【談話】2002/11/07
『ILO・ユネスコ『教員の地位勧告』共同専門家委員会の全教「申し立て」受理について』
全教は、全教が6月28日に行っていたILO・ユネスコ「教員の地位に関する勧告」が遵守されていないとした申立てをILO・ユネスコ「共同専門化委員会」が正式に受理したことについて、談話を発表しました。
2002年11月 7日 全日本教職員組合 中央執行副委員長 新堰 義昭
1.全日本教職員組合(執行委員長松村忠臣)は6月28日、ILO東京支局駐日代表堀内光子氏に面会し、文部科学省が推し進めている「指導力不足教員」政策と新しい教員勤務評価制度の導入において、ILO・ユネスコ『教員の地位に関する勧告』が遵守されていないとして、ILO・ユネスコに対し「申し立て」(アリゲーション)を行いました。日本の教職員組合の本格的な申し立ては、これがはじめてのことです。
全教の「申し立て」の趣旨は、次の通りです。
「指導力不足教員」政策や新しい勤務評価(人事考課制度)の導入は、子どもと教育、教職員に歪みをもたらす重大な制度変更であり、労働条件と深くかかわっています。しかし文部科学省・教育委員会は、「管理運営事項である」として、教職員組合との交渉を拒否しています。『教員の地位勧告』9項では「教員団体は、教育の進歩に大きく貢献しうるものであり、したがって教育政策の決定に関与すべき勢力として認められなければならない」、124項では「給与決定を目的としたいかなる勤務評定制度も、関係教員団体との事前協議およびその承認なしに採用し、あるいは適用されてはならない」と規定されており、この点で『勧告』が遵守されていません。
また、これらの制度の仕組みは、本人への説明や不服申し立て権が制度化されておらず、プロセスがきわめて不透明で、客観的で公正な評価・運用ができる内容となっていません。この点でも、『勧告』「64項(1)教員の仕事を直接評価することが必要な場合には、その評価は客観的でなければならず、また、その評価は当該教員に知らされなければならない。(2)教員は不当と思われる評価がなされた場合に、それに対して不服を申し立てる権利をもたなければならない」、46項「教員は、その専門職として身分またはキャリアに影響する専断的な行為から十分に保護されなければならない」などの諸条項が非遵守となっています。
そこで、日本における、客観性、公平性、透明性が欠如した、競争的な教職員賃金・人事政策の是正をめざし、『勧告』の適用を監視し促進するために設置されたILO・ユネスコ「共同専門家委員会」に申し立てを行いました。
2.そして、ILO・ユネスコへ要請団(団長松村委員長、25名で構成)を派遣し、9月25日にはILO、27日にはユネスコ本部を訪問、� 嵜修稽�て」内容について、学校での子どもと教育への影響を踏まえ、『教員の地位勧告』に基づき、慎重で十分な検討をすること、�■横娃娃廓�秋開催予定の「共同専門家委員会」で審議することを要請しました。
その際、ILO側より、「申し立てを受理するには、3基準(�。僑暁�、97年『勧告』のいずれかに該当している、��国際的な教職員組合か全国的な教職員組合からの申し出、��ILOの他の所掌事務ではない)があり、すべてクリアする必要がある。現在、全教の申し立ての扱いを関係部門と検討している。近日中に結論が出る」との回答がありました。
また、ユネスコ側は、『勧告』が遵守されていない具体的実態を訴えたことに対し、「こんな機会ははじめて。みなさんの心配は、ユネスコも共有。競争の教育は日本だけでなく、各国共通。どんなに技術が発達しても、教育における教師の役割は、車の両輪の一つ。たいへん困難な仕事をしておられることをよく理解している」と感想を述べ、日本の教職員の深刻な多忙とストレスに強い関心を示しました。
3.11月6日、ILO分野別活動局次長クレオパトラ・ドゥーミア‐アンリ女史より、ILO・ユネスコ「共同専門家委員会」の書記局を代表して、全日本教職員組合中央執行委員長松村忠臣あてに、「申し立て」を正式に受理したとの連絡がありました。
ILO・ユネスコは、今後の手続きについて、次のように説明しています。
� 〆邏肇哀襦璽廚蓮�必要なら、教職員組合に追加情報の提出を求める。
�◆/修稽�て内容を政府に提出する。
�� 政府の返事を受け取ると、教職員組合に戻す。(政府が合理的な期間(2ヶ月程度)に返事がない時は、次の方法を考慮する)
�ぁ〆邏肇哀襦璽廚�ら、共同専門家委員会(ILO側6人、ユネスコ6人の計12人)に手渡される。特別な場合は、調査団を派遣することもある。
�ァ。横娃娃廓�秋の審議となり、ILO理事会(2003年11月)、ユネスコ執行委員会(2003年9、10月)で確認される予定。内部の情報交換などの方法で、短縮する可能性もある。結論は、報告書で出版され、またウェブサイトにのる。
4.『教員の地位勧告』には法的拘束力はありませんが、「共同専門家委員会」は『勧告』の適用を監視し促進する、国際機関の中でも唯一の機構とされています。ILO・ユネスコの公式パンフは「条約と違って、勧告は、各国が批准したり署名したりすることを条件としていません。しかしながら、ILOとユネスコ加盟各国は、その勧告に賛成票を投じたり、承認したりしていようといまいと、その条項を熟知していなければならず、ILOとユネスコにより、それぞれの国での適用が求められています。ですから、勧告は、強い説得的効果をもっています。」と述べています。
そして、要請の際、ILO側は「行程が長いので、イライラするかもしれないが、制約があるので理解してもらいたい。法的拘束力がないので、注意深く、綿密に、様々な調査をする」と付け加えました。
5.『勧告』75項は「教員がその責任を果たすことができるようにするため、当局は教育政策、学校機構および教育事業の新しい発展の問題について教員団体と協議するための承認された手段を確立し、かつ、定期的にこれを運用しなければならない」と規定していますが、文部科学省、教育委員会は、「管理運営事項」と称して、教職員組合との交渉・協議を忌避する傾向があります。その結果、国立教育政策研究所の調査でも、97%の教職員が文科省が進める「教育改革」について、「もっと学校の現実を踏まえた改革にしてほしい」と不満を表明しています。
今回、全教の「申し立て」が受理されたことにより、「指導力不足教員」や新勤評問題で、文科省と対等な論争が保障され、しかも、父母・国民に開かれた環境で、『勧告』をガイドラインに「協議」できる可能性が切り開かれました。要請団に対し、ILO側は、「私たちは政府を告発するよりも、政府側と組合側と両方が満足できるような解決案にもっていきたいというのが第一の望みであります」の回答しました。私たちの目的も、文科省を非難・告発することではなく、国際基準となっている『勧告』にそった客観性・公平性・透明性を備えた教職員人事政策を実現することにあります。そのために、今回の「申し立て」を積極的に活用することにしています。また、これを契機に、教育基本法を守り生かす立場から、この理念・原則につながる『教員の地位勧告』の普及・学習を組織の内外で強化することを呼びかけるものです。
以上
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