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【報告】2005/01/17 
『CEART第8回会議における報告に係る追加情報』【��/2】

2005年1月17日
教員の地位に関する勧告の適用に関する
ILO・ユネスコ共同専門家委員会 御中

CEART第8回会議における報告に係る追加情報



 
1.「CEART勧告」の反響と学習・普及のとりくみ
2.「CEART勧告」に対する文部科学省の対応
3.「指導力不足教員」制度問題における「CEART勧告」を活用したとりくみと今後の課題
 

4.新しい教員評価問題における「CEART勧告」を活用したとりくみと今後の課題

(4−1)すべての都道府県・指定都市教育委員会は、文部科学省の委嘱を受けて、能力・実績主義による公務員制度「改革」を想定した教職員評価制度の調査・研究を実施しています。しかし、各教育委員会は、教職員評価制度問題は「管理運営事項」であるとの見解に固執し、労使交渉の対象とはしていません。また、評価制度の意義や基本設計を検討するため、学識経験者、経営者、校長会代表、PTA代表などで構成される審議会が多く設けられていますが、長野県教育委員会の例を除いて、教職員組合代表の参加は認められていません。
 例えば、岡山県教育委員会の場合は、次のとおりです。
 岡山県高等学校教職員組合は、ILOに対して結社の自由に関する申立(ケースNO,2114)を行いました。これに応えてILOは2002年6月に、日本政府に対し、「公立学校の教員について団体協約による賃金・雇用条件の規定を目的とする自主的交渉のためのしくみの充分な発達及び利用を奨励促進するためにとりうる適切な措置をとることを要請」しました。
 しかしながら文部科学省は誠実に対応することなく、岡山県教育委員会も、「教員の能力や実績を適正に評価し、それを配置や研修、給与等の処遇に反映させる教員評価システム」の構築を目的として、「教員の評価に関する調査研究協議会」を発足させましたが、事前に教職員組合と連絡も協議も行いませんでした。
 
(4−2)私たち全教は、審議会などで意見表明の機会が用意された時は、教育の条理と子どもの実態を踏まえて意見を述べるとともに、「教員の地位勧告」(124項「給与決定を目的としたいかなる勤務評定制度も、関係教員団体との事前協議およびその承認なしに採用し、あるいは適用されてはならない」など)や『CEART勧告』を活用した陳述に努めてきました。
 また、評価制度の導入をめぐる労使協議においても、行政による評価結果で賃金・処遇に反映させることに反対であることを明確にしつつ、「教員の地位勧告」と「CEART勧告」を援用した主張を展開してきました。大阪府教育委員会は、「評価・育成システム」の導入にあたり、大阪教職員組合に対し「学校教育は、憲法及び教育基本法をはじめとする教育関係法令に基づいて行わなければならない。『教員の地位に関する勧告』は意義あるものと考えている。」と回答しました。
 
(4−3)「申し立て」において指摘したように、東京都教育委員会は、全国に先駆けて、人事考課制度による評価を賃金・処遇に反映させてきました。しかしながら、評価結果の「本人開示」は、「未だ教育職員が本制度の目的・趣旨を十分理解していない」「かえって制度全体に混乱を招くことになりかねない」などとして、規則の付則で実施を先延ばししてきました。また「異議申し立て」の制度もなく、「教員の地位勧告」64項「(1)教員の仕事を直接評価することが必要な場合には、その評価は客観的でなければならず、また、その評価は当該教員に知らされなければならない。(2)教員は、不当と思われる評価がなされた場合に、それに対して不服を申し立てる権利をもたなければならない。」は、まったく遵守されていませんでした。
 東京都は、教員だけでなくすべての職員に対し、評価による能力主義・業績主義の人事管理を推し進めており、制度の客観性・公平性・透明性・納得性を求める強い要望が都庁全体に広がっていました。このような背景を踏まえ、教職員組合も参加する東京都労働組合連合会(都労連)は、「本人開示や苦情処理システムの制度導入」をめざし、都当局と粘り強い協議を重ねてきましたが、「06年度から本人開示を全職員対象に拡大」と「評定結果に係わる苦情相談制度の04年度創設」との回答を得ました。苦情相談制度の労組関与、協議・検討の新たな場の設定も約束しており、評価制度の改善に向けた貴重な一歩として評価するとともに、本人開示、苦情処理の制度が真に実効あるものとなるよう、引き続きとりくみを強化するものです。
 さらに東京都教育委員会は、教員の自己申告制度において、校長と面接する際、後で書き直せるように「鉛筆書き」した自己申告書を持参するように求めていましたが、教員の自発性・自主性が損なわれるとの厳しい批判を受けて、「鉛筆書き」の条件を撤回しました。
 一方、岐阜教育委員会は、これまではすべての退職者に特別昇給を実施し退職金に反映させてきましたが、04年3月末の退職者において選別的な実施を強行しました。しかし、そのことを本人に明らかにせず、組合に対して、「経緯や概要についても、個々人の昇給しなかった事由についても説明できない。該当者への説明もしていない。対象人員等の実施状況も説明できない」と回答しています。このような不透明な運用と開き直りは、「教員の地位勧告」に対する挑戦と言えるものです。
 
(4−4)文部科学省は最近も、「義務教育改革プラン」などで、優秀教員を賃金・処遇で優遇することを強調しています。現在時点で、3分の1程度の都道府県教育委員会において、新しい評価制度の導入・試行が行われていますが、評価結果の賃金・処遇への反映については、東京都など一部に限られています。しかし、大部分が「教職員一人ひとりの実績や能力等が適正に評価され、それが処遇等に結びつけられことが肝要である」との見解を持っており、評価精度の向上、制度の定着をまって、賃金・処遇に反映させる方針であると考えられます。しかしながら全体として、評価結果の「本人開示」には消極的で、「苦情処理」も「今後の検討課題」にとどまっています。
 神奈川県では「観察指導記録」などの本人開示、また、大阪府教育委員会は、「評価育成シートの達成状況」の口頭開示に踏み出しました。しかし、制度の客観性・公平性・透明性・納得性を担保する水準のものであるかどうか、見極める必要があります。ある県における「教員評価制度調査研究会」の事務局原案は、「自己申告・評価シートは、教職員の資質向上と能力開発というねらいから開示する。開示は面談によることがのぞましい。総合評価は、あくまでも評価者の責任で公正に評価するものであり、人事管理上の必要もある。評価結果の開示は誤解や不信感につながり混乱をもたらす可能性があるし、また、それを避けるために総合評価が形骸化する可能性があるので開示しない」となっています。このように各都道府県教育委員会が教職員評価結果の「本人開示」に消極的乃至は否定的なのは、文部科学省が、「教員の地位勧告」「CEART勧告」を尊重する立場に立っていないからであると考えます。
 文部科学省は、「CEART勧告」が提起する原則を尊重することを表明し、その内容を全国の教育委員会に伝達するとともに、「CEART勧告」が求める原則を各都道府県・指定都市における評価制度の検討に生かすこと、そのために各地の教育委員会は当該教職員組合と交渉・協議するよう指示することを、全教は要求するものです。
 

5.「教員の地位勧告」の遵守に向けて、文部科学省への働きかけを強めて下さい

 
(5−1)私たちが申し立てたのは、単に文科省・教育委員会を批判するためだけではなく、少しでも「指導力不足教員」認定制度および新しい教職員評価制度の弊害を除去し、制度の是正・改善を図りたいと願ったからであり、初歩的で部分的なものであれ上述したような前進を評価するものです。そして、「教員の地位勧告」と「CEART勧告」が、「指導力不足教員」認定制度および新しい教員評価制度における客観性・公平性・透明性・納得性を確保するとりくみにおいて、指針となり、力となっていることを確認するものです。
 しかしながら、全体としてみれば、日本における「指導力不足教員」制度および新しい教職員評価制度は、「教員の地位勧告」が期待する水準には到達していません。「CEART勧告」も生かされていません。
 
(5−2)その原因はどこにあるのでしょうか。
 全教は、「CEART勧告」における、「共同専門家委員会は現時点で詳細な事実関係に関する争いの解決を図ることを提起しない。むしろまず(「教員の地位」)勧告の原則に関する重要な問題をとりあげて共同専門家委員会は検討したい。この勧告の原則に関する問題の解決は将来的には個別事例の解決にも役立つべきものである」(13項)との指摘を想起するものです。
 しかしながら文部科学省は、「法的拘束力がない」との理由で「CEART勧告」を尊重する立場に立とうとはしていません。文部科学省が、「教員の地位勧告」を尊重し具体化する姿勢に転換すれば、各都道府県教育委員会に好影響を与え、「教員の地位勧告」の原則と基準で両制度が見直され、個別の問題も解決に向かうことは明らかです。
 
(5−4)全教は、「CEART勧告」の中で、「ILO及びユネスコからの専門的な助言」に言及されていることに留意しています。引き続き情報提供を行いますので、助言を求めるとともに、当面、次の事項で文部科学省への働きかけを強めてくださるよう、要請します。
 
� 峩軌�の地位勧告」「CEART勧告」を尊重し、「指導力不足教員」制度並びに新しい教職員評価制度のあり方を見直すこと。
�◆峩軌�の地位勧告」「CEART勧告」を、全国すべての教育委員会に通知し、趣旨を徹底すること。
�A感気箸侶�設的な交渉・協議を行うこと。
�ぁ孱達釘腺劭坿�告」が各地の教育委員会においても尊重されるべきことを起きらかにし、各地で関係する教職員組合との建設的な交渉・協議がもたれること。
 
以上
 
 

【文部科学省に対する要請事項】
 
1.ILOユネスコ「教員の地位に関する勧告」(1966年、1997年)を尊重して、教育行政をすすめること。
 
2.今回の『共同専門家委員会』(CEART)報告』にもとづき、「指導力不足教員」政策と新しい教員評価制度の導入に関して、誠実で意味のある交渉・協議の場を設けること。
 
3.『共同専門家委員会』に提出された、文部科学省の見解(03年6月)を明らかにすること。
 
4.「指導力不足教員」制度に係る文部科学省の「事務次官通知」(「地方教育行政の組織及び運営に関する法律の一部を改正する法律の施行について(通知)」、2001年8月29日)を見直し、次の補強を行うこと。
� 惷軌�の地位勧告』が求める水準の「適正手続き」(本人の意見表明、苦情処理など)を明確に位置付けること。
�◆峪愼確鷲埖�教員」の認定・解除などの措置を検討する判定機関に、現場の教職員の代表を参加させること。
 
5.「新たな教員評価制度の導入と実施」に関して、「共同専門家委員会」が「『勧告』に抵触している」と指摘した次の事項の是正を図ること。
(a)「勧告」が予定している教員団体との十分な協議の過程を欠いていた。
(b)重大な影響をもたらす主観的評価が行われることが明らかである。
(c)教員は行われた評価の詳細とその根拠を知る権利を与えられていない。
(d)教員評価の過程に公開性と透明性が欠如していること、また評価の基準と実
施方法に関してはともかく、評価自体に関する審査または不服申し立ての明確な権利がまったく存在しないことは明らかである。




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