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【見解】2006/01/16 
『「指導力不足教員」政策と新教職員評価問題に関して、ILO・ユネスコが、再度、文科省の政策転換を求める――CEARTの『中間報告』について――』

2006年 1月16日 全日本教職員組合 中央執行委員会

 
1.ILO事務局から全教へ2006年1月10日付の手紙が届き、第294回ILO理事会(05年11月 3日〜18日)において、全教の「申し立て」(ALLEGEATION)に関する、ILO・ユネスコ共同専門家委員会(CEART)の『中間報告』が了承されたことが明らかになりました。ILOは2003年12月に、文部科学省が推進している「指導力不足教員」政策や新しい教職員評価制度において「教員の地位の勧告」(1966年制定)が遵守されていない、と是正を求める勧告を行いました。今回の『中間報告』は、勧告で求められた「追加情報」を踏まえてまとめられたものです。05年12月の全教からの要請に対してILOの事務担当者は、本年9月に再度の勧告が予定されていると説明しています。
 
2.CEARTは3年に1回開催されており、次回の第9回CEARTは、06年9月に予定されています。先の03年CEART勧告では、「日本政府及び全教に対し、これらの諸問題の今後の展開についての情報を共同専門家委員会に常に提供するよう要求すること。これらの情報は定められた手続きにしたがい適切な時期に検討されることとなるだろう」と述べ、06年の定例会議の前に必要とされる検討がなされることを示唆していました。
 今回の『中間報告』は、「ILO・ユネスコ勧告の諸条項が遵守されていないとする教員団体提出の申し立てにタイムリーに対応するための短期間の手続きを可能にする」規定の改定に基づくことが指摘されています。したがって、CEARTの問題解決に向けた積極的な姿勢にこたえた迅速な是正が、文部科学省に求められています。
 
3.『中間報告』における「検討結果」の概要は次の通りです。
 第1に、CEARTは、日本政府・文部科学省が、「指導力不足教員」政策や新しい教職員評価制度は「管理運営事項であり、勧告の適用対象外であるとするスタンスをとりつづけていることに留意」した上で、「そのような主張を受け入れることはできない」「(教員の地位)勧告の諸条項は、きわめて明快、明白なものである」と疑問の余地がないことを強調しています。
 第2に、CEARTは、先の勧告内容について「法的権利についての細かい問題に対するものではなく、教員に関して認められている国際基準を遵守することが望ましいことと、教育制度の発展には効果的で適切な対話が重要であることに注意を促したものであることを、再度力説する」と述べています。すなわち、この事案は事実関係の争いではなく、「勧告の原則に関する問題」であり、日本政府・文部科学省がこのことを理解していないと指摘しているのです。
 第3に、CEARTは、「最新の政府回答が、勤務評定制度の策定と実施に関する実質的な問題のほとんどが未解決のまま残されている、という全教の主張にこたえたものになっていないことに留意する」と、日本政府・文部科学省が必要な改善を措置していないことを認定しています。
 第4に、CEARTは、「県レベルで問題を解決するのに若干の小さな進捗がみられてはいるが、まだまだ多くのことがそのままにされているのは明白である」とした上で、「両当事者が協同の精神で協議するというプロセスに向って歩み寄るという見地」で、「すべての教員に対する適切な手続きや方法が一貫した方法で採用され、適用される手段についてのガイダンスの提供に文科省が関与することが、このプロセスを容易ならしめることは間違いない」と指摘し、文部科学省が「地方分権」を理由に逃避するのではなく、主導的に問題の解決を図るよう要請しています。
 第5に、「教員の地位勧告」の第49項「教員団体は、懲戒問題を扱う機関の設置にあたっては、協議にあずからなければならい」、第124項「給与決定を目的としたいかなる勤務評定制度も、関係教員団体との事前協議およびその承認なしに採用し、あるいは適用されてはならない」に言及し、「関連する行政上のプロセスにおいて、また評価結果を処理するための方法をも策定することに、教員団体が関与させられるべきことを意図したものであると考える」と指摘し、「現在まで、そのようなことは、ごく限られた程度しか行われていないように見える」と認定しています。
 
4.今回の『中間報告』の特徴は次の3点です。
 結論として、「検討結果を日本政府と全教に知らせ、第8回共同委員会報告で指摘された諸問題を処理し解決することをめざして、双方が全国的なレベルと特に県レベルで、これまでに誠実に継続的にとりくまれているような適切な対話をさらにすすめるよう」勧告しました。
 前回の勧告との違いの第1は、ゼロからの出発ではない、ということです。全教は、「追加情報」で、文部科学省がCEART勧告を積極的に受け止め尊重する立場に立っていないことを率直に批判するとともに、一部教育委員会における、部分的初歩的レベルの制度改善であっても、把握できる限りすべて報告しました。CEARTは、このことを評価し、「これまでに誠実に継続的にとりくまれているような適切な対話をさらにすすめるよう」勧告しました。全教はすでに表明したとおり、文科省と誠実で意味のある協議・交渉を行えば、ILO・ユネスコの力を借りなくとも、自主的に解決できると考えており、引き続き粘り強くとりくむものです。
 第2は、『中間報告』は「双方が全国的なレベルと特に県レベルで」と表現しており、文科省だけではなく、直接、地方教育委員会に勧告していることです。これまで文科省は、「(新しい評価制度、指導力不足教員制度は)各県の判断でやっているのであり、勧告はもともと地方に向けてのものではない」との見解をとっており、一部の教育委員会は、ILO・ユネスコ勧告は、日本政府が対象であり拘束されない、と対応してきました。しかし、今回の『中間報告』は、都道府県教育委員会に「管理運営事項」として協議・交渉を拒むべきではないと勧告した点は、高く評価することができます。
 第3に、文科省の積極的なイニシアティブを期待していることです。『中間報告』は「実際、指導力不足の定義や評価制度の適用において、県ごとに相当のバラツキがあり、平等な取り扱い上、問題をおこしているので、文科省は、すべての県教育委員会が共同委員会の勧告を効果的に適用できるような措置をとるべきである」「日本のような地方分権制度のもとでは、しかるべき行政手続きや方法が実際に策定され、実施されているレベルで、そのようなプロセスが行われることが必要である。すべての教員に対する適切な手続きや方法が一貫した方法で採用され、適用される手段についてのガイダンスの提供に文科省が関与することが、このプロセスを容易ならしめることは間違いない」と明確に断言しています。
 
5.今回の『中間報告』は文科省の「追加情報」を踏まえたものであり、ILOの委員会(LILS:法的問題と国際労働基準に関する委員会)において日本政府が「異議」をとなえたにもかかわらず了承されたものです。文科省が従来の立場を転換すれば、『中間報告』が「ガイダンスの提供に文科省が関与することが、このプロセスを容易ならしめることは間違いない」と指摘しているとおり、各都道府県教育委員会に好影響を与え、「教員の地位勧告」の原則と基準で「指導力不足教員」制度および新しい教職員評価制度が見直され、問題の解決に向かうことは明らかです。文科省がすでにCEARTに提出した見解の中で、「改善を可能な限り公正かつ透明性の高いものにするため、あらゆる努力を惜しまない」と表明したことを自らの姿勢として貫くべきです。
 
6.全教は文部科学省に対し、あらためて、次の要求を掲げ、とりくみを強化するものです。同時に、各構成組織においても、各都道府県教育委員会にむけた運動をさらにすすめるものです。
�。達釘腺劭坿�告に基づき、「教員の地位に関する勧告」(1966年、1997年)を尊重して、教育行政をすすめること。
�■娃廓�CEART勧告、05年『中間報告』の内容を、すべての教育委員会に伝えること。
��「指導力不足教員」制度に係る文部科学省の「事務次官通知」(「地方教育行政の組織及び運営に関する法律の一部を改正する法律の施行について(通知)」、2001年8月29日)を見直し改善するため、誠実で意味のある交渉・協議の場を設けること。
�ぁ嵜靴燭紛軌�評価制度の導入と実施」に関して、「教員の地位に関する勧告」が求める水準の客観性、透明性、公正を確保するため、誠実で意味のある交渉・協議の場を設けること。
 
 
以上




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