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【声明】2008/04/03 
『ILO・ユネスコ調査団の来日を歓迎する』

2008年 4月 3日 全日本教職員組合 中央執行委員会

1.ILO・ユネスコは3月3日、教職員評価による賃金・処遇反映など日本の教職員政策の実情を調査するため、4月21〜28日の予定で、調査団を派遣することを全教へ連絡してきました。ILO・ユネスコ「教員の地位勧告」の適用を監視・促進する機構である「共同専門家委員会」(以下、CEART)が調査団を派遣することは、昨年の5月に明らかにされていましたが、前例のないことであり、ILOとユネスコの調整、日本政府との折衝が手間取り、ようやく具体化されることになったものです。このことは、「指導力不足教員」人事管理システムや新教職員評価制度において、国際基準である「教員の地位勧告」が遵守されていないとして、全教が2002年6月に申し立てを行い、この間にだされたCEART勧告を受けての措置です。
 全教は、1965年のILOドライヤー委員会の実情調査から43年ぶりの調査団来日を心から歓迎し、全面的に協力することを表明するものです。また、すでに文科大臣は国会答弁(07年6月)において、ILO調査団を「受け入れて、丁重に対応する」と答弁しており、実りある成果をあげると考えるものです。
 
2.CEART調査団は、文科省およびいくつかの都道府県教育委員会、そして、全教だけでなく日教組などの各教職員団体、専門家などと面談し実情を調査することになっています。
 調査団(ミッション)の意味は、使命を与えられた使節団であり、目的は「日本政府と全教によって求められた状況の調査をし、これまで位置づけられている問題の解決のための提案をすべての当事者におこなう」ことにあります。全教が制度の客観性・公平性・透明性などが担保されていないと批判している新教職員評価制度や「指導力不足教員」認定制度などの状況を調査し、解決に向けての報告書を作成し、ILO・ユネスコの執行機関に提出することになっています。
 
3.大事なことは、この調査活動が、白紙の状態から開始されるのではなく、「教員の地位勧告」を基礎にするだけではなく、この間の全教の申し立てと文科省の反論、CEART勧告などを踏まえて行われるということです。
 2003年9月のCEART第8回会議では、「(全教と文科省から)提供された資料を検討すると、詳細な事実関係に関しては双方の間に見解の食い違いが相当あり、これは適切な事実調査団を派遣することによってはじめて解決できると考えられる」が、「事実調査団派遣に踏み切るのは時期尚早であると判断」し、「この勧告(『教員の地位勧告』)の原則に関する問題の解決は将来的には個別事例の解決にも役立つべきものである」として、「いずれにせよ善意と適切な対話をもって、主要な『勧告』不遵守の問題が解決されるならば、他の点についての争いも緩和され、全教と関係する行政機関との関係の残念な悪化と思われる問題も回復されうるであろうというのがCEARTの意見である」と勧告していました。
 このような見解をもっていたCEARTが、今回、調査団の派遣に踏み切ったのは、文科省と全教の主張の食い違いを事実調査するだけではなく、勧告した「善意と適切な対話」が進展しないのはなぜか、「教員の地位勧告」が遵守されていない問題の解決が初歩的部分的改善にとどまっている理由は何か、これらの障害はどこにあるのかを調査し、「専門的な助言」をする使命を持っていると考えられます。
 CEARTの調査団への諮問事項には、「調査団は調査を実施するにあたり、国内法制や慣行にもとづく国の教育制度の枠組みと近年の改革動向を考慮にいれるとともに、2003年と2005年のCEART報告に記述されている結論と勧告はもちろん、CEARTの任務に関連して教員に適用される国際基準及び当事者によってこれまでに提出された諸報告を考慮する」と記述されています。
 
4.教職員の長時間過密労働の深刻な実態、精神性疾患の急増、条件付採用期間に退職する新任教職員の増加などが大きな社会問題となっています。ところが文部科学省は、少人数クラス、持ち時数の軽減などの教育条件整備を怠りながら、「学校教育の成否は教員の資質、能力に負うところが大きい」と個人責任を専ら問う「摘発と排除」「競争と管理」を基調とする教育行政をすすめています。教育公務員特例法が昨年6月に「改正」され、08年2月に「指導が不適切な教員に対する人事管理システムのガイドライン」が制定されました。また、新教職員評価制度は試行を含めれば全国で実施され、これから評価結果が賃金(査定昇給や勤勉手当の成績率)に反映することが本格化します。加えて、教員免許の更新制の導入が、教職員の身分を不安定にさせています。
 「教職における雇用の安定と身分保障は、教員の利益にとっても不可欠であることはいうまでもなく、教育の利益のためにも不可欠なもの」(45項)と「教員の地位勧告」は謳っており、調査団が来日するタイミングもよく、大きな意義があると考えます。また実績給や報奨給制度は、新自由主義的な教育政策を採用している各国の共通の傾向であり、日本だけでなく諸外国の教職員組合にとっても価値ある調査活動になると信じるものです。
 
5.ILO・ユネスコは、「問題になっている事項に関連するすべての教員団体から情報提供を受ける必要に特に留意」して調査活動をすすめるとしています。全教は、「CEART勧告は、日本の教職員組合運動の共有の財産」との立場であり、他の教職員組合とも協力し、CEARTの調査活動が所期の目的を達成するよう努めるものです。
 私たちは、この間、文科省や教育委員会の部分的改善であっても評価してきましたが、残念ながら見直しは全体としてすすんではいません。全教は歴史的なCEART調査団が来日する機会を生かし、「教員の地位勧告」、CEART勧告の学習・普及をさらに強め、「教員の地位勧告」の遵守と、競争的管理的な教職員賃金・人事政策の是正をめざして奮闘するものです。 
 
 
以上




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