「日の丸・君が代」の押しつけを中止し、「憲法に定めている思想及び良心の自由を侵害するものではない」という「国旗・国歌法」制定時の国会答弁を遵守すること。
(11)「学校運営協議会」設置を押しつけないこと。
(12)希望するすべての子どもが後期中等教育を受けられる施策を確立すること。
(13)完全学校5日制の実施にかかわって、子どもたちに地域での生活が豊かに保障されるよう、社会教育施設・設備の整備・拡充、人員増など必要な条件整備をすすめること。とりわけ、障害児については手厚い手だてをおこなうこと。
(14)登校拒否・不登校などの子どもたちの居場所づくりの民間のとりくみへの公的助成を拡充すること。
(15)障害児の障害の程度や発達段階にみあった就学指導と継続的相談活動をおこなうため、就学指導委員会(修学保障委員会)の全国各市区市町村での設置・充実を促進すること。
(16)初任者研修、10年次経験者研修、企業派遣研修を中止すること。
(17)長期休業中の研修が保障できるよう、条件整備をおこなうこと。
(18)主任制度を廃止し、主任手当の予算化をおこなわないこと。
(19)高等教育の積極的拡充で、受験競争の緩和をはかること。私立大学に対する補助金削減はおこなわず、経常費助成の抜本的拡充で、大学間格差を縮小、是正すること。
(20)スポーツ予算を大幅増額すること。「サッカーくじ」は中止すること。
(21)「人権教育」の名による「同和教育」の押しつけをおこなわないこと。また、地方教育行政に対しては、そうした押しつけをおこなわないよう指導すること。
6 2005年2月25日に提出した「全教2005年春闘要求書」にある要求の実現に努力し、教職員にゆとりと安心を保障し、教育に専念できるような賃金・勤務条件の改善や福利の向上をはかること 【添付ファイル】 ⇒要求書の(PDF4.12KB)のダウンロードはコチラ!
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