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【見解】2007/06/05
『教職員の長時間過密労働を是正するための施策を強く求める文部科学省「教員勤務実態調査報告書」の公表にあたっての見解』
2007年 6月 5日 全日本教職員組合 中央執行委員会

 文部科学省は、5月24日、昨年度末にまとめた「教員勤務実態調査報告書」を公表しました。7月から12月までの6ヶ月間(高校は10月から12月)の調査にあたり、多忙な中、調査に協力した全国6万5628名の組合員・教職員に敬意を表します。
 調査結果は、教職員の勤務実態の深刻さを浮き彫りにしました。残業のほとんどなかった8月を含めても、単純平均で小学校教諭が平日の残業時間1時間26分と持帰り37分、中学校教諭で1時間56分と持帰り22分、高校教諭(全日制)で1時間44分と持帰り29分になりました。休日勤務も含めた1カ月あたりの概算は、40時間を超える残業と20時間を超える持帰り仕事に追われているという勤務実態(注1)が明らかになりました。

 しかも、労働基準法で一斉取得が義務付けられている休憩時間すら小中学校教諭の単純平均で15分、10月から12月の期間では5分から8分程度しか取れていません。残業時間の分布をみると、持帰り仕事を除いても、全体の33%超が1ヶ月45時間を超える残業をしています(注2)。厚生労働省では、残業が1ヶ月45時間を超えることを「過労死危険性ライン」としていますから、3分の1強の教職員が恒常的に「過労死危険性ライン」にあるといえます。
 残業や持帰り仕事の内容は、小学校では、①授業準備、②成績処理、③事務・報告書作成に多くとられ、中学校と高校ではこれらに加えて、部活動・クラブ活動が大きな要素としてでてきます(注3)。残業にも持帰り仕事にも、同じ項目が並んでいることから、勤務時間内に終えることのできない仕事が平日や休日の残業になり、それでもできずに持帰り仕事として長時間過密労働が常態化しているという実態が浮かんできます。例えば、小学校教諭の授業準備は、勤務日に平均1日20分の残業をしても追いつかず、休日に平均1日23分の持帰り仕事をしていますし、1学期末である7月の成績処理をみると、勤務日に平均1日28分の残業をしながら、さらに休日に平均1日91分の持帰り仕事をしています。こうした恒常的な長時間過密労働の実態は、給特法で想定されているものではなく、違法状態になっていることが明らかにされたといえます。
 
 全教の試算では、小中学校教諭の勤務日の残業時間だけを対象にしても年間で約1兆円の時間外手当相当分のただ働き(注4)になっていますし、それを解消するために必要な教職員定数増は約17万人(注5)になります。
 こうした実態にあるにもかかわらず、「教員勤務実態調査」の中間集計結果報告を受けた段階で、中教審教職員給与ワーキンググループでは、長時間の残業を問題にしながらも、超過勤務の長短の個人差をことさら問題視し、「職務負荷」に応じた支給率の「メリハリ」を教職調整額に持ち込むことを検討しています。今回、最終的な報告でまとめられた結果を踏まえるなら、教職員一人ひとりの残業時間を減らし、「子どもと向き合う時間がほしい」という切実な声に応える施策や制度の実現こそが求められているはずです。
 文科省の発表によると、教職員の病気休職者数は2005年度に初めて7000人を超え、そのうち精神性疾患による者も4000人を超えました。病気休職者数も精神性疾患による者も、過去10年間、増え続けており、病気休職者数は10年前の約2倍、精神性疾患による者は約3倍になっています(注6)。
 こうした状況の背景には、一方的な「教育改革」の押しつけとともに、教職員の置かれている長時間過密労働が大きな要因としてあります。国会審議でも伊吹文科大臣は「必要な予算措置と人員措置を講じなければ私はやはりだめだと思」うと答弁し、教職員定数増が課題であることを認めざるをえない状況です。全教は、今回の調査結果にもとづいて、あらためて文科省に対し、教職員の長時間過密労働を是正するため、教職員定数増などの施策を強く要求するとともに、教職調整額制度の改悪に反対し、測定可能な残業時間に対しては労基法37条に基づく時間外手当が支給できる法改正を求めて、さらにとりくみを強めていくものです。
 
 
以上
 

 
注1:勤務日を20日、休日を8日として計算すると、小中学校教諭の平均残業時間40時間47分、平均持帰り仕事時間23時間3分、高校教諭(全日制)の平均残業時間45時間20分、平均持帰り仕事時間22時間20分(全教試算)
 
注2:勤務日(20日)の残業時間で40時間を超える者(全職種)の割合は、小中学校35.9%、高校(全日制)33.1%。ただし、休日の平均残業時間が小中学校で7時間1分、高校(全日制)で10時間40分あるので、ここでは45時間を超えるとしています。
 
注3:残業や持帰り仕事の内容としては、ほかには、小学校では、学校経営・学校行事・学年学級経営、中学校では、会議打合せ・学校経営・学年学級経営、高校では、朝の業務・学習指導があります。
 
注4:勤務日の残業のみを1カ月20日で試算すると、年間の時間外手当額は、小学校で平均90万7536円、中学校で平均123万1656円。2005年度の在職者数91万9154人分にすると総額9831億2344万1784円。
 
注5:注4で試算した時間外手当額を人件費必要額で割り返すと、小学校で7万4148人、中学校で10万629人、合計で17万4777人の教職員定数増が必要。
 
注6:1996年度の病気休職者数3791人、うち精神性疾患1385人。2005年度の病気休職者数7017人、うち精神性疾患4178人。

《関連項目》

■全教のとりくみ
【交渉】2012/03/16 全教青年部文部科学省交渉
【集会】2012/03/14 全教が12春闘要求書にもとづく文科省交渉
【大会】2012/02/18~19 父母・国民とともに憲法に立脚した民主教育を 全教第29回定期大会を開催
【行動】2012/02/10 12春闘2・10中央行動 要求実現へ、全国から7000人
【集会】2012/01/14,15 2012春闘で国民的な共同のたたかいをすすめよう ~全教が生活権利討論集会を開催~

■声明・見解・談話
【談話】2013/01/11 文科省「平成23年度公立学校教職員の人事行政状況調査」について全教書記長が談話
【談話】2011/12/27 文科省は教職員を病気休職に追い込まない施策こそすすめるべき
【談話】2011/12/15 「木村・船越両裁判」の勝利で全教が生権局長談話を発表
【談話】2008/12/26 『教職員の中に増え続ける病気休職者に対応する抜本的な対応策を求める』
【見解】2006/12/04〜06 『教職員の異常で違法な超過勤務実態の是正をめざして――文科省の教員勤務実態調査の結果を踏まえて――』

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