【談話】2008/09/10
『大分における教員採用不正等にかかわる県教委調査報告と採用取り消しについて』
2008年 9月10日 全日本教職員組合 書記長 東森 英男
大分県教育委員会が設置した教育行政改革プロジェクトチームは8月29日に「大分県教員採用選考試験等に係る贈収賄事件を受けて」と題する調査結果報告書を公表しました。
私たちは、8月8日に行った大分県教委に対する申し入れにおいて、「今回の大分県での事態を、司直任せにせず、教育委員会の責任で全面的に解明するとともに、不正を再発させない制度と措置を、密室でなく県民参加で構築することが緊急の課題です」と指摘したうえで、「教員採用等の汚職と、『口利き』等不正にかかわるすべての事実と責任を明らかにし、教育への信頼回復に誠意を持って努力すること」「不正を行った者への厳正な処分を行うとともに、不正によって不合格となった受験者への救済策を講じること」を求めてきました。
しかし、今回の調査報告は、公表された事実以上に追及が広がらないように「幕引き」を行うためのものではないかと思われるものです。報告書では、警察の捜査で公表されている試験のデータ改ざんなどについては報告しているものの、不正の実態や背景については解明はなされていません。
この問題については、朝日新聞の社説(9月3日付)も、「具体的に誰が口利きをしたのか。県教委の誰がどのように動いて合格させたのか。責任は誰が負うべきなのか。そうした県教委の不正の構造が明らかになっていない」と述べているように、国民を納得させるものではありません。
このように、お座なりの報告で幕を引くやり方では、真に県民に責任を負う改革には結びつかないことを指摘しておきたいと思います。
この報告を受けて大分県教委は9月7日に、2008年度の合格者のうち、点数の改ざんという県教委の不正によって合格したとされた21人のうち、「自主退職」しなかった6人について「採用取り消し」を行いました。
この措置は、いくつかの点で重大な問題があります。
第1に、不正と汚職に深くかかわった教育委員会と教育委員会幹部職員の真相が明らかにされていない中で、受験者に責任を押しつけている問題です。公正、透明であるべき採用試験のデータを改ざんして不正な採用行為を行った教育委員会こそ責任をとるべきです。
第2に、明確な証拠を本人に明らかにすることなく、教員の採用が「選考採用」であることを考慮せず、採用を取り消すことは、「教員の身分」を不安定にするものであり、「教育の利益」にも反するといわなければなりません。
第3に、年度の中途で採用取り消しを強行した結果、関係する教員のいた学校の子どもたちに動揺と心の傷が広がっている問題です。教育委員会の責任を棚上げにして、現場と子どもたちに被害が及ぶ、このような措置は大きな問題を残すものです。
私たちは、大分県教委による今回の措置を批判するとともに、全国で、公正で透明な教員採用と管理職人事を実現するためのとりくみに全力をあげる決意を、あらためて表明するものです。
以上
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