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【談話】2005/08/24 
『教職員配置等の在り方に関する調査研究協力者会議「今後の学級編制及び教職員配置について(中間報告)」について』

2005年 8月24日 全日本教職員組合 教文局長 山口 隆

 今後の教職員配置について検討していた「教職員配置等の在り方に関する調査研究協力者会議」(以下「調査研究協力者会議」は、8月24日、中教審義務教育部会に対して「今後の学級編制及び教職員配置について(中間報告)」(以下「中間報告」)をおこないました。
 
 全教は、2005年6月23日に「調査研究協力者会議」がおこなったヒアリングにおいても、父母・国民のみなさんと手をたずさえて16年間おこなってきた30人以下学級の実現を求める署名が、累計で3億4000万に達しており、30人以下学級実現が父母・国民の強い要求となっていること、これらが2005年度では45道府県において、何らかの形で少人数学級が実施されている大きな力となっていることなど、事実をあげて示し、国の責任における30人学級の実現を強く要望してきました。しかし、「中間報告」は、日本の教員1人あたりの児童生徒数について、OECD平均との格差や、この面でも世界最高水準にあるフィンランドの例をあげ、日本の教育条件が「未だ世界水準に達している状況にはない」ことを認めつつも、少人数学級実施にふみきらず、30人以下学級の実現を願う圧倒的な父母・国民の要求に背を向けるものとなっています。そして、従来どおりの「加配定数の改善を基本」として、「少人数教育」という方向を提起するとともに、これまでのとりくみとして「習熟度別学習」を評価しています。「習熟度別学習」によって、子どもを「できる子」「できない子」に分け隔てすることは、教育の機会均等にそむくばかりか、子どものすこやかな成長・発達の上で大きな障害をもたらすものであり、私たちは一貫して反対してきました。
 私たちは、「最終報告」においては、こうした方向ではなく、あらためて国の責任による30人以下学級の実施という方向での報告がなされるよう、強く求めるものです。
 
 「中間報告」は、この間の父母・国民、教職員の少人数学級実現を求める声を無視できず、大変矛盾に満ちたものとなっていることが特徴です。
 
 第1に、「これまでの取組みの評価」の項目では、「(少人数学級が)小学校低学年など学校生活に慣れ親しむ段階において効果的だ、とする意見も多い」とし、「少人数学級など都道府県の独自の判断による取組みが進んでおり、教育条件整備におけるナショナル・スタンダードの土台のうえにローカル・オプティマム(地域における最適の状態)を実現するという取組みが行われることは、特に評価されるべきものである。このような取組みは学校現場や保護者からも歓迎されている」と述べざるを得なくなっていることです。これは、間違いなくこれまでの少人数学級を求める父母・国民、教職員のとりくみの反映です。少人数学級が学校現場や保護者からも歓迎されているというのならば、これを「ローカル・オプティマム」にゆだねることなく、40人学級前提の教職員配置となっている「ナショナル・スタンダード」をこそ改善するべきです。ところが「中間報告」の「今後の取組み」の「基本的な考え方」においては、財政的理由をあげて「現時点での実現可能性は極めて低い」と、これを退けています。
 
 したがって第2に、これをごまかすために「学級編制の標準を全国一律に引き下げるという画一的な取組みではなく…柔軟な取組み」として「少人数教育」の充実という方向を示しています。学級編制基準の引き下げを「画一的」とすることは、まったくあたりません。これは、教育基本法第3条が定める教育の機会均等の保障であり、現に45道府県でおこなわれている少人数学級実施の実態をふまえ、国が責任をもって定めるべきものです。30人学級を「画一的」というのならば、現在の40人学級という編制も画一的であり、説明がつかないものです。
 
 第3は、そうはいいながらも「具体的方策」においては、「学習指導の改善」の項で、「小1プロブレム」として、小学校低学年においては、「生活集団と学習集団を一体として少人数化が効果的」として「35人学級などの少人数学級編制…が可能となる教職員配置とすべき」と述べており、矛盾としかいいようがありません。
 この矛盾を解決するためには、財政の論理を脱却し、教育の論理をしっかりと打ち立て、父母・国民の教育要求をしっかり受け止め、国の責任での30人学級実現をおこなうことです。最終報告に向けて再検討を求めるものです。
 
 「中間報告」のいまひとつの特徴は、現時点ではまだ明確になっていない部分を多く含んでいることです。たとえば「具体的方策」の「学級編制の仕組みの改善」の項では、「教職員定数について都道府県ごとの算定から市町村ごとの算定に改めることや、学校や市町村教育委員会の判断で学級編制が弾力的に実施できるようにする」と述べています。しかし、「市町村ごとの算定に改める」と言っても、その方式が不明確であり、やり方によれば、市町村ごとの格差が生まれることも危惧されます。また、「これまで例外的な措置とされていた40人を下回る学級編制が自由に選択できる制度」の検討が述べられていますが、これについても、まだ不明な部分が多く、これらについて、どのような方法によるのか、今後の動向を注視したいと考えます。
 
 「諸課題への対応」では、2つの問題があると考えます。1つは、国民の要求との関係で不十分であるという問題です。たとえば特別支援教育にかかわっては、「小・中学校においてはLD・ADHDの児童生徒について、新たに通級による指導の対象とする」「盲・聾・養護学校がセンター的機能を十分に発揮するため必要な教職員の配置を充実させる必要」「特別支援コーディネーターの役割を担う教職員の配置を可能とする」とは述べていますが、LD・ADHDなどの子どもたちに特別支援をおこなうためには、少なくとも各学校1名の教職員を配置する必要があり、その総数は3万5000人となります。その必要性に照らせば、きわめて不十分なものといわざるを得ません。
 2つは、文部科学省の政策に誘導される危険性があるという問題です。「総合的な学習の時間」をとりたてて、その指導に必要な教職員の配置について言及したり、「キャリア教育の充実」について述べられていますが、そのそれぞれについて、現場では、文部科学省の方針通りおこなうと問題があると厳しい批判があるものです。文部科学省の政策に誘導するような方向はとるべきではありません。
 
 また、教諭以外の職種についても言及されていますが、これにも重大な問題があります。たとえば、事務職員については、「学校運営協議会」や「学校評議員制度」「学校評価」の導入によって学校事務が複雑化すると述べられていますが、これらは、文部科学省や教育行政が学校に押しつけている施策を学校事務職員の職務として押しつけるものであり、「調査研究協力者会議」として言及してはならない問題です。さらに、「事務の共同処理」の推進が述べられていますが、これも学校事務職員の厳しい批判がある問題です。また、栄養教諭問題については述べられていますが、複数配置の強い要望がある養護教諭については「配置の充実」としか触れられておらずきわめて不十分です。最終報告段階で、これらについて改善されるよう、強く求めます。
 なお、小規模校に対する必要な加配措置や複式学級解消のための教職員配置についてまったく言及されていないことも大きな問題であり、最終報告にはきちんと盛り込まれるべきであると考えます。
 
 最後に、「中間報告」が、「その他必要な施策」として「教員評価」「教員免許更新制」「学校評価」などについて述べていることは重大です。述べられているそのいずれもが教育行政の教育に対する不当な支配にあたるものであり、私たちは教育基本法第10条に照らして、すでに、「教員免許更新制」導入反対、教育行政による「学校評価」「教職員評価」押しつけ反対の立場を明らかにしてきています。「調査研究協力者会議」は、教育条件整備に限定して議論や報告をおこなうべきであり、「中間報告」において、これらに言及することは厳に慎まなければなりません。最終報告での削除を求めます。




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