全教 全日本教職員組合 憲法と教育基本法を生かす学校と教育を
HOME
全教紹介
This is Zenkyo
全教最新情報
>活動報告
>声明・見解・談話・要求書など
>専門部の活動報告
ピックアップ
刊行物案内
障害児教育
青年教職員
全教共済
資料室
リンク集
INDEX 全教最新情報

声明・見解・談話・要求書など 声明・見解・談話・要求書などindexへ

【見解】2006/09/04 
『2007年度文部科学省概算要求に対する見解』

2006年 9月 4日 全日本教職員組合

 8月31日、2007年度各省庁の概算要求が締め切られました。各省庁から出された概算要求の総額は、前年度当初予算比3.8%増の82兆7300億円です。このうち一般歳出は前年度比0.9%増の46兆1900億円で、地方交付税交付金等については、前年度比4.6%増の15兆2300億円となっています。国債費は、1.0%増の20兆6900億円となり、昨年度に引き続き20兆円を突破しました。各省庁からの概算要求の特徴は、財界の経済要求を積極的に推進するとともに、「構造改革」路線による国民犠牲の施策を推進する一方で、軍事費や大型公共事業を「聖域」扱いした要求となっていることです。厚労省は労働保険制度の「見直し」や生活保護基準の「見直し」などを打ち出し、一方、防衛庁は防衛ミサイル関係費を5割増など4兆8600億円の軍事費を要求し、国土交通省は首都圏環状道路整備など公共事業に2142億円など6兆6436億円要求しています。
 
 文部科学省は、一般会計で5兆8039億1900万円、今年度当初予算比13.1%、6715億円増を要求しました。これまでの教職員定数の改善などの教育条件整備の課題をまがりなりにも掲げた要求から、財界の経済成長戦略と「教育の構造改革」路線を前面に出した要求の組み立てへと転換させ、政府の「構造改革」路線に沿った「人間力の向上」政策推進のための「教育基本法改悪先取り」要求です。財界がすすめる日本経済の「新たな挑戦10年」に向けた「経済成長戦略大綱」と「工程表」に盛り込まれた教育に関する目標・課題が、多く盛り込まれた要求となっています。具体的には、次のような特徴と問題を持つものです。
 その第1は、「2010年まで国際学力調査において世界トップレベルをめざす」として、全国一斉学力テストを実施し、一部エリート養成のための施策・事業推進の要求となっていることです、
 子どもと教職員、学校を成績によって序列化し、競争に追い立て、追いつめ、子どもたちの成長と教育をゆがめるとして、父母・教職員、国民から中止を求める声が上がっていた全国学力・学習状況調査(全国学力テスト)の実施のための費用を要求しています。問題の作成等をすすめる国立教育政策研究所予算と、調査の実施(発送・回収等)等をおこなう初等中等教育局の予算の総計で96億4485万円を実施費用として、また、データベース開発・整備事業費として18億5469万円、合わせて114億9954万円を要求しています。父母・国民の反対の声を無視し、多額の予算をかけて実施することは重大問題です。
 また、一部エリート養成のための施策・事業を、「世界トップレベルの義務教育の質の保証」、「確かな学力の向上」をめざすためのものとして盛り込んでいます。「国語力の育成、理数教育の充実など総合的な学力向上策の推進」として、「新学習指導要領の周知」とともに「学力向上アクションブランの推進」を掲げ、スーパーサイエンスハイスクールなどの一部のエリートを養成する施策・事業として101億円増額し、190億円を要求しています。また、習得すべき学力など根本的な検討が求められる、小学校段階における英語教育の充実に向けた「小学校英語活動地域サポート事業」として37億5148万円要求しています。
 しかし、この間国民的に明確になったことは、子どもたちの学力を向上させるには、何よりも少人数学級を実施することだということです。様々な学力の向上として盛り込まれた事業のための予算227億円と全国学力テスト実施のための114億円を教職員配置にあてれば、07年度の自然減の教職員数900名を減らさず、さらに3000人を超える教職員を増やすことができ、少人数学級を大きく拡大することができます。
 第2は、父母・国民、教職員が要求して来た第8次教職員定数改善計画の策定を文科省自ら放棄したことです。今回要求されたものは、「優秀な教職員の確保及び教育課題に対応するための緊急的な教職員配置」として、義務教育費国庫負担金は0.5%増の1兆6844億円を計上するとともに、「教育課題対応緊急3カ年対策の実施」として、�‘段婿抉膓軌蘓篆覆里燭瓩龍軌�配置 3カ年で1416人(初年度07年331人) �⊃�育の推進のための栄養教諭配置 3カ年で94人(47都道府県×2人)、(初年度07年20人)と、わずか1510人を増員する計画です。しかし、3カ年の自然減は4000人減としており、結局差し引き2590人減らすという「教職員定数削減計画」です。第7次まで継続されてきた教職員定数改善計画の策定を文科省自ら放棄したことは、所管省庁としての役割と責任を放棄したものであり、父母・国民の願いに対する背信行為であるといわざるを得ません。また、文科省は、先の国会で成立した「行政改革推進法」や経済財政諮問会議の「骨太2006」で、「児童生徒の減少に伴う自然減を上回る純減を確保する」との政府方針を受けて、2010年までに2万2400人の自然減とともに、給食調理員、現業職員等の1万6800人の削減を行うとしています。
 第3に、第3者による学校評価と、教員免許更新制の導入等により、教職員の管理統制強化をすすめようとしていることです。今日すすめられている「教職員評価」や、「学校評価」おしつけに、さらに学校と直接かかわらない第3者が、学校運営や教育活動などを5段階で評価する学校評価の実施にむけた試行を今年度の124校に続き、来年度は186校で実施しようとする「学校評価システムの構築」のため、7億6309万円要求しています。さらに、教員免許管理システム導入に向けた調査研究等ため「教員養成・免許制度の改革など教員の資質能力の向上」として、新規に3億7650万円要求しています。
 第4に、上記のような「構造改革」路線をすすめながら、「構造改革」路線の破綻をつくろうための「再チャレンジ」政策に追随して、「教育分野における再チャレンジの支援」として、「再チャレンジのための学習支援システムの構築」等の新規事業として掲げ、前年度予算額の8.8倍の313億6300万円を計上するという矛盾に満ちたものになっているということです。少子化対策として、「幼児教育に係る負担の軽減(無償化の検討を含む)等幼児教育の振興」として233億3786万円を計上しているのも、政策破綻を物語るものと言わなければなりません。
 第5は、父母・国民が求めている安全・安心な学校づくりのための対策が不十分だということです。「公立学校施設の耐震化の推進等」については前年度比420億円増額の1460億円を要求していますが、耐震性が確保されている建物は全体の約半数に過ぎず、他の公共施設と比較してもとりくみが遅れている状況であり、緊急課題への対応という点では不十分です。また、昨年度の補正予算で一定額が予算化されたアスベスト除去のための対策費が、緊急な対応が求められているにもかかわらず、要求されていません。
 第6は、私たちのとりくみを一定反映させた内容が、特別支援教育と食育推進のための微弱な定数改善のほか、幾つか盛り込まれていることです。私学助成金については、30億円増1068億5000万円(高等学校等経常費助成分)を要求し、06年度に「時限措置」であったものを「恒久的措置」へ変更させ、授業料直接助成に踏み込ませた授業料減免事業等特別経費を、2000万円増額の6億5800万円を要求しています。また、子どもの安全対策が大きな課題となるなかで、今年度予算に盛り込まれた「子ども安心プロジェクトの充実」事業に、さらに路線バス等を活用した通学路の安全確保対策の導入など4億3731万円増額しています。さらに、義務教育教科書の無償給与を継続実施するため、製造コストと供給コストを削減するための検討をすすめるとしながらも、402億5600万円を要求しています。
 
 財務省は、07年度予算は「新たな挑戦の10年」の初年度予算であり、また「2010年代初頭における基礎的財政収支の黒字化を確実に達成するための発射台となる」として、経済成長戦略大綱や「骨太2006」に基づいた予算の編成作業を本格化しようとしています。
 今、政府に求められていることは、財界がもとめる予算編成を止め、軍事費を削り、無駄な公共事業をやめ、国民本位の予算編成をおこなうことです。全教は、ゆきとどいた教育を求める全国の父母、教職員、国民とともに、全国3000万署名運動をはじめとした教育条件整備の運動を大きく発展させ、全国一斉学力テストを中止し、第8次教職員定数改善計画策定や私学助成制度の拡充等をすすめる国民の願いを実現する07年度予算編成と、教育予算の増額にむけたとりくみをすすめていくものです。
 




▲ページトップへ




〒102-0084 東京都千代田区二番町12-1 全国教育文化会館3階 TEL: FAX:
Copyright(c)2005 全日本教職員組合 All rights reserved.