【談話】2005/10/19
『国民的な運動で義務教育費国庫負担制度の維持・拡充に全力をあげよう―中央教育審議会義務教育特別部会の答申案について―』
2005年10月19日 全日本教職員組合 書記長 東森 英男
中央教育審議会義務教育特別部会は10月18日、答申案「新しい時代の義務教育を創造する」をまとめました。
答申案では、最大の問題である義務教育費国庫負担制度について、「現行の負担率2分の1の国庫負担制度は優れた保障方法であり、今後も維持されるべきである」としました。
これは、「三位一体の改革」の名で、国の補助負担金の削減と一般財源化の対象に義務教育国庫負担金を含めようとする小泉内閣に対して、新たな自治体意見書のひろがりにも示された、教育権の保障を求める国民の強い要求の反映であり、私たち全教をはじめとするこの間の運動の成果です。
今後、10月26日の中教審総会で予定されている答申をふまえて、政府と地方6団体の協議などがすすめられる予定ですが、最終的には政治的な決着によることが予想され、義務教育国庫負担金の扱いと制度の存廃はこれからが正念場です。
小泉首相は特別国会の施政方針演説で、「地方にできることは地方に」と「3兆円規模をめざした税源移譲」を強調しており、この中に義務教育費国庫負担金を含める立場です。事態の帰趨は、小泉内閣にたいして、国民の要求と中教審答申の尊重を求めるたたかいの発展いかんにかかっています。
私たちは、義務教育費国庫負担制度の縮小・廃止を許さず、維持・拡充をはかるため、全国の職場からの首相宛ジャンボハガキを結集した11.16中央行動・中央集会の成功とともに、ゆきとどいた教育を求める全国3000万署名の推進と11.25署名集約集会の成功などにむけて全力を尽くす決意です。
同時に、中教審答申案は、憲法と教育基本法にそむく重大な問題をはらんでいます。
第1は、国庫負担金の「総額裁量制」です。答申は、「資質能力を備えた教職員を安定的に確保できるか否か、教職員が安心して職務に従事できる環境にあるか否か、教職員を尊敬する社会であるか否かは、教育の成否の鍵を握る問題である」と述べながら、教職員給与の「実員・実額」保障を転換して非常勤講師の多用などに道を開く「総額裁量制」拡大の方向を提起していることは重大な矛盾です。
第2は、「各論」で提起されている諸施策についてです。「各論」では、「全国的な学力テストの実施」をはじめとする競争の教育の推進、「教員免許更新制」による教職員に対する管理支配のいっそうの強化など、財界が求める小泉「構造改革」に重なる「改革施策」が打ち出されています。
中教審が、義務教育費国庫負担制度の維持と「引き換え」に、憲法と教育基本法に反する諸施策の推進をはかろうとするのであれば、義務教育費国庫負担制度の存続を「憲法の要請」としている立場と著しく矛盾するものであり、姿勢の一貫性を疑わしめるものです。
私たちは、当面する義務教育費国庫負担制度の維持・拡充にむけて、この課題で一致するあらゆる人々と手を携えて、小泉内閣に対する緊急行動など国民的な運動をすすめるとともに、憲法・教育基本法の改悪を許さず、守り生かす教育を実現するために全力をあげるものです。
▲ページトップへ
|