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【意見】2006/09/13 
『教職員給与の在り方に関するワーキンググループに対する意見』

2006年 9月13日 全日本教職員組合

○「教員勤務実態調査」について

 言うまでもなく、給与は勤務に対する対価であり、給与の在り方を検討する前提は教職員の勤務実態を踏まえることです。今回、40年ぶりに「教員勤務実態調査」を実施し、調査対象教員数延べ6万人に、しかも持ち帰り残業を含む24時間の生活を対象に行われていることを、私たちは高く評価し、調査結果に注目しています。今後の検討の重要な基礎的資料として活用されることをお願いします。
 ところが、「教員勤務実態調査」が始まる矢先に、「歳出・歳入一体の改革」の策定の中で財務省の強い圧力があったとはいえ、財務省と文科省の間で、教員給与の「優遇」2.76%削減で合意したことは、きわめて遺憾といわなければなりません。なぜなら、「メリハリある給与体系」が本ワーキンググループの検討事項の一つにあげられていますが、民間企業において成果主義を導入したところも、「人件費削減隠れみの型」(「週刊ダイヤモンド」)は失敗していると言われているからです。
 

○人材確保法の必要性、教員給与水準の確保について

 今日では教員採用試験の競争倍率が高まり人気職種になっているから、人材確保法の必要はなくなった、との主張がありますが、競争倍率は採用者数と受験者数に左右されるものです。今後、教員の大量退職期を迎えており、その動きが全国に先駆けて起こっている東京都の教育委員会も、新卒の受験者数が飛躍的に伸びることが期待できない状況にあり、「競争性の低下によって、優秀な人材の確保が困難となってしまう懸念が生ずる」と分析しており、人材確保法の意義は失われていません。
 教員は教員免許状が必要な職種であり、教育公務員特例法の適用を受け、1年に及ぶ条件付採用期間など一般行政職と法制度上の扱いが異なっています。職務給の原則(地公法24条)を無視して、機械的に給与額だけで教員と行政職員を比較することでは筋が通りません。
 公立学校教員給与の国準拠制が廃止となり、各都道府県で主体的に決定できることになりましたが、私たちは、公教育におけるナショナルミニマム確保と『同一労働同一賃金』の原則に基づいた全国共通の標準的な教員給料表・諸手当が必要であると判断し、モデル給料表の策定を求めてきました。ところが、自治体の財政事情による地方公務員給与の独自削減が広がり、さらに総務省は、「地域の民間給与をより適正に反映させる」ことを強く求めています。このような状況のもと、教員給与が地域間でバラバラとなり底割れする危険があり、教職の専門性を担保する教員給与水準を維持する上でも人材確保法の堅持が必要と考えます。
 

○教員給料表の体系、在り方などについて

 中等教育学校が設立され、小中学校と高等学校教員の学歴差や職務の困難などにも大きな違いは認められず、高校教員給料表と小中学校教員給料表を、実習教員・寄宿舎指導員に適用されている1級を中心に抜本的に改善する中で格差を是正することを求めます。
 教員の場合、新採用者であっても、「教諭は、児童の教育をつかさどる」(学校教育法28条)職員として、子どもたちや保護者からは、一人前と扱われます。専門職として初任給を大幅に改善するとともに、教職としての経験と専門能力の向上を考慮し、ベテラン教職員の適正な賃金を保障する賃金体系とすることを求めます。その際、ILO・ユネスコ「教員の地位に関する勧告」の給与にかかわる諸条項を参考にすべきと考えます。
 増大する臨時・非常勤教職員の処遇改善が急務となっており、劣悪な賃金を大幅に引き上げるとともに、教職員の職種間の賃金格差を拡大しないことを求めます。
 

○時間外勤務手当、教職調整額の扱いについて

 「教育困難」が増大する中で、教材準備、生徒指導、部活動指導など勤務時間を超えて頑張っている教職員が多数います。しかし、こうした実態があるにもかかわらず、給特法においては、教員の「職務と勤務の特殊性」に基づき労基法37条に基づく時間外手当の支給は適用除外となっており、このことを不服であるとして訴訟も起こされています。時間外手当の請求を棄却した札幌地裁判決(04年7月29日)に関して、会計検査院の専門調査官は「判旨に賛成」したものの、「限定4項目に該当しない時間外手当等勤務が常態化しているとしたら、その事態は違法な状態であると考えざるをえない」(「月刊高校教育」05年4月号)と指摘しています。
 教職員の長時間過密労働はますます深刻化しており、いのちと健康の面からも、違法なサービス残業状態は速やかに是正されるべきと考えます。私たちは、給特法を「改正」し、測定可能な時間外勤務には、労基法37条に基づく時間外手当を支給すべきと要求しています。ただ、時間外手当制度では、管理職の事前承認と事後確認が要件となっており、教員の自主的自律的教育活動が妨げられないか、などの危惧の声が職場にあります。また、持ち帰り仕事の扱いはどうするのか、などの疑問の声もあります。これらを踏まえ私たちは、学校職場にふさわしい超過勤務時間数の把握方法などを工夫すべきと考えます。
 現行の教職調整額との関連については、「教育行政が教員の時間外勤務に対する割増賃金支給に踏み切り、労使交渉の進展の中で支給対象業務が拡大するに伴って、教職調整額のあり方と水準を見直すことはありうることです」(全教の討議資料)と考えています。教員に時間外手当制度が適用されたとしても、測定不可能な時間外勤務に対する措置として教職調整額は存続すべきですが、その支給割合は、時間外手当支給対象業務のカバー率がどうなるか、確保される時間外手当予算が勤務実態に見合って十分かどうか、によって決まっていくと考えます。
 いずれにしても、労基法37条が適用除外となっているため、学校職場では管理職・教職員ともに勤務時間の概念が希薄となっており、教員への時間外手当制度の適用は、働き方の意識と態様を見直す画期的な契機となるに違いありません。
 

○メリハリある給与体系などについて

 日本経団連の「06年経労委報告」は「何より従業員個々人が、自ら課題を見つけ出し、目標を設定し、方策を考える力、それを実行する行動力を持たなければならない。さらに、チームワークを尊重する気風をつくり、あらゆる職場でリーダーシップを発揮する人材が必須である。・・・日本企業では従来から職場の中で『普通の人』たちが、この役割をまじめに果たしてきたことが強みとなっていたのであり、今後とも、その大切さが減じることはない」と述べています。学校職場においても、多数を占める「普通の先生」は、サービス残業も厭わず、子どもの成長を最大の喜びとして、「人格の完成」をめざして奮闘しています。
 成果主義・業績主義による人事管理は、民間企業においても問題点・矛盾が顕在化しています。「子ども参加、父母共同による学校づくり」の中における評価そのものを否定するものではありませんが、学校教育の成否は教職員のチームワークにかかっており、職の新設に伴う級の増設など評価結果による賃金・処遇への連動は行うべきではないと考えます。
 
以上




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