【アピール】2006/05/16
『教育基本法「改正」法案廃案のために、すべての職場、地域から、力をあわせてとりくもう―何よりも子どもたちのすこやかな成長のために―』
2006年 5月16日 全日本教職員組合 中央執行委員長 石元 巌
教育基本法「改正」法案が、本日審議入りしました。政府は法案を6月18日までの会期内に成立させようとしています。「教育の憲法」と言われる大切な法律を短期間の審議でおしとおすことは、断じてゆるされません。
子どもたちのすこやかな成長と、わが国の平和と民主主義、人権を大切にしようと願うすべての教職員、父母・国民のみなさん。教育基本法「改正」法案を廃案にするため、力をあわせようではありませんか。
教育基本法「改正」のねらいは、第1に「戦争する国」の人づくりであり、第2に、国家による教育支配にあります。子どもたちを苦しめ、輝かせるべきその未来を暗い影でおおってしまう、よこしまなたくらみを絶対にゆるすことはできません。
教育基本法「改正」の背景に、憲法9条を改悪して日本を海外でアメリカといっしょに「戦争する国」に変えてしまおうという重大な動きがあります。憲法改悪をゆるさぬとりくみと固くむすんで、教育基本法「改正」案を、なんとしても廃案に追い込みましょう。
教育基本法「改正」には決定的な二つの弱点があります。そのひとつは、「改正」案の内容が重大な憲法違反となっていることです。「愛国心」を法律で決めておしつけることは、憲法第19条の思想・信条・良心の自由の侵害です。教育を国民の手からとりあげることは、国民の教育権を定めた憲法第26条違反です。憲法違反の法律は、その存在自体許されるものではありません。
もうひとつは、「改正」の大義が示せないということです。教育基本法「改正」を言う人たちが「ライブドア事件は教育基本法のせい」「耐震偽装事件は教育基本法のせい」「ニートが増えたのは教育基本法のせい」などと理屈にならない理屈をならべたてるのは、「改正」に大義がなく、国民に説明がつかない姿そのものです。
この重大な問題を広く国民のみなさんに知らせるならば、必ず教育基本法「改正」法案を廃案に追い込むことができます。全力をあげようではありませんか。
教育基本法は、かつて日本が引き起こした侵略戦争によってアジアで2000万人、日本で310万人の人々が犠牲になったことへの痛切な反省のもとに、憲法と一体につくられました。私の出身地、高知県の先輩教師である竹本源治は、朝鮮戦争勃発の時、『戦死せる教え児よ』で「逝いて還らぬ教え児よ/私の手は血まみれだ!/君を縊ったその綱の/端を私も持っていた/しかも人の子の師の名において/嗚呼!/慚愧 悔恨 懺悔を重ねても/それが何の償いになろう/逝ったきみはもう還らない/今ぞ私は汚濁の手をすすぎ/涙をはらって君の墓標に誓う/「繰り返さぬぞ絶対に!」と多くの教職員の気持ちを詩に表しました。
終戦直後に生まれた私には、「トシ」という亡くなった兄がいました。父は、死の直前「トシに悪い」といって死にました。17歳で志願をして出征することを許し、戦死させた責任を20年たって自らが死に面した時、詫びたのです。今年99歳を迎えた母が「あの先生が勧めなかったらトシも志願しなかったのに」と言いました。実に60年を経て白寿を迎えた今も、母は悔恨の念に苛まれているのです。
私自身のこの経験に照らしても、人をこれだけ長きにわたって苦しめ続ける戦争と、戦争につらなる教育基本法「改正」は絶対に許せません。
すべての教職員、父母・国民のみなさん。子どもたちのために、今こそ立ちあがりましょう。
教職員のみなさん。まず職場で組合所属の違いをこえて、集まり、話し合いましょう。そして、今すぐ、宣伝に、署名にとりくみましょう。
すべての父母のみなさん。父母と教職員はお互いに、子どもを真ん中にした最大最強のパートナーです。今こそ、子どもたちのすこやかな成長のために、力をあわせましょう。
すべての国民のみなさん。教育はもっとも重要な国民的課題のひとつであり、日本の未来に直結する大事な問題です。「改正」法案を廃案に追い込むカギは、国民の世論と運動です。大いに共同を広げ、力をあわせようではありませんか。
全教は、すべての教職員、父母・国民のみなさんと力をあわせ、教育基本法「改正」法案の廃案をめざし、全力をあげるものです。
▲ページトップへ
|