【談話】2008/02/12
『文部科学省による「教員への時間外勤務手当」報道にかかわって』
2008年 2月12日 全日本教職員組合 生権局長 蟹沢昭三
2月9日の「時事通信」によれば、文部科学省は「勤務の負担に応じて(教職)調整額を増減させる改革案を検討したが、法的な問題から断念」し、「教員給与に、時間外勤務手当を導入する方向で検討に入った」と報道されました。
このとおりとすれば、長時間過密労働の解消を求める私たちのとりくみに対して「勤務時間管理になじまない」として、慢性的な長時間過密労働を放置してきた文部行政のゆきづまりの結果を反映したものです。残業時間数に応じた手当を排しながら、「勤務時間の内外を問わず包括的に」評価した現行の教職調整額4%一律支給を見直し、役割や職に応じて差別支給しようとした文科省の概算要求案の考え方が、論理上の矛盾で破綻したといえます。
文科省が2006年に実施した教員勤務実態調査では、長時間過密労働の深刻な実態が明らかになりました。教職員から「子どもと向き合う時間」を奪い、また、異常に増え続ける心身の健康破壊の実態は、一刻の猶予も許されない状況にあります。
私たちは、これまで、ゆきとどいた教育を実現するためにも、教員の長時間過密労働解消に向けた最大限の努力を文科省および各教育委員会に求めるとともに、�‖�定可能な時間外勤務には割増の時間外手当を支払い、��測定困難な時間外勤務には一律の手当を支給すること、を「二本建」要求として掲げ、現実に存在する時間外勤務については、教員にも労働基準法37条を適用するように求めてたたかってきました。この点については、すでに中教審のヒアリングにおいても意見表明をしてきたところです。
今後の推移は、「ホワイトカラー・イグゼンプション」の導入など労働法制改悪の動向、「行革推進法」による総人件費削減、教員賃金に「メリハリ」をつけるという「構造改革路線」の制約もあり、制度設計がどうなるかは流動的で、まったく予断を許しません。改悪教育基本法の具体化がすすむもとで、新たな管理強化の梃子になる危険性もぬぐえません。
今回の報道にかかわって、あらためて、ここに長時間過密労働の是正の契機となる、学校職場にふさわしい時間外勤務手当制度をめざす私たちの基本的立場を、以下の3点にわたって明らかにします。
1.教職員定数増を基本に、子どものためにならない雑務や指定研究の見直しなど、慢性的な長時間過密労働を解消する具体的諸施策をすすめること。中教審が検討課題としている「1年間の変形労働時間制」は導入しないこと。
2.時間外勤務手当制度の基本については、
� ゞ疑Π�の時間外勤務は、「公務のために臨時の必要がある場合」(労働基準法33条3項)に限定するとともに、時間外勤務時間の上限規制を設け、その仕組みを学校職場にふさわしい制度とすること。
�◆ゞ疑Π�の仕事における「自発性・創造性」を尊重するとともに、労働基準法36条にもとづき、事前にその対象となる業務内容、健康への配慮、職場の合意尊重などについて、書面による協定とすること。関係教職員の意向を無視して、一方的に時間外勤務を命じないこと。
�� 必要な時間外勤務手当予算額を確保するとともに、自主的研修や教材研究など、測定困難な勤務時間内外の労働に見合うものとして、定率の給与制度を残すこと。
3.時間外勤務手当制度の導入は、教員給与制度の歴史的な制度転換であり、教職員・教育関係者との合意づくりをていねいにすすめること。また、具体化にあたっては、全教との交渉をもつこと。
以上
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