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全教のとりくみ
【交渉】2008/08/26
全教が来年度予算で文科省交渉!30人学級実現、教員免許更新制実施凍結など求める!
教育の現場や父母・国民の切実な願いの実現を!

 全教は8月26日、学級編成基準縮小、教員免許更新制の実施凍結など求め、2009年度文部科学省予算概算要求に向けての全教要求書にもとづく交渉を実施しました。



 交渉には、全教本部から米浦委員長、新堰、山口副委員長、東森書記長、北村、吉田書記次長がのぞみ、文部科学省からは関財務課長、初等中当局から教育課 程課の藤原教育課程課企画室長補佐、教職員課の宮地企画係長が応対しました。また交渉に先立ち、「2009年度文部科学省予算に対する要求」署名7万 1967筆と「教員免許更新制の2009年度からの実施の凍結を求める要請」署名6万2016筆を提出しました。

 冒頭米浦委員長は、鈴木文科大臣が就任にあたっての抱負の中で、「09年度予算の概算要求では教職員定数の改善はじめ、各分野での予算大幅増に向けた政策を盛り込む」と意欲を表明していることを示し、「大臣を先頭に文科省として必要な予算の確保のため、全力を尽くして欲しい」と要望しました。その際、「『武道』などへの予算が報じられているが、本当にそれが必要なのだろうか」と疑問を呈し、「自民党の一部から学力テストや『心のノート』、道徳の教材などを含む、文科省の28事業について『無駄な予算』だと指摘がされている。教育の現場や父母・国民の切実な願いを優先してがんばってほしい」と、30人学級や教職員定数増のために文科省としての努力を求めました。
 

「教育振興基本計画を確実に実施する」と文科省

 関財務課長は、「今週末の概算要求書提出に向けて最終的な調整をしている。基本的には、7月1日に閣議決定された教育振興基本計画を確実に実施するために、必要な予算を確保しながら計画の充実に努めていく、というのが基本的な考え方だ」と述べた上で、全教要求書の重点要求に対して、文部科学省の姿勢を示しました。各重点項目への回答とそれに対する全教の発言は以下のとおりです。
※ 回答の1、2番目は関財務課長、3番目は初等中当局教育課程課の藤原教育課程課企画室長補佐、4番目は初等中当局教職員課の宮地企画係長が回答しました。 
 

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地方の持ち出しで少人数学級では限界ある!

2.子どもたちにゆきとどいた教育をすすめるために、教育条件の整備をすすめること
(1)学級編成基準については、以下の改善を行うこと。
「②小・中学校30人学級、高校においては普通科30人、職業科25人、定時制20人以下学級を計画的に実施すること。 
 
●文科省:関財務課長
 学級編成については、標準法において小中学校で40人と定めている。これを全国一律30人という画一的なとりくみではなく、地域や学校の実情に即した柔軟な少人数教育が効果的だと考える。こういった考えに立ち、計画的に教職員定数改善をはかりながら、学級編成についても地域の実情に応じた弾力的な運用を可能にしている。一部の学年で実施しているところも含め、平成20年度で東京都を除く46道府県で40人を下回る少人数の学級編成を実現している。文科省としては今後も学級編成については、ナショナルスタンダードを維持しながら、地方のとりくみがすすむようにすすめたいと考える。
 
○東森書記長 
 少人数学級を46道府県で実施している。文科省の予算の活用もあるが基本的には地方自治体の持ち出しでやられている。小1、小2、中1というパターンも多い。地方教育委員会の当局者も含め、できれば全学年に拡大したいとの意向を持っている。父母や子どもたちがもっとも切実に願っているものを文科省が中心にすえてとりくむことが、定数全体の確保も含め、前にすすむキーポイントだ。
 

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長時間過密労働の縮減に向けた具体策を速やかに!

4.教職員がその専門性を十分に発揮し、健康で安心して教育活動に専念できる勤務労働条件を確立すること。
「(3)教職調整額の見直し・検討にあたっては、自主的研修のように時間計測が困難なものの見合いとしての定率の給与措置を確保したうえで、測定可能な超過勤務に対し労基法37条にもとづく割り増しの時間外手当を支給できるよう法改正を行うこと。 
 
●文科省:関財務課長
 教職調整額の見直しについては、平成19年3月中教審答申で提言があった。今後さらに専門的・技術的な検討を行っていくことが必要ということになっている。昨年度の予算においては、教員の勤務のあり方と時間外勤務の評価のあり方については引き続き検討し、平成21年度以降に支出するとされた。これを受け、この4月に学識経験者などからなる『学校の組織運営のあり方を踏まえた教職調整額の見直し等に関する検討会議』を設け、学校組織のあり方を踏まえ、調整額の見直しについての考え方を専門的な観点から検討している。全教からもヒアリングしている。検討会議での議論を踏まえて、教職調整額についてさらに検討していきたい。
 
○新堰副委員長 
 行政職との教員給与の優遇の見直し削減は粛々とすすんでいる。一方で教職調整額の見直しが現時点でも「検討中」という回答だった。これでモラルの向上ができるのか。今年の人事院勧告で勤務時間の一定の縮減が出された。時間単価はおのずとアップするので、行政職についてはメリットが生まれている。しかし教員についてだけ、賃金削減が粛々とすすむというのはいかがなものか。
 もう一つ、全教は「『メリハリをつける』ならば時間外手当支給は避けられない」と言ってきた。ヒアリングの場でも他の団体から同意見が出るように変わってきている。学校現場にふさわしい時間外手当制度、それに見合う予算の確保、そして教職員定数増や仕事のあり方の見直し含めた異常な長時間過密労働の縮減に向けて努力を求める。
 
●文科省:関財務課長
 教育調整額の見直しについては、検討会議での議論を踏まえ検討していきたいと思っているが、昨年度は中教審の答申も踏まえて、「教職調整額の中で率に差をつけることができないか」との検討をした。「法制度上、難しい」ということになった。そういうことを踏まえてあらためて検討したい。その時に、給与の問題というだけでなく、勤務のあり方、働き方、その前提となる運営のあり方にも関わる、そういう観点から検討が必要と考える。
 その上で時間外勤務の縮減は、どんな制度のもとでもとりくまねばならないものだ。定数改善だけではなく、さまざまな負担の軽減を国や教育委員会、学校レベルで、とりくんでいく必要がある。
 
○新堰副委員長 
過労死が公務災害で認定されるような状況だ。時間外勤務の縮減は一刻の猶予も許されない。速やかに具体化を求める。
 

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改訂学習指導要領「『解説書』に法的拘束力ない」(文科省)

3.憲法、子どもの権利条約の理念と原則にもとづく、子どもを大切にする教育行政をすすめること。
(2)改訂学習指導要領については、中教審答申が述べているように、「大綱的基準」とし、学校現場への押しつけは行わないこと。また、「解説書」は参考文書であり、「解説書」の解釈を押しつけないこと。 
 
●文科省:藤原教育課程課企画室長補佐
 学習指導要領は、学校教育法にもとづいて教育課程の基準として文科大臣が定めている。これは法的拘束力を持っている。それにそって課程を組む必要がある。すべての子どもに指導しなければならない内容を定めている。しかし、今回の改訂では『歯止め規定』を見直すなど、より「大綱的基準」として明確化した。授業1単位時間を何分にするかについても弾力性を持たせ、学校や子どもの現状に即し、創意工夫をこらした教育課程の編成ができるようにしている。また、「解説書」は法的拘束力持っていない。学習指導要領の意義をより分かりやすくとの観点でつくっている。「参考文書」というのはその通りだ。
 
○山口副委員長 
 学習指導要領にかかわって「法的拘束力がある」というところには、異論があるが今日は時間がないので議論はしない。「教育課程をつくるのは学校だ」ということ、「『解説書』は参考文書だ」との指摘は「そのとおりだ」と言われたが、そのことについてはそれでいいですね?
 
●文科省:藤原教育課程課企画室長補佐
「解説書」には法的拘束力ない。意味、解釈を詳しく解説した参考書だ。
 

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制度上の問題多い免許更新制実施の凍結を!

3.(4)教員免許更新制は、適格性審査を行っていない教育職員免許授与制度との不整合、医師など他の資格職種との均衡など、中教審の審議で出された問題がクリアになっておらず、廃止すること。また、講習定員の確保の不確実性、受講費用や交通費、宿泊費が自己負担とされていること、服務については出張扱いとされないこと、など制度設計上も根本的な欠陥を持っており、当面、2009年度からの実施を凍結すること。 
 
●文科省:宮地企画係長
 教員の免許更新制については、教員が最新の知識、技能を持ち、自信と誇りを持って教壇に立ち、社会の尊敬と信頼を受けていく、という前向きな意味を持っている。実施に向けてまい進しているところだ。制度については意見を聞きながら、前向きに受講意欲を喚起できるように内容の充実など実施の整備に努めている。
 いろいろ指摘を受けている――「適格性審査を行っていない教育職員免許授与制度との不整合」については、教員免許状はあくまで資格制度としてのもので、個人が身につく資質、能力を更新する。適格性が確保されるかは、教員免許状をとった後の採用、任用段階の職務を通じて判断されると考えるので指摘は当たらない。
 「医師など他の資格職種との均衡」についても、そもそも学校教育を担う教員の必修知識を時代に即してあるべきとの考えから、更新制の導入を周知している。他の職種と並べて一概に比較することはできない。
 「講習定員の確保の不確実性」については、委託事業という形で101の大学に免許更新講習の準備をすすめている。しっかり確保できるようとりくんでいる。担当者の個人的な感想だが、十分確保でき、心配にはあたらない。
 「受講費用や交通費、宿泊費が自己負担」については、教員免許状は個人の資格なので個人負担が必要という意見と一定の配慮がいるとの意見がある。最終のところで調整を検討したいと考えている。旅費については、へき地などではインターネットの利用など負担のかからないことを考えている。
 「服務については出張扱いとされない」ことについては、個人の資格に関わることなので当然、職務ではない。任命権者の判断によって職専免も可能だ。意見も踏まえ我々としては実施に向けてまい進する。
 
○北村書記次長 
 費用負担問題で、「一定の配慮につき最終段階で調整検討したい」と回答があったが、国会審議等を踏まえ、基本的にどういう考え方で最終調整しようとしているか、考え方を示して欲しい。
 
●文科省:宮地企画係長
 調整中の話であるから、差し控えたい。
 
○山口副委員長 
 免許更新制にはそもそもの問題もあるが、制度上に大きな問題がある。
 更新講習受講義務は教員に課せられている。しかし、更新講習の開設義務は大学にも教育委員会にもない。受講対象者に見合う講座が開設されないということも起こりうる。しかも満たされたとしても総枠であり、自分の勤務地では受講できないということも起こる。今年、埼玉の人が予備講習を受けようとしたが近隣にはなく、自分で旅費、宿泊費を払って京都で受講するなど、自らの勤務地ではない所で開設されている講習を受けざるを得ない場合がある。
 この制度は、対象者が〝すべてをやらなければいけない〟ものだ。例えば運転免許は、安全協会に言っておけば「あなたが対象ですよ」「免許更新はいつですよ」と知らされる。ところがこの制度はそうではない。自分で対象者だと知り、自分で諸手続きをやるという制度だ。「ペーパーティーチャー」が教員になる時には更新講習の対象になるが、この500万の人にこの制度の全容が明確にされていない。「ペーパーティーチャー」がこの制度を熟知していないと、この制度はなりたたない。
 周知問題や、制度の持つ開設義務と受講義務との関係の整合性を持たせることをせず、2009年度の実施をすれば現場の混乱をもたらす。『朝日新聞』でも「中止も含めた選択肢を」とするなど、世論が起こっている。このもとで一旦立ち止まって考える気はないか?
 
●文科省:宮地企画係長
 免許更新制は、平成21年4月1日というかたちで実施されることが、法律で決められている。我々としては、実施に向けて制度を周知させ、理解いただいたうえで免許更新制を行っていく。
 
○山口副委員長 
 ことは簡単ではない。教育職員免許管理の問題や先ほど述べたように受講にかかわる具体的な問題が出てくる。全部に応えることができるのか私は大いに疑問を持つ。『朝日新聞』の論点は、大分の事件を引き合いに出し、事件を引き起こした中心は教育行政のトップや校長、教頭だとし、免許更新制でこの教育行政関係者や校長、教頭をはじめから対象から除外するというのは、本当にそれで良いのか、国民的な理解が得られるのかと言っている。その問題も含め、この制度設計でいまのまま突き進んでいいのか、大いに疑問だ。
 あらためて2009年度からの免許更新制実施の凍結を強く求める。

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