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【要請】2004/01/26 
『ILO・ユネスコ「教員の地位勧告」共同専門家委員会の「勧告」を踏まえ、文科省に誠意ある協議・交渉を求める』

全教は、文科省に「ILО・ユネスコ『教員の地位勧告』共同専門家委員会の「勧告」を踏まえ、文科省に誠意ある協議・交渉を求める」申し入れをおこないました。
 


ILO・ユネスコ「教員の地位勧告」共同専門家委員会の「勧告」を踏まえ、文科省に誠意ある協議・交渉を求める

 
2004年 1月26日
全日本教職員組合 中央執行委員会
 
1.全日本教職員組合(全教)は2002年6月28日に、文部科学省が推し進めている「指導力不足教員」政策と新しい教員評価制度の導入において、ILO・ユネスコ『教員の地位に関する勧告』(1966年制定)が遵守されていないことを問題として、『勧告』の適用を監視し促進する機構である「共同専門家委員会」(CEART)に対し「申し立て」(ALLEGATION)を行いました。
 
 「申し立て」は受理され、文部科学省からの見解(03年3月と6月)、全教の再反論(03年4月)などに基づき、共同専門家委員会の作業グループが検討を行い、第8回会議(パリで開催、03年9月15〜19日)で審議されました。その『CEARTレポート』が、ILO理事会(03年11月に開催)で承認され、ILO事務局長に対して、「日本の政府と教員組織に対して、関連する部分を伝達し、報告の勧告にしたがって、必要とされる適切な事後措置(フォローアップ)をとることを要請する権限を付与」しました。
 
 これを受けて、昨年の12月5日付で、ILO産業別活動局クレオパトラ・ドウンビア・ヘンリー局長から、「私は、共同委員会から勧告されたように、勧告に示された問題に関する進展と、解決にむけた処置について、常に共同委員会に情報提供するように求めたことに関して、あなたの組織が十分に注意を傾けることを最大限に心から期待いたします」との、添書とともに『CEARTレポート』が郵送されてきました。文部科学省にも、届けられているはずです。
 
 
2.『CEARTレポート』は、文部科学省の教員評価による差別的な賃金・人事管理において、『教員の地位勧告』が遵守されていないという全教の「申し立て」を全体として明快に認定する、日本の教育にとって歴史的かつ画期的な勧告となっています。
 
(1)『CEARTレポート』は、導入に際して交渉・協議が行われなかったと全教が主張している点に関し、「『勧告』が予定しているようには協議が行われなかったという申立ては妥当であるというのが共同専門家委員会の結論である」「1966年『勧告』は管理当局が評価を行うことを否定していないが、教員団体はどのように評価を行い、評価結果をどう用いるかを確定するのに関与すべきものである。2つの制度の導入と現実の運用に上に引用した『勧告』の諸条項がまさしく適用されるものであることについては、まったく疑いの余地がない」(12項)と明確に認めました。
 
(2)指導力不足教員問題について、『CEARTレポート』は、指導力不足教員を認定する際の「適正手続き(デュープロセス)が十分であるとは言えない」ことなどに「注目」(16項)し、「文部科学省が叙述するような現行制度では『勧告』の水準を到底満たし得ないと考える」
(18項)と判断しています。
 
 そして、「指導力不足教員の判定と措置に関する制度が『勧告』の諸規定に合致するよう再検討されるべきことを強く勧告する。共同専門家委員会は、これらのことは地方行政の管理運営事項であり、『勧告』の適用対象外であるという主張を認めることはできない」(20項)と文科省の言い分を退けています。
 
(3)新教員評価問題については、「共同専門家委員会が知りうる範囲において、過去に実施された多くの勤務評定制度は公正かつ有効に運用されず、結局は廃止されている」と注目に値する報告を行い、「成功の鍵は真に客観的な基準をきわめて慎重に定義することと、誰から見ても透明性の高い公正な運用制度を確立することにある。適切な構成員からなる独立した機関に審査を請求し、不服を申し立てることのできる実効的権利など、恣意に対する適切な防禦の保障はその一部である」(22項)と指摘しています。
 
 
3.共同専門家委員会は「善意と適切な対話をもって、主要な『勧告』不遵守の問題が解決されるならば、他の点についての争いも緩和され、全教と関係する行政機関との関係の残念な悪化と思われる問題も回復されうる」(32項)との意見で、ILO理事会とユネスコ執行機関に対し、「検討結果を日本政府及び全教に伝え、『勧告』が遵守されていない領域について建設的な対応を行うために対話を行うことを双方に要求すること」(33項)を勧告しています。
 
 私たちの「申し立て」の動機は、単に文科省を批判することではなく、国際基準となっている『勧告』にそった客観性・公平性・透明性を備えた教職員人事制度を実現することにあり、この立場から『CEARTレポート』を心から支持し、歓迎するものです。
 
 『CEARTレポート』は、問題が解決しない場合に、「適切な事実調査団の派遣」(7項)「専門的な助言」(32項)などを考慮すると言及しています。しかし、文部科学省は、「共同専門家委員会」に提出された先の見解において、指導力不足教員問題、新しい教員の評価制度の双方について、「改善を可能な限り公正かつ透明性の高いものにするため、あらゆる努力を惜しまないものであることを表明したい」としています。したがって、これを契機に文部科学省と全教が、誠実で意味のある協議・交渉を行えば、ILO・ユネスコの力を借りなくとも、自主的に解決できると考えます。
 
 早速全教は文科省に対し、誠意ある交渉・協議を申し入れ(要求内容は別記)、「指導力不足教員」政策や教員評価制度について、『教員の地位勧告』と『CEARTレポート』を尺度として、制度と運用上の改善を図るために力を尽くします。そして、これらのとりくみと成果を、CEARTの要請に応え「情報提供」することにしています。
 
 
4.文科省は、「指導力不足教員」制度の導入に続き、2006年度からの能力・業績主義による公務員制度「改革」に向けて、「教員評価の調査研究」をすべての都道府県の教育委員会に委嘱しました。このような評価に応じた賃金・人事制度は、教員の「専門性」や「地位」を危うくさせており、教員の専門職性を謳った『教員の地位勧告』の役割は、これまで以上に増大しています。
 
 もちろん、『教員の地位勧告』と『CEARTレポート』には、法的拘束力はありません。これを生かすのは、日本における私たちのとりくみです。全教は2月6日(東京)と7日(大阪)に、教員評価制度を導入しているイギリスの教育学者を招いた学習会を開催、これを皮切りに『教員の地位勧告』と『CEARTレポート』の内容と意義の学習運動を繰り広げます。そして、全国3000余の全ての教育委員会に『CEARTレポート』を届け、協議・懇談を申し入れるとともに、父母・国民へ広く普及に努め、国際基準に則った「開かれた公正な教育行政」の推進をめざして奮闘するものです。
 
【文部科学省に対する要請事項】 
 
1.ILO・ユネスコ「教員の地位に関する勧告」(1966年、1997年)を尊重して、教育行政をすすめること。
 
2.今回の『共同専門家委員会』(CEART)報告』にもとづき、「指導力不足教員」政策と新しい教員評価制度の導入に関して、誠実で意味のある交渉・協議の場を設けること。
 
3.『共同専門家委員会』に提出された、文部科学省の見解(03年6月)を明らかにすること。
 
4.「指導力不足教員」制度に係る文部科学省の「事務次官通知」(「地方教育行政の組織及び運営に関する法律の一部を改正する法律の施行について(通知)」、2001年8月29日)を見直し、次の補強を行うこと。
� 惷軌�の地位勧告』が求める水準の「適正手続き」(本人の意見表明、苦情処理など)を明確に位置付けること。
�◆峪愼確鷲埖�教員」の認定・解除などの措置を検討する判定機関に、現場の教職員の代表を参加させること。
 
5.「新たな教員評価制度の導入と実施」に関して、「共同専門家委員会」が「『勧告』に抵触している」と指摘した次の事項の是正を図ること。
(a)「勧告」が予定している教員団体との十分な協議の過程を欠いていた。
(b)重大な影響をもたらす主観的評価が行われることが明らかである。
(c)教員は行われた評価の詳細とその根拠を知る権利を与えられていない。
(d)教員評価の過程に公開性と透明性が欠如していること、また評価の基準と実施方法に関してはともかく、評価自体に関する審査または不服申し立ての明確な権利がまったく存在しないことは明らかである。                 
 
以 上





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