【声明】2006/11/21
『教職員、父母・国民のみなさんへ いじめを克服し、子どもを人間として大切にする学校と社会へ、力をあわせてとりくみましょう』
2006年11月21日 全日本教職員組合 中央執行委員長 石元 巌
いじめによる自殺という、なんともいいようのない胸がしめつけられるような事件が続発しています。私たちは教育に直接携わるものとして、責任を強く感じるとともに、いてもたってもいられない気持ちでいっぱいです。
学校は本来、いのちをはぐくむべき場であるはずです。その学校で、子どもが自らのいのちを絶つことなど、あってはならない事態です。
すべての教職員のみなさん。こうした事態が起こっている今だからこそ、あらためて、学校がすすめている教育活動が、子どもの願いをうけとめ、子どもの人権を大切にしたものとなっているかどうか、しっかり見直しましょう。
そのために、もっとも重要なことは、子どもの声に耳を傾け、子どもの声をしっかりと聞き、その声をうけとめることです。いじめられている子の悩み、苦しみ、つらさを正面から受け止めましょう。いじめている子もまた、本当は苦しいのです。その苦しさを、その子の内面をくぐって理解しつつ、克服にむけて行動することをうながしましょう。子どもたちは、人を人として大切にしない社会的風潮や、競争的教育制度の影響をうけ、自分の願いをときにはゆがんだ形で表に出すことがありますが、その底には、人間らしく生きたいという願いをふくらませ続けています。その願いを探りあて、その願いにこたえる教育活動をすすめましょう。子どもは、本来、自らの力でいじめを乗り越えることができる力をもっています。子どもを信頼し、子どもの力を引き出しましょう。
学級や学年、学校にいじめの実態があれば、それを率直に教職員のなかに出しましょう。また、いじめの実態は、担任の目が届かないところで起こる場合が多く、事実が明らかにならない場合が長期にわたって、事態を深刻にしてしまうこともあります。学校で働くすべての教職員が、それぞれの立場から子どもにあたたかい目を注ぎつつ、実態を正確に把握するよう努めましょう。そして、学校の持つすべての力を集め、いじめの解決にむけてとりくみましょう。
その際、重要なことは、学校の中だけで抱え込まず、父母のみなさんに率直に実態を話し、父母のみなさんから学級、学年、学校がすすめている教育活動について思っておられることや願っておられることを聞くことです。いじめは、陰に隠れておこなわれるため、その実態が学校だけでつかめないこともあります。父母のみなさんから意見を聞くことで、実態を把握するきっかけがつかめることも少なくありません。さらに、学校のすすめている教育活動について、教職員だけでは気がついていない事実を指摘されることもあります。その声をうけとめ、子どもを人間として大切にする教育へと1歩でも2歩でも前進させましょう。
教職員は大変過密で過重な労働実態のもとにおかれ、ただでさえ、その負担は大きなものがあると思います。まして、いじめに直面し、この克服にとりくむ教職員の心労は、はかりしれなく大きいものです。文部科学省や教育行政は、そうした学校には特別に教職員を配置するなど、これを支援しなければなりません。父母のみなさんとともに、条件整備を要求していきましょう。
教職員、父母・国民のみなさん。子どもの世界に起こっているいじめの問題の背景には、人を人として大切にしない社会的風潮という大人社会のゆがみの問題や、子どもをとりまく暴力肯定の文化、人をさげすんで笑いものにするマスコミ文化などがあり、これらを裏で支えてきた企業の責任があると思います。このゆがみをただす社会的な世論と運動をみんなで力をあわせて強めましょう。
また、いじめ問題の温床に、子どもを競わせ、追い立てる競争的な教育制度の問題があり、これが子どもたちに、多大なストレスを与えています。子どもをこれ以上競争で追い立てることがあってはなりません。教育基本法をないがしろにし、積年の「競争と管理」といわれる教育政策をすすめてきた文部科学省は、その責任をまぬかれません。私たちは、教職員組合の責任として、競争的な教育制度をただすことを強く文部科学省に要求し、全力をあげてとりくみます。教職員、父母・国民のみなさん、このとりくみも、いっしょに力をあわせてすすめましょう。父母・国民、教職員の力を集め、教育を国民の力で立て直しましょう。
子どもは未来に向かって生きる存在です。子どもがその大切ないのちを絶つのではなく、いのちを輝かせて生きることができる学校や世の中にするために、私たちは、子どもの成長・発達を助けるという教職員が負っている責務と社会的役割についての自覚を新たにし、全力をあげます。父母・国民のみなさん、子どものいのちを守り、はぐくむために、いまこそ知恵と力を出し合いましょう。心から呼びかけます。
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